第229話 ハーデスからの伝言
無事にルーレットのレッドオアブラックで十連勝したその時バニーガールスタイルのニコールさんがその場にうつぶせに倒れた。
「ニコール!」と叫びながら、グレッグがすぐに駆けつける。
「違う……ニコールさんじゃない。グレッグ離れて」
背中が大きく開かれているバニースーツ姿のニコールさんらしき女性の背中には、ニコールさんならあるはずのペルセポネ様の入れ墨が存在していなかった。
倒れていたニコールさんらしき女性がその状態から立ち上がって振り向いた。
「誰? ですか」
「わらわの名はペルセポネ、冥界の王ハーデス様の忠実なる僕であり女王でもある。お主たちは、予想外の手段で第一の関門を突破したので興味が湧いた。わらわが直接に相手をしてしんぜよう」
「予想外? 私たちの手段は違ったのですか?」
「違ったわけではない。ただよく考えてみるがよい。確かに十回続けて勝つ事が第一の関門の条件ではある。しかしそれぞれが一回の勝負だ。一度の勝負が百パーセントの勝率であれば、十回繰り返そうが百回繰り返そうが負ける確率はあるまいて。それを十回の勝負を何度も繰り返すような確率論で運の数値を高めたのじゃ、ダンジョンのシステムとしてこんな序盤においてそのようなステータスの数値になるようなプレイヤーが現れた事に興味が湧いたのじゃ。しかもわが姉アテナの加護を持つ娘とはな……そちはゼウスの姿を見たか?」
「ゼウス様? いえ、会った事なんてありませんし、ゼウス様ってペルセポネ様のお父さんじゃないんですか?」
「父、確かに人間の世界での考え方であれば父なのであろうな。だが今はハーデス様の邪魔をするだけの存在だ。見つけ出して始末せねばならぬ」
うーん……いったいどういう事なんだろう。
神様たちの仲間割れでも起きてるのかな? あんまり詳しくは無いけど、ゼウス様とハーデス様って兄弟だよね?
って事は派手目な兄弟喧嘩中っていう事なのかな?
「あの……このダンジョンのクリアはどうすれば?」
「本来であれば、わらわでなくジョーカーが現れる。ジョーカーがおぬしらのスロットマシンでの勝負の心の揺らぎを観察して、勝率の高いと考えるゲームで挑んでくるのじゃ。じゃが心愛が相手では、何の勝負をしても無駄であろう。このダンジョンのクリアはわらわが認めて進ぜる。ただし、ゼウスの姿を見たら必ず報告をするのだ。それまで人質を預かるぞ」
「えっ……」
そう言った瞬間に、ペルセポネ様の顔がニコールさんの表情に戻り、隣に立っていたグレッグの腕をつかむと一緒に姿が消えていった。
「グレッグ!」
ロジャーが叫んだけど、もう、その場にはニコールさんもグレッグも居なかった。
替わりにその場には水晶の乗った台座が現れる。
「心愛、グレッグはどこに消えたんだ」
「わかるわけないよ。でも、ゼウス様とか言われても全然わかんないし、どうしたらいいんだろ」
「先輩、台座に謎文字でなんか書かれてますよ」
希の言葉で台座に書かれている文字を確認した。
『わが愚かなる弟、ゼウスよ。その姿を我の前に現す事を命ずる。姿を現さねばすべてのダンジョンから我が僕たちが溢れだし、愚かなる民を蹂躙するであろう。その時までは666日の猶予を与える』
「ロジャー……どうしよう?」
「これはマジなのかよ?」
その会話をした瞬間に台座の文字が消えタイマーへと変化した。
表示が665日と二十三時間五十九分十五秒……
一秒刻みで着々とカウントダウンしている。
「こうしちゃいられないな。とりあえずマッケンジー長官と今の話をしてくる」
「私も急いで日本へ戻って、冴羽社長やアンリさんに相談してみるよ」
台座に乗った水晶を触ると【運強化】のスキルを手に入れた。
『NO394ダンジョンの通信環境が解放されました』
そして、反対側に現れた扉へ向うと宝箱が三つ並んでいる。
「心愛、開けてくれ」
ロジャーに言われて宝箱を開ける。
「真ん中で行くよ」
出てきたアイテムはメガホン? だった。
心眼で見てみる。
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【ワールドアナウンスメガホン】
このメガホンを使って喋ると世界中の人に言葉が届く。
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凄いけど……使い道にとっても困るよ。
メガホンはロジャーに預けて、まずはダンジョンコアをロジャーがギフトで破壊した。
ダンジョンの中に居た数千人ものシーカーがベラージオホテルの噴水前に吐き出された。
すぐにホテル内の探索者協会ラスベガス支部に移動して、予定していた通りの会議室の中へネバダダンジョンシティへと繋がる転移ゲートを設置した。
それと同時にダンジョン協会から、公式発表の形で世界初のCランクダンジョン攻略がアナウンスされた。
勿論、ハデスからの伝言は秘匿されたよ。
ロジャーが今のクリアでレベル七十二に上がっていたから、再設置してもカウントダウンタイマーは七十二層まで潜らないと確認できないし、簡単にバレたりはしないからね。
すぐにネバダダンジョンシティにテレポするとラスベガスダンジョンの再設置も終わらせた。
「心愛、悪いがディナーはちょっと後回しだ」
「しょうがないよ。私も早く社長たちに知らせなきゃならないし」
希を連れて大急ぎで博多へと戻った。
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今日時点での心愛のランキング
レベル67 ランキング11位 ランクシルバー
希のランキング
レベル63 ランキング123位 ランクブロンズ
「先輩……ランクがヤバくないですか?」
「そうだね……私ももう一つ攻略しちゃうと君川さん抜いちゃいそう……」




