第141話 修羅の国ってどこ……
(アメリカ合衆国ホワイトハウス)
「マッケンジー長官、日本で色々な新技術の発表があったようだが、わが国でも同様の技術は再現できるのかね」
「大統領、それは現状では不可能です。ただしJDAと日本政府はDSFと友好的な関係にあり、新技術によって作られた商品の購入を優先的に行うのは可能と考えます」
「国内ダンジョンが海外へ流出する危険性はどうだ?」
「その点においてはロジャーとグレッグがいる以上、危惧するべき問題ではないと考えます。ただし国内への他国のゴールドランカーの入国には厳しく制限をかけるべきです」
「他国はどう動く?」
「国内にゴールドランカーを抱えていない各国はダンジョンの国外流出を恐れるでしょうね。ただ日本の企業、D-CANがダンジョン攻略に特化した新会社を立ち上げるという話です。ランキング四位のザ・シーカーを抱え込んだそうですから、ゴールドランカーが存在しない国はD-CANと契約する事でダンジョンの流出回避をするのでは無いでしょうか」
「日本国内で軍事的な組織を抱える事は不可能だろう?」
「ザ・シーカーはレジオン出身でフランス国籍も所持しているはずです。今回発表された転移ゲートを使えば世界中のどこに本拠地を置こうと、問題は無いはずですのでD-CANの豊富な資金力で、どこかの国の政府を抱え込んで設立するでしょうね」
「そのD-CANをわが国で抱え込むことは不可能なのか?」
「それは難しいかと考えます。オーナーを含め、他のメンバーもすべて日本人でJDAとも深い関係性にあります。とっくに日本政府も直接のアタックを行ってるはずです」
「友好的な関係を築くしかないということか」
「幸いにもロジャーとグレッグはD-CANのオーナーとは親しい関係性です。国内のダンジョンスタンピードの回避が確認されれば彼らは日本に駐留させます」
「くれぐれも他国に優位性を奪われることが無いように頼むぞ長官」
「了解いたしました」
◆◇◆◇
今日も試験期間中で早目に帰宅すると杏さんがTBを抱っこして出迎えてくれた。
「杏さん、ただいまー」
「お帰りなさい心愛ちゃん。希ちゃんと日向ちゃんもお帰りなさい。試験お疲れさま」
「杏さんの胸部装甲に挟まれたTBがめちゃくちゃ幸せそうな顔してますぅ絶対雄猫ですね」
希が杏さんの抱いてたTBを抱っこしようとすると「シャー」って威嚇して杏さんの胸の谷間に顔を押し込んでいた。
(TBヤバい子だね……)
「そういえばダンジョンの再設置で早速またアップデートがあったようだよ」
「へーそうなんですね。なにが変わったんですか?」
「素材が採取できるようになったそうだよ。ただし再設置されたダンジョン限定らしいけどね。ポーションなんかの材料が手に入るようになれば、値段もぐっと下がるでしょうし、探索者が増える要因にもなりそうでしょ?」
「そうですねー、でも錬金術が無い人達はどうやって作るのかな?」
「そうね心愛ちゃんしかできないんじゃあまり変わらないわよね。でも今までの例から考えると、薬師のJOBとかが手に入りやすくなるとかあるかもね」
「あー、それありそうですよね。明らかにダンジョンって大衆心理に対して迎合しようとする所ありますよね」
「心愛ちゃん……なんだか難しい言葉使うよね。JKっぽく無いよ」
「それっておばちゃんっぽいって事ですか? 酷いなぁ」
「試験は明日までだっけ?」
「あー話題変えたぁ。はい、明日までです」
「当面は博多ダンジョン?」
「いえ、千葉ダンジョンに行く予定です」
「そうなんだ。あそこは揉め事も多いから気を付けてね?」
「そうなんですか? どんな揉め事があるんですか?」
「あそこって元々が夢の国の中でしょ、それでふざけてコスプレで入った探索者がいてね。それを魔物に間違って攻撃しちゃった人が居たの。結局裁判にまでなったんだけど、魔物に間違われるような格好でダンジョンに入った人に責任があるっていう判決がでちゃってね」
「えー……それって、どういう事ですか?」
「コスプレで入ってきた人をダンジョン内で攻撃しても無罪って事だね。それで逆にPvPを楽しみたい人たちが集まってきて、コスプレキャラ達で毎日のように争いが起こるようになっちゃったの」
「かなりやばいですね……でもコスプレしてなきゃ大丈夫なんですよね?」
「そんな常識が通用する人たちばかりなら、問題にもならなかったと思うよ?」
「夢の国ダンジョンと言いながら実質は修羅の国ダンジョンなんですね……気を付けます」
「元々トラップ中心で魔物の発生は他のダンジョンより少ないから、ドロップ目当ての狩りはあまり向いてないしね。その分宝箱は他のダンジョンに比べたらよく出るみたいだけど分母が大きすぎるから実感は出来ないと思うけどね」
「そうなんですね、六層から先の魔物情報を確認しておきますー」
食堂のテーブルで希と日向ちゃんは明日の試験勉強を始めたので、私はTBを杏さんから受け取り、部屋に戻ってミルクをあげていた。
すると冴羽社長から着信があった。
「心愛ちゃん、今は大丈夫かい?」
「はい、どうしましたか?」
「転移マットの設置なんだけどお願いできないかな? って思ってさ」
「わかりました、金沢に行きますね」
食堂のバックヤードに敷いてあったアニメキャラのマットに乗って金沢に転移した。
ダンジョン協会に行くと、先日会った大臣さんが二人もいてちょっとビビったよ。
ダンジョン協会の会長のおじいちゃんもいた。
「こんにちわー、えーとここに一枚と下関のダンジョン協会に一枚でいいんですよね?」
「ああ、それで問題ないんだけど、このミスリルプレートって重さ的には一キログラムしかないだろ? 盗難防止策ってあるかな? 値段が値段だけに」
「あー確かにそうですね。傷つけると機能に問題が出そうですし、あ、重力魔法で圧力をかけてしてしまえばいいかもしれませんね」
金沢協会支部の会議室を一部屋転移用の部屋に決めたようで、そこの床に置かれた転移プレートに重力魔法で負荷を掛けた。
現時点だと三十倍だよ。
「これなら簡単には持っていかれないと思います」
そう言って振り返るとみんな頷いていたから、きっと大丈夫だろう。
「心愛ちゃん下関側の設置なんだけど、場所の指示があるから澤田と俺を一緒に連れて行ってもらっていいかな?」
「はい、大丈夫です」
そう返事をすると、斎藤大臣が声をかけてきた。
「俺と島も一緒に連れて行ってもらえないかな? 転移魔法の体験をしてみたいんだ」
「いいですけど……後ろの人たちが困った顔してますよ?」
SPの人たちがちょっと慌ててた。
結局SPの人たちを説得したみたいで島さんと斎藤さんもパーティに加え下関の拠点マンションへと転移を行った。
「心愛ちゃん。ここに転移したのは理由があるのかい?」
「人目があると色々都合が悪いので、国内の各ダンジョンのそばに拠点マンション借りてもらってます」
「なるほどね」
マンションのすぐそばにあるダンジョン協会下関支部に行くと閑散としていた。
そりゃダンジョンの無いダンジョン協会支部なんて誰も用事ないよね……
澤田さんがてきぱきと指示を出して下関側の転移マットを設置し終わると、早速金沢への転移を試す事になった。
冴羽社長から順番に澤田理事が転移し斎藤大臣の番になった時に異変が……っていうか転移出来なかった。
「あれ? 故障かな?」
私はちょっと思い当たったので斎藤大臣を鑑定したみた。
「斎藤大臣MP不足です。金沢で何回か転移マット乗られましたよね?」
「あーそうだったMP百必要なんだっけ。レベル十だからギリギリしかMPが無かったんだな。でもそれだとダンジョン省を金沢に置いた時片道しか転移ゲートが使えないって事か。困ったな」
「しょうがないですね、サービスでちょっとMPを増やしてあげます。ちなみに大臣たちはこれから先ダンジョンでガンガン狩りをしようとか考えてらっしゃらないですよね?」
「ああ、健康に良いって言うから少し頑張った程度で探索者は目指してないね」
「わかりました」
島大臣と斎藤大臣の二人のポイントを全部知能に振ってあげた。
これでMPは千越えだ。
「知能が百を超えている人はあまりいないので、お仕事でも頑張れると思います」
「ありがとう、心愛ちゃん。助かったよ。今度総理にもしてあげてほしいな。総理もレベル十までは上げてるからね。俺たちが大臣になる前に通ったんだ」
「へー島大臣と斎藤大臣と総理って普段から仲がいいんですか?」
「ああ、大学時代からの友達だ。総理は一個先輩だけどね」
「そうなんですね意外です」
「土方長官も同じ大学だったんだよ」
「長官は少し苦手かも……」
「なんかわかるな」
そんな会話をしてるとなかなか来ない事を心配した冴羽社長が戻ってきた。
「何か問題がありましたか?」
「いや、心愛ちゃんをデートに誘ってただけだよ」
「大臣? それはちょっと問題かと……」
「冗談だよ。MPが足らなかったから調整してもらってたんだ」
「あー確かにレベル十だとギリギリですよね。もう大丈夫ですか? SPの方が心配してますから急ぎましょう」
「わかった」
無事に金沢に戻るとSPの人たちも安心したようだ。




