第124話 高体連からの訪問
「先輩、おっはよーございます」
「おはよう希」
「希ちゃんおはよー」
日向ちゃんが用意してくれたトーストとコーヒーで朝食を済ませると三人で学校へ向かう。
「先輩、試験が終わってからってどこのダンジョンを中心に行動するんですか?」
「そうだねー、博多も進めたいけどスタンピードのルールの問題があるから国内のDランクダンジョンを一通り最終層までは行けるようになっておきたいかな? って思ってるの」
「へーなんだか楽しそうですね」
「私はそれだったら千葉ダンジョンへ行ってみたいですぅ」
「ん? なんで千葉なの」
「だってあそこはレジャーランド内に出来てるからなんか楽しそうじゃないですか」
「どうだろうね? 他のダンジョンと内部はそんなに変わらないんじゃないの?」
「あれ? 先輩、情報不足ですよそれ」
「えっ? 千葉ダンジョンって他の所と違うの?」
「私も7チャン情報でしか知らないんですけど、あそこは五層以下になると魔物の出現率が下がるかわりに、強力なトラップがたくさんあって、まさにアトラクションダンジョンって感じらしいですよ」
「へーそうなんだー。だったら他の用事が入らなかったら千葉に行ってみようか」
「わーい、楽しみですぅ」
学校に着くと野中先生に声を掛けられた。
「柊、ちょっといいか?」
「どうしたんですか野中先生」
「高体連の人が話を聞きたいそうだから、お昼になったら職員室に来てくれ」
お昼の休憩時間になり職員室に行くと、隣の会議室に案内された。
「お呼び立てしてごめんなさい。高体連の綾波と言います」
「柊です、どんな御用でしょうか?」
「今回ダンジョン協会から発表された件で、少し実際のデータが欲しいと思って協力いただけないかと思って来ました。今の状態だとダンジョンで能力が上がってしまうなら高体連として探索を推奨する訳にも行かないから、色々な競技で公平性が失われるんじゃないかと言う話になってね、恐らく今の高校生で一番ランクが高いのは柊さんでしょうと、野中先生に伺って実際どの程度の能力差が有るのかを確認したかったんです」
「そうですか、協力させて頂きたいですけど、人物鑑定が一般的じゃない以上調べようが無いですよ?」
「そうなの?」
「人物鑑定は現状では鑑定オーブでしかできないし、協会の販売額が一個三百万ドルとか言ってました。そんなお金は当然使えないし自己申告を信用するしか無いですから、難しいと思います」
「そんなにするんでは確かに不可能ですね……柊さんがそう言う程、実力差は現れる物なのかな?」
「はい、今回騒ぎになったスタンピード問題で使われたリミットブレイクと言うスキルもありますので、比べる事自体が無意味だと思います」
「何か一つだけでも、その身体能力見せて貰えるかな?」
「野中先生。握力計借りて来ていただけますか?」
「おう、ちょっと待っててくれ」
「柊さんはどうしたらいいと思う?」
「自己申告を信用して、運動競技をやりたい人はダンジョンでの活動を禁止をするか、ダンジョンで活動した人間だけの競技会は別に用意するのかの二択ですね。後者の場合はダンジョンでのレベルアップ自体も競技活動の内という事になります」
「そうですか、それだと虚偽申告に対しての罰則規定なんかも作らないといけなくなるわね」
「柊、持ってきたぞ」
「じゃぁやってみますね」
心愛の握った握力系は、針を振り切った。
「これは……一緒にはダメですね。ちなみに百メートルとか走るとどれくらいで走れるの?」
「測って無いですけど、今なら恐らく七秒は掛らないと思います」
「はぁー……」
深いため息をついて、綾波さんは「ありがとう大変参考になったわ」と言って戻って行った。
中途半端に隠しても不公平な競技が横行するだけだからしょうがないよね?
「おい、柊。この前一緒に行ってからそんなに時間たってないがその間に何が有ったら、こんなに実力が伸びてるんだ?」
「色々です!」
「それで済ませるのか? まぁしょうがないな。一応体育の先生には言って置くが、実技に関しては参加しないでいいからな。実力が違い過ぎると何かと問題にしたがる父兄とかいるから我慢してくれ」
「全然我慢なんかないですよ? むしろ公認でサボれるとか素敵過ぎます」
「それとだな、柊は探索者学校の話は聞いてるよな?」
「はい、教室でも色々話題に上がってますから」
「先生にもな、まだ内々だが転勤の打診が来てるんだ。この学校でダンジョン活動のサークル活動を始めていたから、その関係でな」
「そうなんですか? 先生はそれで金沢行かれるんですか?」
「橋本先生にも同じ打診が来ていて、まだ返事はしていないんだが受けようと思ってる」
「橋本先生も一緒ならいいじゃないですか。実は私も転校しようと思ってたんです」
「そうなのか? ご両親とかの反対はないのか?」
「うちは母だけですけど、今はお祖母ちゃんの所に行ってますからあまり変わらないんで」
「そうだったな、すまん。向こうだと寮生活になるのは平気なのか?」
「なんとかなるかなぁ? って思ってます」
「そうか、一学期が終わるまでには具体的な話が出ると思うが、もしまた一緒になるようだったらよろしくな」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
◆◇◆◇
放課後、家に戻ると杏さんのポルシェが駐車場に停まって居た。
「杏さんただいまぁ&お帰りなさい」
「ただいま。心愛ちゃんのほうは何か問題とか無かった?」
杏さんの言葉に隠し事はしない方がいいよね? と思って天津の事を話した。
「そうだったの、天津が無事に終わったっていう報告だけはマッケンジー長官から聞いていたけど、やっぱり心愛ちゃんがかかわってたんだね」
「これってバレたらまずい系ですよね」
「そうね、一応冴羽社長には伝えておくけど、他の人たちには今の所内緒にしてた方がよさそうね」
「あの……それと、もう一つあるんですけど」
「今度はなんなのかな?」
「ランキング四位のザ・シーカーさんに会いました」
「え、まじで? あの人は今回のレッドランカー以上の招集にも応じなかったから反体制的な考えの方なのかなって思ってたけど、どんな感じだった?」
「確かに……見た目はヤバかったです。でも私のお父さんの友達らしいです」
「え、そうなの? それって信用できる話なのかな」
「少なくとも私は嘘じゃないと思いました」
「そうなんだ、心愛ちゃん、早速だけど博多ダンジョン協会の方に来てもらってもいいかな? 兄貴たちが今回の協力のお礼を伝えたいらしくって」
「それって絶対お礼だけじゃなくて別な問題が持ち込まれそうなやつですよね」
「うん……そうだね。嫌かな」
「うーん、嫌と言うほどではないけど、大変そうだなって思っただけです」
「冴羽社長も向こうで待ってるから、先に社長と話してから、その後に兄貴たちも合流する流れでお願いね」
「はーい、了解しました」




