第88話 検証二日目とダンジョン通信
下関ダンジョンは今日も喧騒に包まれていた。
世界的なダンジョン界のスーパースター、ロジャーとグレッグに会える可能性がある上に、昨日も少人数だけでも、気さくにサインにも応じてたし、当然その情報は掲示板でも大きく盛り上がっていた。
そして、お昼過ぎのこの時間に今日も姿を現した。
ロジャー、グレッグ、美咲さんにそれぞれ熱狂的なファンがいる様で凄い盛り上がりだよ。
同じように姿を現した『チームシルバー』には誰も近づかないから、ちょっとかわいそうに思えちゃうよ。
私はダンジョンリフトでさっさと二十二層に下りて、みんなが来るまでの間に少し狩りを楽しんでいた。
あ、宝箱だ。
罠は無い、開けてみるとスキルオーブだった。
このスキルオーブは、あ、無制限スキルだ。
キュアⅡと同等の効果を持つ、デトックスと言うスキルだった。
ロジャーかグレッグにでも売りつけようかな? 少々高くても買ってくれそうだし。
このスキルが有ると、お酒飲んでもすぐアルコール抜く事が出来るから、お酒飲みそうなロジャーなら喜びそうだよね。
ダンジョンボスの部屋の前で待っていると十分もしないで『チームシルバー』とロジャー達もやって来た。
「今日は三人組の二班目の人達にお願いしますね。作戦は今日はパーティは組みません。私を含めた四人でばらばらの状態で、私がドラゴンゾンビの体力を削りますから、合図を出したら一斉に、浄化のスキルオーブを使って攻撃を与えて下さい」
運良くラストアタックが取れたら、もしかしたら言語理解のスキルが取得できるかもしれないからね。
そして、四人でボス部屋に突入した。
昨日と同じようにホーリーランスで体力を削り、ドラゴンゾンビが咆哮を上げた。
『今です、浄化発動してください』
咆哮に合わせて二百体のスケルトンが現れ、そこに三人がそれぞれ、浄化スキルを発動した。
一度では倒し切れてなかった。
『もう一回! お願いします』
二度目の浄化スキルの発動で、漸くドラゴンゾンビも黒い霧へと姿を消していった。
水晶玉が現れ、それぞれに獲得可能スキルを見て貰ったけど、言語理解は誰にも現れなかった。
私も現れた水晶玉を触る。
『NO605ダンジョンの通信環境が解放されました』
(他の人には何も聞こえてないよね)
一応確認のため隊員たちに「今声が聞こえましたか?」と尋ねた。
誰にも聞こえなかったようだ。
二人がパーティ作成、一人がヒールの取得をして外に出た。
ドラゴンゾンビへの攻撃がラストアタック判定になった隊員が、九十四位から一気に三十五位へジャンプアップして大喜びしていた。
他の二人も大量のスケルトンを倒したので、順位はそれなりに上がったみたいだけど、ドラゴンゾンビのラストアタックに比べたら、しょぼいかな?
明日はボス戦中にパーティが組めるかの実験だよ。
「ロジャー、さっきねキュアⅡの効果のあるスキルオーブ拾ったけど買わない?」
「マジか心愛、売ってくれ。いくらだ? 値段は相場が決まって無いから任せるよ! 急がないけどね」
「心愛、何でロジャーに先に声かけるんだよ、俺に売ってくれよ」
「グレッグは次に無限系のドロップが有ったら売るよ」
「まぁしょうが無いか、OK心愛、約束だぜ」
「さぁ今日は、もう終わりにして戻るね、グレッグ達はどうするの?」
「ああ、俺達も今日は終わりにするぜ、心愛は時間は大丈夫か? ちょっと話がしたい」
「十八時くらいまでなら良いですよ、杏さんが十八時まで買取カウンター手伝うって言ってたし」
「じゃぁ、カラーズルームでも借りるか」
「そう言えばロジャーたちって今スマホ持ってる?」
「ああ、持ってるぞ」
「ちょっとここから誰かに電話してみて」
「何を言ってるんだ? ダンジョン内で通話なんか出来ないぜ」
そう言ったロジャーに美咲さんが突っ込む。
「ロジャースマホよく見て、アンテナが立ってるよ」
自分のスマホを取り出した美咲さんが電波の通じてる証明であるアンテナ表示が立っていることを口にすると、ロジャーがどこかに電話をかけた。
『長官、今どこから電話をかけてると思いますか?』
『ん、下関のダンジョン協会からじゃないのか?』
『下関は合っていますが、俺がいるのは最終階層ボス部屋の前です』
『なんだと? ダンジョン内で通話が可能なのか』
『そのようですね。恐らく下関だけでしょうけど一応他のダンジョンも確認してもらっていいですか?』
『今、博多ダンジョンの協会会議室に居るから、確認してこよう』
マッケンジー長官がそう言って電話を切ったが、当然博多ダンジョンでは電波は入らなかった。
◇◆◇◆
下関の協会フロアに戻るとまず杏さんに無事通信環境が整ったことを伝える。
杏さんが、澤田課長に連絡を入れこれを発表していいのか確認を取ると許可が出たのか、協会フロア全体に聞こえる館内放送で発表があった。
フロアに歓声が沸きあがった。
早速、多くの探索者がダンジョン内部と外に分かれて通話ができることを確認していた。
現状、世界唯一の通信環境の整ったダンジョンだから、もっと人が増えそうだね。
私たちはカラーズ用の買取ルームに移動すると、ロジャー、グレッグ、君川一尉、美咲さんの四人と私で話しを始めた。
「心愛ちゃんの言語理解なんだけど全く意識しないで普通にロジャーやグレッグと会話できるの?」
「そうですね、私も言われるまで気づかなかったです。ちなみに私は授業でも英語は凄い苦手でしたよ」
「扉の変な文字も読めるんだよな? 金沢の扉の文字を写して来ているから、ちょっと見て貰えるか?」
「グレッグ凄いじゃん。私もそれは読んでみたかったんだよね」
グレッグから渡された写真の文字を読んでみた。
『鬼の王の魂は、その体を駆け巡る。相対する度に異なる強さを見せるだろう。鬼の王を討伐せし者大いなる力を手に入れる』
「って書いてあるわね。思い当たる事はある?」
「心愛ありがとう、俺達は又大きな失敗をするところだったぞ。前回ロジャーがやられた瞬間に掌にコアを確認したんだ。それで次回は刀を使う美咲に腕を切り落とさせて、コアの破壊を狙う作戦だった」
「そうなんですか? それメチャ危なかったですね。入るたびに別の場所にコアが有ると思った方が良いですよね」
「心愛ちゃん。何かコアの場所を見破る手段は無いの?」
「鑑定スキルで特定は出来なかったんですよね?」
「そうだね」
「だとしたら、今の私の能力では難しいですね、せめて魔法無効を持ってなかったら、風魔法で切り刻むとか手段はあるんですけど……」
「大きな落とし穴を作って、剣山状にセラミックの杭をたくさん作って、その上に落とすのが現実的かな?」
「ちょっと待て心愛、そんなの戦闘に入ってから落とし穴掘るとか非現実的すぎる」
「えっと、土魔法に落とし穴のスキルが有るから、出来なくは無いと思うよ」
「そうなの? それってスキルオーブあるのかな?」
「あ、作っておきますね」
私の言葉に四人は呆れていた。




