表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避特化のメイン盾  作者: Bさん
1章 ログイン・ログアウト
2/55

2話

 ログインすると町の中だった。その場でじっとしているが、チュートリアルが始まる様子が無い。そういうのが無いゲームなのだろうか。メニューと念じるとアイテム、装備、スキルなど定番の文字が並ぶ。その中からマップかサーチがないか探す。


 マップの中にサーチがあったので、”グレッグ”で検索すると1人ヒットした。どうやら使われにくい名前らしい。俺はグレッグに個人チャットを飛ばすとすぐに反応が返ってくる。


『グレッグ、どこで待ち合わせる?』


『中央広場だと混んでいるから、マップの右の方にある宿屋で待ち合わせしよう』


 グレッグがそんな事を言ってくる。宿で待ち合わせとか卑猥すぎるでしょう。


『え?ホモ?』


『いやいやいや、説明書を読んでいないの?宿か持ち家でログアウトするとログアウトしている時間でボーナスアイテムが入るんだ。だから宿の場所は知っておいた方がいいんだよ』


 そういう理由らしい。奴がノーマルで助かった。俺たちは宿で待ち合わせをする。到着すると先にグレッグが着いていた。


「よう、お前リアルと同じ顔で作るとか度胸あるな」


 俺はグレッグというより誠二そのままのキャラに声をかける


「え?ちゃんとイケメンに作ったはずだよ。そっちこそリアルと同じじゃないか」


 何か変な事を言われた気がする。ステータス画面を開くと自分の全体像が表示される。そこにはリアルと同じ俺の姿があった。


「何だこれ、バグか?」


 どうやらグレッグも確認したらしい。リアルの姿を晒すバグとは斬新だ。βテストでは解からなかったのだろうか。


「まぁ、俺もお前もそこまで気にするほどの容姿ではないだろう。このまま狩りに行こうぜ」


 俺はそう提案してグレッグを誘って狩りに行こうとする。何せ試し用のキャラだ。さっさと慣れてちゃんとしたキャラを作りたい。


「2人よりそこに1人寂しそうにしている子がいるから誘おうよ」


 どうやらグレッグは俺と2人きりでは嫌らしい。宿の近くを見ると中学生くらいの女の子が居た。頭から生えている猫耳が可愛いと思う。


「そこの人、一緒に狩りに行きませんか?」


 俺の返事を聞かずにグレッグは猫耳の子に話しかける。これだけ見るとナンパみたいだな。ネトゲでパーティを作る時は普通にある光景ではあるけど。


「え?私?いいの?」


 猫耳の子はそう言ってくる。2人よりも3人。大勢の方がMMOは楽しいだろう。


「ああ、ネトゲは人数が多い方が面白いだろ?」


「うん、お願い」


 パーティ申請をしろって事だろうか。説明書を読んでこなかったのでやり方が良く解からない。


「グレッグ、頼む。俺はやり方が解からん」


 そういうとグレッグはパーティ許可を俺と猫耳の子に飛ばす。俺たちはそれを承諾して加入する。俺一人であれば拒否するお約束があるのだが、さすがに空気を読む。


「俺はフィルム。職はライトシールダーだな。宜しく頼む」


「グレッグだ。職はソードマンだね」


「私はサーシャ、エンチャンター」


 俺たちは名前と職業を紹介し合う。そして俺たちは狩りをする為に町から出て行く。



「さて、最初の敵は何だろうなー。って兎?」


 俺は周囲を見渡しながら敵を探すと、兎が大量に居る。乱獲をしろって事なのだろうか。


「これは分担して戦った方がいいのか?」


「うーん、折角だし皆で戦ってみようよ」


 俺の意見に対してグレッグはそう返す。確かに最初くらいは様子見で戦ってみるのも悪くはないだろう。


「サーシャもそれでいいか?」


「うん、やってみよ」


 どうやらサーシャもそれでいいらしい。俺たちは一番近くの敵に対して狙いを定める。


「んじゃいくぞ。"挑発”」


 盾職の基本的なスキルである敵対心を自分に向ける”挑発”というスキルを発動する。すると兎は怒った様に俺に突進してくる。俺はそれを難なくかわす。


 次の突進は盾で受け流し、こちらへダメージは全く入って来ない。どうやら回避に振りまくった効果は大きいようだ。


「いくよ」

  

 グレッグはそう言って片手剣で兎を切る。どうやら血がドバーッと飛び散ったりはないらしい。エフェクトで少し赤いのがでるくらいだ。


「えいっ」


 サーシャも杖で殴る。魔法じゃなくて良いのだろうか、後衛職。俺は定期的に挑発を使いターゲットが動かないように俺に釘付けにする。そういえば攻撃してなかったな。


 俺は掛け声もなく持っていた片手剣を突き出す。だが、兎に難なくかわされる。当然その隙に来た兎の攻撃は問題なくかわす。そしてグレッグの攻撃で兎は倒れた。最初の敵にしてはHPが多い気がする。


(俺だけ外れか、それは寂しいな)


 そう考えていると、サーシャが何か思いついたようだ。


「バインドのスキルがあった。これなら相手の動きを少し封じられるから攻撃が当たりやすいかも」


 サーシャは俺を見て言ってくる。お心遣い痛み入る。俺は次の戦いで頼むと言って次の兎に挑発を使って向かってこさせる。そしてサーシャはバインドの詠唱を始めた。


「”バインド”」


 魔法が発動すると兎は魔法の鎖で絡まる。俺はそのタイミングで兎に剣を突き刺すが、かわされる。


「は?」


 思わず声が出てしまう。何度も斬り付けるが一向に当たる気配がない。さすがにグレッグとサーシャはおかしい、と思い始めたようだ。


「とりあえず戦闘を終わらせるね。”スラッシュ”」


 グレッグはソードマンのスキルだろうか。スラッシュというスキルを発動させて大きなダメージを与える。サーシャは杖で殴っているが、攻撃スキルはないのだろうか。程なくして戦闘が終わる。


「フィルム、ステ振りはどんな風にしたんだい?攻撃が全く当たらないとは異常だと思うんだけど」


 グレッグが聞いてくる。どうやら普通に振れば当たるらしい。


「ん?俺は回避にだけ振ったぞ。他のステは0だ」


 グレッグとサーシャが驚く。俺も何となく解かった。ステ0というのはどうやら全くないという意味なのだろう。1なら10%あっても0は0%早い話が当たる可能性が皆無である。


「フィルム、さすがに0のステは残しちゃ駄目だよ。0は可能性がないという意味なんだから回避以外は全部1に振ってから他のステに振るもんだよ。説明書は読まなかったの?」


 グレッグがそういうとサーシャも頷いている。どうやらこのゲームでは常識らしい。


「しかもこのゲーム。初期ステが才能扱いだから、それに準じてステータスが伸びていくんだよ。0だと一切その数値が伸びないんだ」


「知らなかった……まぁ、元々VRMMOの操作に慣れる為のキャラだし、後で作り直すよ。今のうちに回避のやり方を知りたいしな」


 そう言い訳をして狩りを続行する。エンチャンターという職業はもう少しレベルが上がらないと攻撃スキルがないらしい。1人で始めたのに良くそんな職を選ぶもんだ。人の事は言えないが。


 俺たちはしばらく狩りを続ける。レベルが上がり俺たちは3になった。思ったより時間がかかるらしい。ネトゲならではだと思う。ちなみに俺は一撃も食らっていない為、結構いい速度で狩れたと思う。


「さて、そろそろ慣れたしそろそろキャラを作り直してくるよ。フレンド登録していいか?」


 俺は2人に伝えると元々そのつもりだったのか、すぐにフレンド申請が来た。俺はすぐに登録し、ログアウトしようとする。だが……。


「あれ?このゲームってどうやってログアウトするんだ?」


 キャラを作り直すのでどうせ町から始まる。ここでログアウトしてもいいと思ったんだが、ログアウトの仕方が解からない。これも説明書を読まないと駄目なのだろうか。


「ん?ログアウトはメニューの……ない」


 サーシャが説明しようと自分でメニューを開いて言う。グレッグもメニューを開くが同じ反応を返す。


「何だ?ログアウトボタンがないのか?どうやって出るんだこれ」


「解からないね。とりあえず町に戻ってみよう。何か解かるかも知れない」


 グレッグがそう言うと俺たちは早足で町まで戻る。一体何が起こっているのだろうか。




 俺たちが広場へ行くとヒステリーを起こしている人やうな垂れている人が居た。少なくとも娯楽であるゲームの中で起こるような事態ではない。


 グレッグが近くでうな垂れていた人に聞きに行く。さすがにヒステリーを起こした人には聞きたくないだろう。サーシャが何か不安そうにしていたので頭を撫でて根拠も無く「大丈夫だ」と言っておく。さすがに不安そうな年下の子の前では虚勢も張りたくなる。


「フィルム、サーシャ。あそこの石碑に何か書いているらしいよ。行ってみよう」


 俺たちは石碑に近付くと書いてある文章を読んで驚愕した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こんにちは、警察です。


今、このゲームの運営会社が不正アクセスをしているとの事で強制調査に入ったのですが

事務所には会社員が1人も居ませんでした。

なので、ゲームを強制的に停止しようとしたのですが、停止信号を受け付けません。

どうやら皆さんの接続なさっているデバイス以外からの信号を拒否しているようです。


皆様のデバイスにはセーフティーがあるはずなので停止しようとしても受け付けません。

デバイス自体が何かしらの影響を受けている可能性があります。


方法としては皆様のデバイスを強制的に解除してそのデバイスから停止信号を送るしかありません。

それを行うと最低でも数十人が廃人、もしくは何らかの精神障害を受ける危険があります。

人道的に見てその方法は取れないので、別の方法を探した所、ゲームの最後のボスを倒すと安全に停止するようです。


この開発会社が何を思ってこの様な大事件を企てたのかは解かりません。

ですが、少なくとも皆様の命を守る為にゲームをクリアするのが確実な方法と言えます。

外からどうにか出来ないか対応をしますが、皆様の安全を考えると望みが薄いです。

皆様方もゲームの攻略をお願いいたします。


またゲームで死んでも大丈夫ですが、感覚が最大に固定されているようです。

なので死ぬと本当に死ぬような痛みを感じる恐れがあります。くれぐれもご注意下さい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁ……やっぱりデスゲームオンラインって名前は地雷だったのな」


 呆然としながら俺は呟く。グレッグもサーシャも同意してくる。何となくやばそうな雰囲気を感じていたのだろうか。さて、どうするかね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ