第45話 豚汁と火魔法
希を家に帰すと、まずは日向ちゃんの編集してくれた動画を確認し問題も無さそうだったので日向ちゃんにアップOKの連絡をした。
するとすぐに日向ちゃんから電話が入った。
『心愛先輩、昨日のキッチンスタジオ用の機材ってもうセッティングしましたか?』
『あー、まだだね。今からお料理始めようと思ったから、その前にやるつもりだよ』
『それならちょっとお手伝いに行きますね。十分ほどで到着します』
『ありがとう助かるわ』
日向ちゃんが到着すると早速手際よく機材をセットし始めた。
カメラが二台と、照明器具が結構な数があって、これ私一人だったらどうしていいかわかんなかったかも……と思った。
「先輩、今から作るお料理の撮影させてもらってもいいですか?」
「うん大丈夫だよ」
折角だから雰囲気を出そうと思って、コックコートに着替えてからキッチンスタジオに立った。
早速料理を始める。
今日の食材は、ダンジョンキノコとダンジョン産のさつまいもだよ。
キノコは今日の十層でドロップしたんだけどエリンギのような形をしている。
ダンジョンショップで買ったサツマイモは二十一層のドロップって書いてあったんだよね。
現在博多ダンジョンの最前線でも二十二層だから、まだ随分先のドロップになるな。
自衛隊の入っていない博多ダンジョンだと十五層より下は、ダンジョン関連企業のチーム以外は、ほぼ行ける人はいないだろうけどね。
以前取得したボアの高級霜降り肉と合わせて豚汁にしようかな?
私は豚汁を作る時お父さんに習ったのは、煮崩れを防ぐ為に、先にカットしたお野菜を、高温の二百度くらいに熱した油にさっと通して、油抜きの為に熱湯を一度かけてから使うと、煮崩れしなくていいと習ったよ。
彩が足りないから、人参だけ普通の人参を足して『デリシャスポーション』で煮込み、お出しが沸き上がってから、お肉を投入する。
お出しが沸騰する前にお肉を入れると、お肉の臭みがお出しに出て味が良く無いんだよね。
お肉に火が十分通ったタイミングで丁寧にアクを取ると一度もう一つのお鍋と、ざるを用意して具材を移す。
下のお鍋に移したお出汁は、もう一度シノワで濾してから、火にかける。
凄い手間をかけるけど、これで美味しさは格段に上がるんだよ。
お出しがもう一度沸いたタイミングで、丁寧に味噌を溶かし込んで、ざるに上げて置いた具材を戻す。
ここからは、沸騰しない様に気を付けながら、具材に味をしみこませる感じで、十分程煮たら出来上がり。
さぁ実食!
美味しそうに炊けたご飯と一緒にいただく。
「めっちゃ美味しいよ。手間をかけただけあって、見た目も綺麗だし、みそ汁の味も雑味が無い。最高だよね」
デリシャスポーションを使ってないバージョンも一緒に作って、撮影のお手伝いをしてくれた日向ちゃんにも食べてもらった。
「先輩、超おいしいです。こんな美味しい料理が食べれるなら毎回料理の撮影は私がお手伝いします! って言うかさせてください!!」
「それは私的に超助かるけど結構遅い時間とかになることもあるよ、大丈夫?」
「こんなに美味しくて綺麗な料理が食べれるなら無問題です」
日向ちゃんが帰ってから、先ほどから私の目の前に広がっていた画面に目を向ける。
【火魔法】
【土魔法】
【風魔法】
【雷魔法】
うん、今日は【火魔法】だよね。
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【火魔法】
炎神アグニの加護により、炎に纏わる様々な魔法を覚える。
ファイア LV1
ファイアソード LV5
ファイアランス LV15
ボルテックスファイア LV25
ナパームボム LV50
ヘルファイア LV100
フレイムヒール LV10
ファイアウオール LV20
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大体予想通りだけど、フレイムヒールってなんだろ?
鑑定してみよう。
『フレイムヒール』火傷状態に特化した回復魔法。
「あー成程ねぇ普通の切り傷なんかとは別って事なんだね。凍傷とかにも効果あるかもしれないね。皮膚の再生とかを伴うから、恐らくポーションだとランクⅤじゃ無いと火傷の治療は出来ないだろうから、かなりリーズナブルかもね」
◇◆◇◆
スマホを確認すると、杏さんからのメールが届いていた。
札幌ダンジョン『NO245ダンジョン 階層数58 Bクラス 現在到達階数19』
やっぱりダンジョンによって階層数とか違うんだね。
もしかしたらEクラスダンジョンとか存在したら、階層数が二十層以下なんていう可能性もあるかもしれないよね。
でもなぁ、この事実を私達が認識したとして、どうやって発表するべきなのかな?
私達だけで出来る事なんか限られてるし、この先ダンジョンから魔物が溢れる状態にならないと言う保証も無いんだよね……
私のお料理以外の方法でスキルを習得してくれる人が現れてくれれば動きやすくなるんだけど……ダンジョンの攻略を進めて最下層にたどり着いた時が一つの分岐路になるかもね。
明日も学校だから、もう寝ないと明日がつらいな。
◇◆◇◆
「せんぱーい、おはようございまーす。聞きましたよ昨日は日向ちゃんと二人っきりの時間を過ごしたそうですね。私も呼んでくれたら良かったのに」
朝の六時に希が現れた。
パジャマのまま顔も洗って無い状態で顔を出すと、いきなり飛びついて来た。
「パジャマ姿の先輩とかレア過ぎますぅ。ほっぺたの辺りのよだれ筋のような白いラインが素敵です」
飛びついて私のほっぺたを舐めようとして来た希を、反射的に叩き落してしまった。
「何で朝からそんなハイテンションで、私の羞恥心を煽るような行動してるのかな?」
「だってぇ昨日の魔法でテンション上がっちゃって、火魔法は覚えれるようになったかな? って考えだしたら全然寝れなかったんですぅ」
「希、授業中寝てたのがバレたらダンジョンには連れて行かないからね? 勝手に行けない様にステータスオール1にして、ここで留守番させるよ?」
「ひえぇ……酷いです。絶対根性で頑張って起きてますから置いて行かないで下さい」
「ちょっと顔洗って来るから、食堂に行ってコーヒー淹れていてよ」
「はーい、了解です」
顔を洗って制服に着替えてから、食堂に顔を出すと希がコーヒーと格闘していた……
「希、なにしてるの?」
「先輩このコーヒーの粉がいくらお湯を注いでも溶けなくて、混ぜ方が悪いのかと思って全力で混ぜてました」
「インスタントじゃ無いから溶けないよ……」
「ええ、普通のコーヒーってお湯で溶けないんですか? 知らなかったですぅ」
「まぁいいよ……火魔法覚えれるようになったから、ちょっと待っててね」
アイテムボックスから昨日の豚汁を取りだして希の前に出した。
「ご飯は食べて来たの?」
「まだですぅ」
炊き立てのご飯もアイテムボックスに入れてあったので、ご飯茶碗に入れて豚汁と一緒に出した。
「召し上がれ」
「いただきますー、わぁメチャ美味しいです。幸せですぅ」
「あ、【火魔法】覚えました! 凄いです!! いったいこれどういう仕組み何ですか?」
「元気があれば何でもできる。だよ」
「ボンバイエ」
「それとさ、お料理の撮影の時は日向ちゃんだけでお願いしたいかな」
「なんでですか?」
「スキルを覚えるときに食べてもらうし、料理動画の撮影までここにいたら家にいる時間がほとんどないじゃない? お母さんや弟君が寂しがるよ」
「ん-、確かにそれはあるかも。とりあえずは了解です」
自分でコーヒーを淹れ直してトーストと目玉焼きで朝食を済ませ、希と学校に向かった。
朝から疲れるよ……




