嵐の到来
如月 葉月は吠えていた。
近所の犬どもが彼女の狼の声に唱和する。
月は満月にはほど遠いがそれでも彼女には十分だった。彼女は自分が変身する理屈を知らない。が変身できるという事実があればそれで十分だった。超常現象等を専門にしている雑誌などには月の光に含まれる成分のせいだとか、月の引力のせいだとかいっている。だけどそのどれもが彼女にとってどうでもいいこと、やり方を彼女の身体が知っているのだから、ただ 彼女は漠然と引力が関係しているのは確かかもしれないと、そう思う、確かに満月の日 自分の中の本性が出てきやすくなるのだ、何かに魅かれるように。
如月 葉月は戦いの事を考えた。
実を言うと彼女は戦いがあまり好きではない。多くの人狼が好戦的なのに対して自分はそうじゃない、その好戦的な血ゆえに暴走する者が多い中で彼女は変わり者だと言われた。しかし今度の戦いは自分から言い出したものだ。それに油断は禁物、神無は、強い。
*
翌朝、能登 源十郎は玄関で、どこかで身に覚えのある感触を足下に感じた。今回は心に多少の余裕があったので自分の足下で彼女の傷が再生する様子を眺めることができた。
「うーん、この見上げる視界がなんともいえないっ」それは一言、そう言うと名残惜しそうにして立ち上がった。
「神無先輩、今日こそ決着をつけさせてもらいます」
「ふっふっふっ、今日は準備万端 早朝から源十郎様に身体のメンテもしてもらったし、キッチリと返り討ちにしてあげるわっ!」
「そのまえに一言、ノーマル、なんだがな」
「そんなこと、もう関係ありませんっ!」二人に同時にそう言われて源十郎は天を仰いだ。そのまま二人に引きずられるようにして公園に連れられていく。
「「そこで源十郎様は黙って見ていて下さい、ちゃんと私が勝ちますからね」」と二人に同時に言われるに至って、源十郎は抵抗をあきらめた。
「ふむ、女の戦いに男が口だしてろくな目にはあったためしはないらしい しな」それがただの女ではないとなればなおさらだ。と思い、呑気に”賞品”と書かれた看板を持ち彼は見物を決め込むことにした。




