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回避特化のメイン盾  作者: Bさん
7章 ラスト
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30話

「今日は海に行こう!!」


 グレッグが大声で腕を振り上げて宣言する。何をしているんだ、こいつは。


「ほら、海の話を聞いて行きたかったんだけどさ。あれからすぐでは混んでそうだったじゃないか。だから、1週間も経過した今行くのが良いかな、と」


「確かにそうだが、それなら来月とか再来月にした方が良いんじゃないか?そっちの方が確実だと思うんだ」


 俺は突っ込みを入れる。四季がある訳でもないのだから、今行く必要は全く無い。問題があるとすれば攻略組の進捗だろう。その前にクリアされたら海には行けない。


「いや、行きたいんです。行きましょう」


 何故かグレッグが丁寧語になっている。どれだけ我慢していたのだろうか。1週間の我慢で限界が来ていたのかもしれない。こいつ、そんなに海が好きだっけか?


「そうね。たまには思いっきり泳ぎたいわ。前回行った時は変な事に巻き込まれてしまったし」


 前回の蟹騒動からもう2ヵ月以上経っているのか。随分と懐かしい気がする。


「で、魔物は出ないと確認されたのか?その辺りの情報は調べていないんだが」


「そうだね。一応波打ち際から30m程泳いで行ったらしいんだけど、問題なく泳いでいられたそうだよ」


 チャレンジャーはどこにでもいるらしい。30mも泳げれば遠泳でもしない限り大丈夫だろう。後は流される可能性か。その辺りはリアルでも変わらないだろう。死に戻りや水中での呼吸が出来る以上こちらの方が安全とも言える。


「水中で散歩も面白そうだな。銛でも持って狩って来るか」


 アドンが何か言っている。リザードマンが水中で銛とか魔物と間違えられそうである。アシュリーが隣で調理する用意をしておきますね、とか言っている。このカップルは……。


「それじゃ、水着ね。早速買いにいきましょう」


 エイミーが率先してサーシャとアシュリーを連れて行く。一緒に下着売り場に行くくらい高い難易度だ。付いて来いと言われても困る。最悪インナーでもどうにかなるが、それでは味気ない。


「僕たちも行こうか」


「そうだな」


 俺たちは女達とは時間を置いて服屋へと向かった。あの服屋って何でも置いてあるんだよな。





 今、俺たちはマルタの町の海岸に居る。周囲を見渡すと人、人、人。


「こりゃ、駄目だろ……」


「……うん」


 さすがにこの状態では泳ぐ事は出来そうに無い。こんなにプレイヤーって一杯居たんだな……。グレッグはそれでも諦めきれず人が少ない場所をサーチしていた。


「あったよ!人が居ない場所」


 グレッグよ、そういう場所は何かしらの問題があるもんだぞ。サーチでいわれた場所を見てみると、敵も居ない、人もいない。どういう事だろうか。


「とりあえず、行ってみよう」


 どうやらこの男には後日という選択肢はないらしい。皆、呆れながらも付いて行く。何だかんだで海には入りたいのだ。歩いていくとすぐに原因が解かった。


「こりゃ、無理だわ」


 そこに行くまでに緩やかな坂になっていた事から嫌な予感がしていた。そしてその坂が途切れた場所は崖だった。地図ではそこまで解からないようだ。


「むむむ……そうだ!アドンのテレポートで運べない?」


「ちと高いな。半分くらいまでは飛ばせるが、そこから落下になるぞ。しかも戻る時は崖を登る羽目になる」


 テレポートでは届かないらしい。そういえば、俺のときも10mくらいの高さだったな。あ、そういえば跳躍を試していなかった。どれくらいジャンプできるのだろう。


 俺は足を曲げ全力でジャンプしてみると50m程飛んでいた。


「えええええええぇぇぇぇぇぇぇ」


 思わず叫ぶ。いくらなんでもこれはない。落下したら死ぬ。頭からは落ちたくないので必死に足を下に向ける。そして着地に成功する。足には全然衝撃が来ない。


「な、なんだこれ……」


 またこのゲームの新たな不思議を感じた。自分で行ったジャンプだから無事だとでも言うのだろうか。


「す、凄いね。僕を抱えて飛べそう?」


「やってみるか、さっきよりは高度を下げてみる」


 さすがに体勢を崩して2人で落下死は避けたい。グレッグを脇に抱えてジャンプしてみると20m程飛べた。どうやら飛行スキルとは違って、仲間も抱えられるらしい。


「エイミーとサーシャは自前の飛行があるから良いとして、僕とアドン、アシュリーは運んでもらおう」


「重さはどれくらいまで行けるんだ?わしの重さはかなりあると思うが……」


 グレッグくらいの重量であれば問題なかった。握力上昇の効果だろうか。試しにアドンのベルトを持って持ち上げてみると普通に持ち上がった。違和感しかない。


「凄いな、これ」


「ああ、ここまでとは……」


 これなら2人同時に運べそうである。アシュリーに触れると怖いのでアシュリーはアドンに抱えてもらう。そのアドンを俺が運ぶ事になった。絵面的に俺が凄く潰されそうだ。


「それじゃ、飛ぶぞ」


「ああ、頼む」


 お姫様抱っこされて凄い笑顔のアシュリーの返事はない。どうやらトリップしているようだ。スルーで良いだろう。サーシャが羨ましそうに見ていたので後でやってやろう。


 俺はアドンを抱えて崖から飛び降りる。そしてしっかりと着地できた。落下とはどういう違いなのだろうか。俺は2人を置いて崖の上まで飛び上がる。


「次はグレッグだな」


「うん、頼むよ」


 俺はグレッグを小脇に抱えると跳躍する。今回も普通に着地出来た。


 サーシャとエイミーが飛行で降りてくる。スカートで飛ぶのは止めた方が良いと思う。下着代わりがあのエロくもなんともないインナーなのがとても残念だ。


「さて、海を見に行くか」


 アドンとアシュリーは一足先に行った様だ。着地地点にいつまでも居たら邪魔になるから移動したのだろう。俺たちは砂浜を歩いて海まで向かう。


「これはプライベートビーチみたいだね」


「そうね。ここなら視線を感じずに泳げそう」


 アドンとアシュリーは既に着替えており、準備運動をしてた。この世界の着替えは装備変更で一瞬で出来る。一応無理やり着せる事も不可能では無いが、設定変更も必要になるから効率が悪い。


「さて、着替えるか」


 俺がそう言うと皆一瞬で姿が変わる。情緒も何も無いな。サーシャもエイミーもビキニ型らしい。グレッグは知らん。サーシャがいかにも褒めて欲しそうに見ていたので無言で頭を撫でる。言葉に出すのが恥ずかしい。


 エイミーの方はあえて見ないようにする。下手にみるとサーシャが嫉妬しそうだし、友人の彼女だ。でも、嫌でもあのサイズは目に入ってしまうと思う。それなら仕方ない。


 俺たちは軽く運動をして海へ向かう。アドンとアシュリーは既に入っており、潜水していた。本当に水中を泳いでやがる。


 サーシャが仰向けで浮いていた。どうやらこうやって楽しむタイプらしい。波はかなり弱い為そこまで邪魔になる感じではない。のんびり出来そうだ。




「ん?あれは何だ?」


「どうしたの?」


 俺は水中に顔を入れて見ていると奥の方に神殿のようなものを発見した。もしかしたら何かあるのかも知れない。


「神殿のようなものを発見した。ちょっと行ってみよう。敵が出るようだったら俺が引きつけるから仲間を呼んできてくれ」


「うん、解かった」


 俺たちは泳いで水中を移動する。呼吸が出来るから長時間でも簡単に滞在できる。ゲームって素晴らしい。

 

 神殿に近付くとギリシャ神話に出てくるような柱の多い神殿だった。サーチをしても魔物の気配はない。神殿の中に入ってみるが、1つ祭壇があるだけで特に珍しいものはなかった。


 俺たちは祭壇へと近寄る。その祭壇の上にはネックレスと指輪があった。罠がある可能性もある。念の為、それらを取る前に周囲を見て回る。特に閉まったりする場所は無いようだ。


「取るぞ」


「うん」


 サーシャが確認する声を聞き、俺はそれらのアイテムに手を伸ばす。抵抗も無く普通に取れた。効果が解からないので装備はしない。罠の可能性を考慮して周囲を警戒するが、特に何も無い。


「とにかく出よう。何が起こるか解からない」


 俺はそう言うとサーシャの手を取り神殿を後にする。神殿から離れてしばらく経つと神殿が崩れていく。役目を終えて壊れたのかも知れない。海から上がり、手に持っている2つの装飾品を見る。


「指輪とネックレスか。このゲームの装飾品って何気にレアなんだよな」


「このネックレスも最初のボスで手に入ったままだったね」


 サーシャは自分でつけているネックレスを大事そうに触れる。そういえば、ずっとこのネックレスを付けていたな。


「まぁ、効果が解からない以上鑑定待ちだ。さすがに呪われていたら洒落にならない」


 呪われたアイテムがあるのかどうかは知らない。付けてから呪われていました、といわれても困るので保険だ。俺はアイテムボックスへと仕舞う。まだ昼間だ。遊ぶ時間は一杯ある。俺たちはまた海で遊ぶ為に一緒に向かって行った。





「日焼けをしないのは嬉しいわね」


 夕方、着替えて崖を跳躍で登った後の帰り道にエイミーが言っている。確かに日焼けをしないのは助かる。この後に風呂に入って日に焼けた肌を痛める事がない。リアルでも日焼け止めを塗れば良いのだが。


「そうだな。でもあれはあれで海の風物詩なのかもしれないな」


 いつになったら俺たちは現実へと帰れるのだろうか。攻略組の人たちは必死になって進めている。急げとも言えない。無理だけはしないで欲しいと思う。


 俺たちが安心して遊んでいられるのも彼らが頑張っていてくれるお陰だ。そうでなければ俺たちも体を張って攻略を進めないといけないだろう。


「さて、このまま宿に泊まるか、自宅に戻るかどっちがいい?折角の海だし、宿というのも良いと思うんだけど」


「それもいいな。海鮮を食べるのも良いかも知れないな」


 俺たちは全員宿に泊まる事に賛成した。部屋割りがカップル毎というのはどうかと思うが、今更である。俺たちは宿に泊まって翌日家へと帰宅した。



 帰りがけに道具屋へ寄り、海で取った装飾品の鑑定をして貰う。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

身代わりの指輪

効果

死亡時、完全回復した状態で復活する。

1回使うと24時間使用不可

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

誓約のネックレス

効果

主従関係の隷属が100%を超えるようになる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「指輪はフィルム向けだね。盾役が倒されたらパーティが壊滅するからね。ネックレスはサーシャが使うかい?」


「私はこのネックレスがあるからいい」


 そう言って自分がつけているネックレスに触れる。サーシャにとって思い出の品になっているのだろうか。


「なら私が貰ってもいいかしら」


 エイミーが立候補してくる。俺たちが使わないとなると100%を越えそうなのはエイミー達だろう。俺とサーシャは承諾し、手渡すとエイミーは喜びながら首にかける。だが、その後の表情を俺たちは忘れない。あれはろくでもない事を考えている顔だ。


 何事も起きない事を祈りつつ俺たちは自宅へと向かった。その夜、地下室から恐ろしい声が聞こえたとか何とか。

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