第64話 海外と日本ダンジョン協会の思惑①
「何だって、ダンジョンにランクが存在するだと?」
アメリカ国防総省が管理する、ダンジョン攻略特殊部隊【DSF】(Dungeon Special Force)内部では日本ダンジョン協会を通じたアメリカダンジョン協会からの情報に緊急対策会議が開かれた。
「それだけではありません。今まで正確に把握されていなかった、人類のステータスの存在も確認されています」
「何故それが判明したのだ?」
「鑑定オーブと言われる魔道具の発見に拠る物だと日本のダンジョン協会は発表しています。既に日本国内の全ダンジョン十二か所は鑑定され、最低二十二階層、最高百七十五階層の差がある事が判っています」
「それでは現状でも一番浅い階層のダンジョンであれば、攻略は可能という事か?」
「恐らく、その認識で間違いないはずです」
「その鑑定オーブは、わが国では手に入るのか?」
「ドロップですので手に入るかもしれませんが五年間で一度も現れていないので確証も持てません」
「日本からの貸与は可能なのか?」
「それがそのオーブは使い捨てアイテムで一度の使用で消失するそうです」
「では、既に存在しないのか?」
「現在の情報ではドロップ時点で五十個が存在していたそうです。既に二十個が使われて三十個が残されているとの報告です」
「手に入れる為に最大限の努力を行え、友好的に交渉に応じれば良いが、そうでない場合は国力を使う事まで視野に入れなければならない」
「恐らく日本は交換条件次第で提供するつもりだと思います。そうでなければ情報を流すことに危険しか無いので……ダンジョン先進国と呼ばれるアメリカ、中国、ロシアには提供して来るのでは無いでしょうか?」
「日本側の窓口は誰だ」
「ダンジョン協会の協会長『三潴』と言う人物です」
「大使館を通じてすぐに人を派遣し取得条件の確認を行え。電話では駄目だ必ず人を向かわせろ。俺もすぐに特別機を手配して日本へ向かう。最速で招集を掛けれる【DSF】の部隊を二班用意し私と一緒に向かうように指示を出せ、恐らくダンジョンを最初に攻略に成功した時にはスペシャルボーナスが与えられる可能性が高い。日本に二十二層程度のダンジョンが存在している以上、スペシャルボーナスを奪われる可能性が高い」
「すぐに手配します」
これと同じ議論は当然中国、ロシア両国内でも起きて世界のダンジョン討伐の中心が日本となった。
「三潴会長、世界に発信するタイミングが早すぎなかったですか?」
「何故そう思う、麻生君」
「日本が実際に金沢ダンジョンを攻略して、恐らく存在する最初の討伐報酬を手にしてから公表するのが国益に適っていたのでは無いかと考えます」
「麻生君、君は日本を過信しすぎている。表向き日本は最先端では同じ階層に並んだ攻略を行っているが、実情はアメリカの攻略に合わせて、情報を高額で手に入れて真似をして進んでいるに過ぎない」
「日本は金沢を攻略出来ない? という事ですか」
「その可能性も十分にある」
「会長がそう思われる根拠は、なんでしょうか?」
「君も轟君からある程度の情報は聞いているだろう? うちの『結城』、君の所の『轟』それに今回話を持ってきた『冴羽』彼らが今回の鑑定オーブのデータ検証を行った所、人物鑑定において、魔法攻撃や魔法防御という項目も存在している」
「それが何か?」
「項目があるという事は使えるはずなんだ。だが現状誰も使えない、与えられたステータスすら使えてない状態で果たして攻略が可能なのか? 私は否だと判断する」
「そうでしょうか? やらせて見てからで良いのでは無いでしょうか?」
「君は五階層以下のボス戦と言う物を理解してない様だな?」
「と、言われますと?」
「攻略の失敗は死を意味する」
「これまで税金を投入し続けて育て上げたカラーズと呼ばれるクラスの隊員を死ぬ可能性が高いミッションに投入する危険性を理解しなければならない。恐らく中国やロシア、それに負けたくないアメリカは危険を承知の上でも最高戦力の投入を決断するだろう。で、あればだ。敢えて日本の特務隊を死地に追いやる決断より、今回の鑑定オーブの提供と引き換えに、ダンジョンの最初の討伐者に与えられるであろう特典の利益供与を約束させる方が国益に適うのではないだろうかと私は思う」
「それは……仰る事は理解できますが、現場がその弱腰の判断に納得するでしょうか?」
「恐らく……納得はしないだろう。せめて戦力を二分して半分は残さなければ、攻略出来なかった時に日本の探索は立ち止まってしまう」
「そうですね、責任問題であれば今回会長と私が辞任を決めていますので、在任中に行動を起こせば後に残る者たちに負の遺産を残さずに済むと思います。既に辞任を発表している、ゴールデンウイーク明けまでが勝負となります」
その時、三潴の部屋へ総合受付から連絡が入る。
『どうした?』
『アメリカ大使館から駐日大使と武官が面会を求める連絡が入って居ます』
『解った。こちらは総ての予定をキャンセルして大使を優先させて貰うので、最速の会見を設定してくれ』
「麻生君。大使直々のお出ましだ。アメリカも本気だぞ、すぐに結城、轟、冴羽の三人を呼び、こちら側の対応策を決定する」
「了解しました」




