サーシャとエイミー①
*サーシャ視点*
「サーシャだっけ?宜しくね」
鳥の翼の生えた女の人が言ってくる。今日のインスタンスダンジョンで一緒になった槍使いだ。名前は確かエイミーと聞いている。また、今日から私たちのパーティに加入する事になっている。
「はい、宜しくお願いします」
私は丁寧な言葉で返す。見た感じそこそこ年上に見える。フィルムやグレッグと同じか少し上くらいだろうか。とても大人びている。見習いたい。
「あー駄目駄目。タメ口でいいわよ。一応これでも18歳だからね」
「え?」
驚いた。下手したらフィルム達より上だと思ったそばからこれだ。私と大差ないのがちょっと悔しい。主に胸で。
「そんなに年上に見える?一応高校3年生で受験生よ。ちょっとした息抜きにやるつもりだったんだけど、こうなっちゃったのよね」
「そうなんだ……」
いつまでログアウト出来ないのかは解からない。数ヶ月以上かかったら受験はかなり辛い事になるだろう。私たち以外にも仕事をしている人たちは絶望的だと思う。
「私も似たような感じかな。ちょっと遊ぼうと思ったら巻き込まれた」
「やっぱりそうなのね。ある意味予想通りというか、まさか本当に来るとは思わなかったわよね」
エイミーが呆れたように言っている。恐らくこのゲームのタイトルの事だろう。ここまで直球だとそういうブラックジョークなのかと思うのが普通だと思う。
「ま、ともかくこれから宜しくね」
そう言ってエイミーは手を出してくる。握手だろうか。誰かに自分から触れるのはかなり久しぶりのような気がする。
「で、どっちを狙っているの?」
エイミーが良く解からない事を聞いてくる。私は誰かの命を狙うような真似をするつもりはない。このゲームでは命を狙うのが当たり前なのだろうか。PKとかは活発ではない気がしていたのに……。
「私は争いが嫌い」
「ん?あ!違う違う」
私の言動でエイミーが何かに気が付いて否定する。何か勘違いをしてしまったのだろうか。
「そうじゃなくてね。随分と仲が良さそうだったから、どっちかと恋人か狙っている人が居るのかと思ったのよ」
「恋……考えた事もなかった」
そう、この環境に慣れてそして生活する事に精一杯だった。そんな余裕は全くない。と言ってもあの2人にはとても感謝している。
「ふーん、なるほど、なるほど。これからみたいね。割って入るのも悪い気がしてたのよねー助かったわ」
恐らくカップルがある程度固まっているパーティに入ると浮気とかで険悪な状態になってしまう事を恐れたのかも知れない。
「うん、大丈夫。そういう話は今の所ないから」
そう言って全て否定する。今の所はない。だけど、今後はどうなるか解からない。このゲームが何ヶ月、何年続くのかも解からない。その間に良い人が現れたら恋人になるのだろうか。
「サーシャは可愛いんだから、選び放題だと思うしね。あーもうこの猫耳に触りたい」
「ちょっとならいいよ。強く触られると痛いから弱くね」
私がそう言うとエイミーが私を抱きしめて頭や耳を撫でる。このゲームに入ってから頭を撫でられるのが気持ちいい。感覚まで猫人になってしまったのだろうか。
そうしていると、エイミーが尻尾に触れてくる。付け根の辺りを触れられると体に電気が走ったような感覚が起こる。
「尻尾は駄目!!」
「あ、ごめん」
私が強く拒絶するとエイミーが本当に悪かったと思ったようで謝って手を離す。私も自分で尻尾に触れたことはなかったけど、これは危険だと思う。
「うん、解かってくれたらいい。尻尾の付け根に触れられると何か変な感覚になったから……」
「ふむ、なるほど。尻尾は性感帯の可能性があるのね」
性感帯と言われても困る。性欲の設定は0にしているはずなのに影響が出るなんて危険だ。通常にして触れられたらどうなってしまうのだろうか。
「絶対に男に触らせちゃ駄目よ?サーシャは可愛いんだから狙っている男も居るかもしれないしね」
さっきからエイミーが可愛いとか言ってくるけども、男の人にはエイミーの方が受けが良いと思う。綺麗だし大人びているし、何より胸が大きいし……。
私はそう考えながら自分の胸を見下ろす。殆どない。これでも少しはある。0ではない。そこは大きな違いだと思う。少なくとも自分の中では。
「さて、そろそろ寝ましょうか。ベッドは1つしかないし、一緒に寝ましょ」
エイミーがそう言うと私をベッドに誘う。今までは女が私1人だけだったけど、同性が増えてくれるのは嬉しい。やっぱり、異性だと話せない事は一杯あるのだ。私はエイミーの大きな胸に顔を埋め、少し悔しいと思いながら眠りについた。




