第201話 心愛の初ライブはアヒージョ①
「先輩、おはようございます」
「おはよう、日向ちゃん。今日は予定通りに私たちのライブ配信をするでいいのかな?」
「はい、十九時から配信します。SNSで告知しておきますけど、サオリン先輩も告知をしてくれるそうですよ」
「そうなんだ。サオリンのチャンネルで二十五万人だったからうちのチャンネルだと五千人くらい来てくれたら十分な感じなのかな?」
「先輩、一昨日のコラボの後で私たちのチャンネルの登録者って一気に増えてますよ。今時点で十五万人くらいですね。恐らく一万五千人くらいはライブにも来てくれるんじゃないかな?」
「そんなに? 凄いねぇ。日向ちゃんの方から何か希望はあるかな?」
「そうですね。今回は初回ですし、お料理のライブ配信なんですけど調理を一時間で完了できるようにお願いしたいんです。その後の実食タイムを二十分ほど取って、質問に対応できればいいかな? って感じでお願いします」
「わかったよ、時間のかかる部分はあらかじめ用意して時間を節約するね」
「今日は素材を紹介する時にダンジョンの中でどんな風に出てきて、どんな風に倒したのかをVで流しますから、その辺りの解説は私が担当しますね」
「了解、日向ちゃんも忙しくなりそうだね」
「何事もチャレンジあるのみ! です」
日向ちゃんと軽く打ち合わせをしていると、希も起きてきたので杏さんと一緒に朝食を食べてから学校に向かったよ。
学校に向かうバスの中でサオリンが話しかけてきた。
「心愛おはよー。昨日も遅くまでお邪魔しちゃってごめんねー」
「サオリンおはよー。全然いいよ、あの後はどうしたの?」
「四人で結構遅くまで色々話してたよ。今日は学校が終わったらマネージャーと一緒に名古屋に行って全体ミーティングなんだよね」
「そうなんだ、大変だね」
「移動時間が結構かかっちゃうからね」
「そっかぁ、うちのグループ企業になっちゃったら、名古屋と博多を繋ぐゲートも出来るから、そのまま金沢とも行き来できるんだけどね」
「そうなったら超便利だよね」
「でも、それはそれで一般開放なんかしたら今の運輸業界が窮地に追い込まれるとかで色々面倒もあるらしいけど」
「そうなんだ……今日の心愛たちのライブ配信は私もつぶやいたけど、咲さんも告知してくれるって言ってたよ」
「それは凄そうだね」
「サーバーがパンクしちゃうかもね?」
「えー、それは困るかも」
午前の授業が終わり、午後からのダンジョン実習に向かう。
今日は千葉ダンジョンの六層から十層の攻略だよ。
今日は全体の責任者は自衛隊の岡田曹長だった。
「今日は、トラップの感知と解除の重要性を学んでもらう。各班にはシーカーのJOBを取得した隊員を配置するので指示には必ず従うように。ダンジョン内では魔物との戦闘での事故より、宝箱を始めとしたトラップでの事故の方が圧倒的に被害が多い。この先さらに十五層や二十層になると即死級の罠の可能性も高まる。くれぐれも気を抜かないように行動しろ」
あいかわらずの鬼教官チックな挨拶に、高校一、二年生しかいない同級生たちは結構ビビッてたけど、希だけは平常運転だった。
「岡田教官! メッチャ怖いですぅ」
とか普通に言うもんだから、ちょっとだけ場が和んだのかな?
授業として行う以上は私や希みたいに上位のスキルを持っていたら、参考にならないので、私は箒の上で、希は桃ちゃんの上で見守る事にして教育部隊の隊員さん達に任せたよ。
私は十層の階層ボスの時だけ戦闘に参加した。
金沢の十層のボスは大きな越前ガニだよ。
今日はここまで一度も戦闘に参加していなかったので任せてもらう事にした。
TBが『おいらがやってもいいニャ?』って聞いてきたから『いいよ』って返事したら、今の最大サイズの小型バスくらいの大きさになって爪で一撃で倒しちゃった。
他の生徒たちは呆気にとられてたけど、TBも強くなったよね……
希たちの班も、十層は桃ちゃんのブレスで一撃だった。
日向ちゃんは、聖魔法を披露していたよ。
省吾君も対抗するかのように火魔法で倒してた。
後の三班はみんなで取り囲んで、チクチクダメージを与えるというある意味正統派な倒し方だった。
ダンジョンリフトで一層に戻ると、現地解散になった。
私たちは博多へ戻ると、配信の準備を始めた。
今日は『アヒージョ』を作ろうと思っていたので昨日のうちからペットボトルの中身をエクストラバージンオリーブオイルに入れ替えておいたよ。
重要なポイントなのはエクストラバージンオリーブオイルだと加熱によって香りが飛びやすいという点なんだよね。
人によっては、香りが飛ぶんだからピュアオイルで作って最後にエクストラオイルで香りを足すという人もいるけど、お父さんはピュアオイルだと雑味が多くて日本人の味覚には合わないから、最初からエクストラオイルを使って最後にもエクストラオイルを足した方が洗練された味になるって言ってたよ。
材料の準備もする。
今日は金沢ダンジョン産の甘えびとホタルイカが主役だよ。
ダンジョン産のホタルイカには寄生虫なんかいないから生食でも全然大丈夫なんだけど下ごしらえはしっかりとしなきゃね。
ライブでも一匹はやって見せるけど全部の下ごしらえをライブでやってたら時間が足りなくなっちゃうからね。
ホタルイカの目と嘴を骨抜きを使って取り除いていくだけなんだけどね。
お野菜は、今日はダンジョン産のミニトマトと、マッシュルーム、それとロマネスコを使うよ。
ロマネスコはブロッコリとカリフラワーのあいのこのようなお野菜で見た目の色も奇麗な黄緑色で形も三角錐の可愛らしい形のお野菜だよ。
後はニンニクと鷹の爪、お塩とレモン、スモーキーパプリカの粉末、刻んだイタリアンパセリ、それとお父さんレシピではスペイン産のスパークリングワイン『カヴァ』を使うんだよ。それと忘れたらいけないのがバケット! 以上でオッケー。
配信時間も近づいてきてちょっとだけ緊張してるかな。
客席のテーブルでは杏さんと希も既に着席しているよ。




