第157話 札幌十五層
教室に戻ると由香にだけは伝えておこうと思って話しかけた。
「ねぇ由香、ちょっと内緒の話だけどいいかな?」
「どうしたの心愛?」
「私ね、探索者養成学校に合格しちゃったんだって」
「ええっ、いいなぁ、なんで? 心愛だけなの?」
「なんだか内規? っていうのがあって、ランキングカードの順位が高い生徒たちが全国で百人くらい早期合格の通知があったらしいよ。それでね、そのメンバーは養成学校のカリキュラムの確認とかで一足早く来月から金沢に呼ばれちゃったの」
「そうなんだ、急だねぇ。私も合格できないかなぁ」
「先に行って待ってるからね」
「うん、私も頑張るよ」
「一応、みんなには内緒にしておいてもらえるかな? 転校した後は言っても大丈夫だから」
「うんわかったよ」
学校が終わると希と日向ちゃん、それに美穂さんと樹里さんを連れて札幌に向かった。
「あれ? 先輩、今日はいきなり札幌に到着しちゃったんですね。確か札幌に直接行けるのは、レベル100まで無理とか言ってなかったですか? まさか先輩……いきなりレベル100になったとか?」
「そんなわけないじゃん。転移魔法を強化したら、今のレベルでも行けるようになっただけだよ」
「そうなんだぁ、凄いですね」
「うん、便利になったね。今日は、目標の十五層まで行ってテイムしようね」
「はーい、超楽しみですぅ」
札幌の拠点からダンジョン協会に行くと、昨日会った岡田一曹と出会った。
「進藤准尉、相沢准尉、聞きましたよ。お二人も金沢の学校の教官になられるそうですね」
「あ、はい。もしかして岡田教官も呼ばれてるんですか?」
「はい。札幌の教育部隊のメンバー全員、金沢に異動が発令されました。ここの教育部隊の連中も学生たちに指導を行う事で基本の再確認を行えると思いますので、良い決定だと思っております」
「そうなんですね、私たちにもまたご指導をお願いしますね、教官」
「私は准尉の部下に当たりますので、そんな恐れ多い事はできませんよ。それより准尉たちの成長したお姿をぜひお見せください。今日は教育部隊は十四層で活動していますのでよろしければ顔を出してください。教育部隊の連中も短期間で准尉に昇進した先輩の姿を見れればやる気が出ると思いますので」
「十四層に到着すれば顔を出しますね」
岡田一曹と別れて私たちは十一層から探索を始めた。
十四層に到着する間に樹里さんに話を聞いたけど、樹里さん達が居た当時は、まだダンジョンリフトなんかも発表前だし、勿論エスケープも使えないから、十五層まで片道三日間かけて移動して二日間訓練で、それから三日間かけて戻るという過酷な状況だったんだって、勿論その間お風呂なんて入れないし、トイレだって我慢してオムツを履いていたりで超大変だったみたいだよ。
私だったら、そんな環境で訓練を受け続けるなんて我慢できる自信が無いよー。
それだけでも樹里さんと美穂さんの二人を尊敬しちゃった。
到着までの狩りは、希と日向ちゃんだけでも全然余裕だったけどね。
二時間ほどをかけて十四層まで到達した。
教育部隊の人たちが活動しているはずだけど見かけなかった。
「あれ? 岡田さんは十四層で活動してるって言ってたよね?」
「恐らく守護者の攻略に向かっているんだと思います。教育部隊がボス部屋に入る時は、三十六人体制でボスを囲んで集中砲火で削りながら、とどめを刺す形を取りますから」
「そうなんだー、それはそれで凄いですね。お金かかりそうだけど……」
「そうだよね、税金だと思うと肩身が狭いです……」
十五層への階段がある守護者の部屋へ到着すると、教育部隊のメンバーが揃っていて今から突入するところだったみたいだ。
守護者はラスボスと違って一度倒しても五分ほどで復活するので、私たちも別に焦る必要はないので自衛隊の人の後で構わないと思っていたんだけど岡田一曹に声を掛けられた。
「みんな、後ろに注目しろ。お前たちの先輩の新藤准尉と相沢准尉だ。この教育部隊を出てわずか一年で三曹から准尉にまで昇進を果たした偉大な先輩だ。折角だからお二人にご教授いただこうと思う」
その言葉に一斉に振り向いた三十六人の教育部隊のメンバーと三名の教官が樹里さんと美穂さんに敬礼した。
樹里さんと美穂さんも答礼を返すとみんなに向かって挨拶をした。
「私たちは岡田教官が言うような立派な先輩では決してありません。ここにいた一年前には教官に怒られてメソメソしてばかりでした。それでも一生懸命に頑張ればなんとかなるんです。皆さんにも必ずチャンスは巡ってきます。今を無駄にする事無く一生懸命に頑張ってください」
樹里さんに続いて美穂さんが喋った。
「えーと、私と進藤准尉は今は任務でこの札幌ダンジョンに来ています。一緒にいる女子高生の三人が私と進藤准尉の護衛任務対象なのですが、彼女たちは国内の民間探索者として実力ではトップの存在です。折角ですので国内トップの実力がどの程度のものなのかを見ていただこうと思います。これから十四層の守護者の討伐を行いますので一緒に入って見てください。皆さんが進みたい道の参考になると思います」
美穂さんの言葉に岡田一曹から質問があった。
「相沢准尉、准尉たちは特務隊第一班の作戦行動も見られているはずですが、それと比べても遜色ないほどの討伐が行えるという事でしょうか?」
「そうですね、単純なランクでは特務隊第一班は『チームシルバー』と言われるようにダブルまでのランカーで占められています。それに対して彼女たちはトップの柊さんでもレッドランカーにすぎませんが実力は第一班の君川三佐、冬月二尉も認めていらっしゃいます。言葉で語るよりも実際に見ていただくことが一番だと思いますので付いてきてください」
なんだかすごく大げさな紹介されちゃって居心地が悪いよー。
でもそう言っててもしょうがないので、早速十四層の守護者部屋へと入っていった。




