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一本の電話
「先生が事故に? 」
ある日、小栗さんから電話があった。
小栗さんは、私と一緒に、料理教室の助手をしている年配の女性。
料理教室の先生は、雨宮先生という年配のご婦人。
小栗さんは、雨宮先生と同じくらいのお年ごろ。
つきあいも長いらしく、仲がいい。
「そうなのよ。歩いていてバイクと接触したんですって。
命に別状はないけれど足を痛めてね。
とりあえず、しばらく入院だそうよ」
「じゃあ、今度の料理教室はお休みですか? 」
教室は、月に2回開かれる。
明後日が、ちょうどその日だ。
「もう材料を頼んであるから休めないのよ。
代わりに、先生のお孫さんが来てくださるんですって」
雨宮先生のお孫さん…。
前に先生から少しだけ聞いたことがある。
料理家を目指して専門学校へ通い、卒業後は高名な料理家に師事していたとか。
「お孫さんも、初めてで勝手がわからないでしょう。
だから、佐代さん、早めに行って用意をお願いできる?
教室の鍵は、私が先生から預かって、いつもの場所に隠しておくから」
「はい。わかりました」




