第198話 社長INブートキャンプ
「アンリ大佐、ではクリスマスホーリーが請け負う最初のダンジョンシティ計画はイタリアでいいですね?」
「うむ、問題ないだろう。イタリア政府の要請通りにトリノのDランクダンジョンを攻略して、ヴェニツィアにダンジョンシティの構築を行う」
「イタリア政府とダンジョン協会から送られてきた申請書類とダンジョンの状況では、六つのダンジョンが存在し、ミラノのSランクダンジョン、ローマのAランクダンジョン以外はすべてがDランクダンジョンです。攻略進行具合はどのダンジョンも二十層までは進行しています。イタリア政府としてはバチカンを抱えるローマからは出来るだけダンジョンを遠ざけたいとの希望があります。現状、ローマダンジョンの攻略は時期尚早であるので、Dランクダンジョンだけでも集めておきたいという意向ですね」
「なるほど、今回はトリノだけでいいんだな?」
「はい、トリノは二十三層までのDランクダンジョンで現在到達二十二層、マップも存在しているので、木曜日からのスタートで日本時間金曜日の十六時以降から心愛ちゃんが合流する予定です」
「問題ないだろうが、一応一週間では終わらない可能性も考慮しておくべきだな」
「はい、問題ありません。契約締結から一月以内の完了と伝えてあります」
「そういえばイタリアダンジョンアーミーの『カルロ・アンジェロ』がミラノで消息を絶った話は知っているか?」
「シルバーランカーで十三位だったアンジェロ大尉ですね。公式に殉職が発表されています」
「うちのアンジョリーナ少尉が調査をしてきたが、ミラノの二十四層の中ボス撃破後の宝箱のトラップに嵌ったと言う事だった。イタリアダンジョンアーミーでは慣例として一番階級の低い者が宝箱を開ける事になっていたんだが、その時の同行者でロマーノ一等兵と言う隊員が、アンジェロ大尉が下がる前にいきなり宝箱を開けて、転移罠による移動をしたと言う事だ」
「どの程度の深さの場所に飛ばされたのでしょうか?」
「ミラノダンジョンは最下層と最深部到達階層はどうなっている?」
「百二十三階層のSランクダンジョンですが、最深部到達階層が表示されません」
「どういう事だ?」
「わかりません。イタリアダンジョンアーミーにより二十四層までの踏破は確認されていますが、それ以降の階層はアンジェロ大尉が消息を絶って以降は侵攻していないという話です。恐らくですが、アンジェロ大尉が飛ばされた階層が深い階層で、間の階層を飛ばして攻略したために起こったバグではないかと考えています」
「あり得るな。だとすればミラノ二十四層に現れる宝箱を開けないように周知徹底しなければ危険だ」
「イタリアダンジョン協会に通達はしておきます」
「イレギュラーな問題でSランクダンジョンのスタンピードなんて事が起きれば、世界中が大混乱を起こすぞ」
「今月の新月の日には異変が無かったので、早急な心配は無いと思いたいところですが手放しで安心はできませんね」
「うむ」
◆◇◆◇
翌日の放課後、今日は予定通りに金沢ダンジョン低階層で狩りをする予定だよ。
海産物をたくさん仕入れたいなー。
冴羽社長のレベル上げの件もあるから、昼休みに連絡して金沢ダンジョン協会支部で待ち合わせをした。
「心愛ちゃんお疲れさまー。希ちゃんと日向ちゃんも学校は慣れてきた?」
「あれ? 杏さんも来たんですね」
待ち合わせ場所のカフェで冴羽社長と杏さんが寛いでいた。
「昨日、心愛ちゃんが言ってたDライバー社の社長さんの話を少しだけしてたんだよ」
「そうなんですね、今日は杏さんも一緒に潜りますか?」
「そうだね、私も金沢で困らない程度には鍛えておきたいし、JOBとリミットブレイクは欲しいかな? って思っててね」
「それは大事ですね。社長も千葉と金沢を二十層まで進めた頃には、ある程度のレベルにはなりますから、その予定で頑張りましょう」
「ああ、よろしく頼むよ心愛ちゃん」
「あの、社長としてはDライバー社のお話ってどう思われますか?」
「ああ、はっきり言って配信業界ではうちは素人同然だからね。心愛ちゃんたちが本気で配信に取り組むんであれば、Dライバー社との提携は願ったりかなったりじゃないかと思うんだが。でも一番大事な事はDライバー社の社長が信用に値する人かどうかだ。一度会ってみよう」
「それって伝えても大丈夫ですか?」
「勿論大丈夫だよ。出来れば今日とかだと一日予定を入れてないんだけどな。明日からはイタリアに向かう予定だからね」
「それは流石に向こうも困ると思いますけど……一応連絡してみます」
すぐに、伊藤マネージャーに連絡を入れると今、サオリンの部屋に居るから五分でそこに向かいますと返事があった。
本当に五分で協会のカフェに顔を出した伊藤マネージャーが、冴羽社長と杏さんにに挨拶をして「弊社の社長に連絡を入れますので少々お待ちください」と言い席を外して電話をかけていた。
三分ほどで戻ってくると「今日の十九時にこちらに弊社の麻宮と田中が来るとお伝え下さいと言う事でした」
「十九時は少し早いな。ここに二十時にしていただけますか? ダンジョンでレベル上げをしに来たので三時間は狩りをしたいと思いますから」
「了解いたしました。麻宮にそう伝えます」
伊藤マネージャーにそう伝えると時間が勿体ないからと言って、早速金沢ダンジョンに五人で潜った。
少しでも効率を上げるために一層から、私と希と日向ちゃんが魔法全開で敵を倒しながら駆け足で十層まで下りたよ。
杏さんは普通についてこれるけど、社長は駆け足で付いてくるだけで息が上がっていた。
「社長、まじで鍛え方が全然足りてないですね。でも十層まで下りてきただけでレベルが上がってますね!」
「はぁはぁ、いやぁ本当に付いてくるだけでいっぱいいっぱいだったよ。これでも運動神経はかなりいい方だと思ってたんだけどね」
スタート時点で6だった社長のレベルは十層到着時点では10まで上がっていた。
それから約束の二十時前までの時間をかけて各階層を虱潰しに狩りながら十三層まで下り、社長のレベルも十五までは上がったよ。
私はダンジョン越前ガニとダンジョンノドグロ、ダンジョン氷見ブリにダンジョン甘えび、ダンジョンホタルイカを大量にゲットして少し幸せだった。




