第97話 金沢再戦と戦闘メイド爆誕
日向ちゃんの問題もひとまず片付いて新たな日常を迎えることになる。
ロジャーたちも金沢に行き、下関の攻略メインから博多へと本拠地を戻す事になった。
「希、樹里さんと美穂さんは今何層まで潜れるんだっけ?」
「十二層までですね」
「私も武器新しくしたから、その階層からやりたいな。この間、希も言ってたし魔法無しで基本的な動き方とかを勉強しながら降りたいよね」
「了解です。きっとステータスが違うし敵の動きも見えるから問題無いと思います」
早朝の心愛の家の食堂は、女性ばかり六人で賑やかな朝食を楽しんでいた。
「樹里さん達は、昨日美咲さんと焼肉だったんですよね?」
「うん、お腹いっぱいになるまでごちそうして貰いました」
「あそこのお店でお腹いっぱいとか、普通だと一人二万円とかいきますよね?」
「それでかぁ、帰りに冬月二尉が少し悲しそうな顔してたのは」
「『私達も払います』って言ったけど『そう言う訳には行かないよ』ってちょっと意地になってたからねぇ」
「今度、お礼しなきゃね」
「だね」
「杏さんは、どうされるんですか?」
「ゴールデンウイーク中は基本ゆっくりさせて貰うけど、私は今ここのお店の中でコーヒー飲みながら読書とかするのが一番寛げるから、基本変わらないですよ。冴羽さんから頼まれ事とかあったら対応するくらいかな?」
「どっか出かけたい所とかあったら、私に言ってくれればすぐ行きますよ」と、杏さんの耳元で美穂さん達に聞かれないように囁くと、にっこりと微笑んで「その時はお願いするね」と言われた。
「先輩ちょっといいですか?」
「ん? どうしたの希」
「あのですね、なんで日向ちゃんメイド服着てるんですか?」
「あーあれはお店営業してた時のお母さんが来てた制服だよ。撮影の機材セットするときに片付けてたら出てきたの」
「あのー、それは良いとして私が聞きたいのはなんで日向ちゃんが着てるかの方の問題ですぅ。それにデザインが可愛くないですか?」
「デザインは……おそらくお父さんの趣味的要素とか入ってるかも?」
「でも似合うでしょ? 私、家事とか手伝うしイメージ的にメイドさんじゃん」
「なんか方向性を間違ってる気がするよ日向ちゃん」
「でね希、メイドと言えば戦闘メイドじゃん?」
「なんでそうなるの?」
「なんとなく? それでね私も家を出たし、もうダンジョン行くのも我慢しなくていいから時間のある時に私も鍛えてほしいの。希や先輩の様にとは言わなくても、ある程度は戦えるようになりたいんだよね。戦闘メイドを名乗れるほどには」
「そここだわるんだ……」
希と日向ちゃんの会話を聞いてた樹里さんや杏さんも悪乗りして「似合ってるし、いいじゃん戦闘メイド! それこそその姿で配信したらバズること間違いないよ」って言いだした。
事業として配信に取り組むことになるし、キャラづくりは悪くないかもね?
◇◆◇◆
『もう一度言ってくれ! 冴羽、それは本当なのか?』
『ああ、嘘を言ってもしょうがない。俺の会社でスキルオーブのオークションを請け負う。後、各国のダンジョンランクの鑑定も請け負える。最新のダンジョンの入口全体が写って居る写真を用意して貰えれば行う事が出来る』
『何でそんな技術を持っているんだ』
『結城、それは企業秘密だ。飯の種を簡単にばらす奴なんて居ないだろ?』
『スキルオーブの受け渡しは、各国のダンジョン協会の協力が必要だから、ちゃんと協会の利益も確保できるんだし、悪い提案じゃ無いと思うがな?』
『解った。今日中に俺も一度博多に顔を出す。澤田と一緒に行くから具体的な方法などを説明してくれ、俺が納得すれば、世界中のダンジョン協会にも提案しよう』
『OK、それでいい。末永く良い付き合いを頼むぞ』
『まったく、辞めると言いだして一週間もたたずにこれかよ、つくづく恐ろしいやつだな』
さぁ忙しくなるな。
◇◆◇◆
金沢では先週と同様に特務隊の第一班と【DSF】のチームアルファが最終二十九層に揃っていた。
今回は、バックアップは特務隊第二班とチームベータだけであるが、グレッグのみは攻略隊のメンバーとして参加していた。
全体の作戦リーダーとして、君川一尉が指示を出す。
「突入後、速やかに俺が弱点看破を発動する。キングオーガに相対するのは、ロジャー、グレッグ、俺、冬月の四人だ。弱点位置が四肢の場合は、俺と冬月が、四肢の切り離しを狙う。それ以外の場合はロジャーのギガントショットでの狙撃で倒す。その他のメンバーは咆哮に拠る取り巻きの対処に集中してくれ。以上だ」
「「「了解」」」
今回は『チームシルバー』の殆どの隊員がパーティ作成スキルを習得していたために、横割りの班編成で、日米混合パーティになっている。
各パーティはエスケープのスキルオーブを所持してオーガキングへと立ち向かった。
だが、異変は突入後すぐに訪れた……
黒い霧に包まれて現れたオーガキングへ対して、ギフトを発動する君川…………
が、ギフトが発動しなかった。
「ランクが落ちてるだと……」
「どうした、君川、看破はまだか」
「スマン、総員撤退だ急げ」
ここで戦わずして撤退の指示を出せた君川の判断は正しかった。
金沢ダンジョン入口に全員戦闘を行わずして、戻ってきて君川が頭を下げた。
「ロジャー、グレッグすまん。ランクが落ちていてギフトが発動しなかった」
「なんだと、一日で抜き返されたのか?」
「ああ、その様だ」
「おいロジャー、ランキングを見ろ」
グレッグの声に反応してプレートを確認すると、「なんだと俺が三位だ。グレッグは四位か?」
一気に俺まで抜かれているとか、君川は何位だ?「10位だな」
「何が起こった? 二時間前にダンジョンリフトで降りた時には順位は変動無かったな?」
「ああ、間違い無い」
「この二時間の間にダブル以下の位置から上に上がって来たことになる。しかも二位の俺を抜き去るとか相当な深層をクリアしたやつがいるって事か? おい美咲、ランクの変動はあったか?」
「私は無かったわ」
「十四位から十位の間に居た五人のうちの誰かが、恐らくボスの単独討伐、それも結構な高ランクのボスを倒したのか?」
「そんな実力のありそうなやつは、心愛くらいしか思い浮かばないが、心愛だとランクが釣り合わないな」
「まぁしょうがない、負傷者を出す前に撤退の指示を出せた君川の判断を尊重する」
再度、金沢の討伐は延期された。




