24話
「おや?あ、みんなごめん。個人チャットが入ったからちょっと待ってね」
俺たちは今、北の方にある山に来ている。周囲は雪で埋もれている。正直、ここまで雪が多すぎると幻想的でもなんでもない。開発は色々と間違えたんじゃないか?
グレッグが個人チャットで話している間、俺たちはキャンプを設営する。雪山でのキャンプは危険だ。それだけに場所の確保は難しい。寝ていて雪崩で全滅とか笑い話にすらならない。
俺たちは周囲を見渡すと洞穴を見つける。冬の山とかだと中に熊が居たりするのだが、幸い俺たちは戦闘を得意とする集団だ。ドラゴンが居ても討伐してみせる。
入ってみると奥行きが殆どないただの穴だった。その上は巨大な山とかでもないので大雪が降っても雪崩で塞がる心配もないだろう。俺たちはここで一晩明かす事に決める。
サーチしても周囲に敵影はないどうやらここは安全なエリアのようだ。トレインで突っ込んできたとかならまだしも、そうでなければ魔物はこないだろう。
俺たちは鎧から普段着に着替える。設営準備で鎧は正直動きにくい。一応洞穴内だが、テントは張る。内部は暖房設備が整っているのか普通に暖かいからだ。またこの世界の不思議機能である。
「テントはこんなもんでいいか。アドン、そっちはどうだ?」
「うむ、見張りも問題なさそうだ。ここから周囲を見渡す分にも問題ない」
俺はテント設営、アドンは周囲の警戒だ。ここに来るようになってテントを張るのが上手くなった気がする。グレッグの方を見ると虚空を眺めて口だけ動いている。どうやら個人チャットは終わっていないらしい。
「テントの設営は終わったぞ。寒いなら中に入って温まろう」
俺がそう言うとグレッグ以外の全員がテントに入る。6人用なので、特に問題なく入れるが、基本的にカップル毎に集まって座るのが俺たちの中では当たり前のようになってしまっている。この中にぼっちが入ったら発狂しそうだ。
「サーシャ、寒くないか?」
「うん、大丈夫。フィルムが暖めてくれるから……」
どう考えても甘い空間である。アシュリーとアドンも似たようなものである。あのアドンがここまでデレデレになるとは思わなかった。俺は座りながらサーシャを後ろから抱きしめ一緒の毛布に入っている。このままいたずらをしたい気分になるが、止めておこう。
俺たちはアイテムボックスから温かい飲み物を取り出すと各自飲み始める。この雪山に来る前に麓の町で買っておいたものだ。アイテムボックスのお陰で暖かさはそのままである。
「ようやく終わったよ。エイミー待たせてごめんね」
「いいわよ。それで何だったの?」
結構長く話していた。俺たち以外からの個人チャットとなると攻略組の人たちだろうか。グレッグは座るとその内容を話し出す。
「うん、ちょっと厄介なイベントが始まるらしいよ。それに協力してくれないか?という依頼だね」
「厄介だと?」
アドンが食いついた。平常運転だ。でもアシュリーを抱きしめながら言うと様にならない。
「どうやら攻略を進めたことが切っ掛けで襲撃イベントが発生するだってさ。目標対象は最初の町、つまり僕たちの家がある町だね」
「襲撃……か。大規模戦闘か?」
昔のネトゲからずっとそういう戦闘はある。侵略か防衛かの違いはあるものの、基本は大勢で戦うという事だ。恐らく今頃攻略組の面々は人数集めに奔走しているのかも知れない。
「そうみたいだね。これから1週間後に最初の町に10万のモンスターが攻めて来るんだそうだ。防衛に成功すれば報酬も貰えるけど、失敗すると最初の町が魔物に占拠されて施設が全て使えなくなるんだそうだ」
「という事は、私たちの家も?」
グレッグの話にサーシャが不安そうに聞いてくる。その質問にグレッグが頷くとサーシャは俺の手を掴んだ。何だかんだであの家は今の俺たちにとって帰る場所だ。失いたくはない。
「ゲートの中央でもあるし、これが使えなくなるのは全てのプレイヤーにとって大きなデメリットになるよ。僕たちの参加は……聞くまでもなさそうだね」
「当然だ。冒険の拠点を守るのは必須だろう?」
「そうね、あの家は気に入っているのよ。地下室のある家なんてそうそうないしね」
「うん、帰る場所はちゃんと守る」
「面白い事になって来たではないか!!防衛戦結構。楽しませてもらおう」
「私とアドンの愛の巣を破壊しようだなんて許せません。殲滅しましょう」
とこんな感じで全員乗り気だ。これから1週間後、プレイヤー全員による大規模戦闘が始まる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
防衛戦 part1
1 名無しの大魔術師さん
こんにちは
本日より1週間後に大規模戦闘のイベントが発動します
防衛地点は最初の町です
防衛に成功すれば報酬が貰え
防衛に失敗すれば最初の町が失われます
敵の規模が10万と多く皆で協力しなければ乗り切れないでしょう
ゲートが使えなくなるデメリットは全プレイヤーに影響します
皆様のご協力お願いいたします。
受付は最初の町の警備団の詰め所をお借りしています
2 名無しの剣士さん
マジで?ゲートを使えないとか致命傷なんだけど
3 名無しの聖騎士さん
本当にそうらしい
今石碑に告知が出てたぞ
4 名無しの魔術師さん
見てくるか
さすがにこれは全員が影響出るから参加しないと
5 名無しの大剣士さん
強い奴も弱い奴もやる事はちゃんとあるらしいから
自分が弱いから、と言わずに参加して欲しい
6 名無しの槍使いさん
私は避難するわ
戦いなんてしたくない
7 名無しの双剣士さん
それもまた1つの選択肢だが
敗北しても文句を言うなよ?
逃げるという事はそういう意味だからな
8 名無しの大魔術師さん
勝てるように努力はしたいがな
正直、人数次第だと思う
1人がどれだけ強くとも全てをカバーは出来ない
9 名無しの付与師さん
報酬って何だろ
そっちの方が気になるよね
10 名無しの魔術師さん
負けるより勝った後を考えるのも良さそうだ
負けても取り返せるんだろ?
11 名無しの大魔術師さん
ああ、今度は攻防が逆になって占領戦になるらしい
12 名無しの重戦士さん
それはそれでやってみたいがな
13 名無しの双剣士さん
フラグ立てんなよ
導入部なので短めです。
何でこのパーティが雪山に居たのか。それはこんな感じ。
グ「雪山にいこうよ」
フ「何で雪山なんだよ。寒いだけだろ」
グ「リアルじゃ遭難が怖いからいけないから、ゲームで感覚が強いからリアルみたいな気分になれるよね?」
ア「ハハハハハハ、それはいい。いざ行くぞ!!」
サ「寒いのは嫌なんだけど……」
エ「暖かい服を買いに行きましょ。乗り気だし嫌とは言えないわよ」
アシ「いいですね。少し高くて買えなかったモノを買えそうです」




