第120話 カニすき鍋とグラビティ
家に戻って一眠りした私が目を覚ますと、食堂で希と日向ちゃんが配信動画を見ながら喋っていた。
「先輩、おはようございます。よく眠れましたか?」
「おはよう、って今二十二時過ぎてるじゃない。希も早く家に帰らないと」
「二十三層でいっぱいフルーツ取ってきましたから、先輩に渡してから帰ろうと思ったんですー」
「そうなんだ、ありがとう。明日なにか美味しいデザート作ってあげるね」
「超楽しみにしてますね! でも先輩、私たちに内緒で色々無理しちゃってないですか?」
「そ、そんな事ないよ中間試験の前だから、お勉強も頑張ってるくらいかな? 希と日向ちゃんも試験の準備は大丈夫なの?」
「……き、きっと」
「私は大丈夫だと思います」
「日向ちゃんは自信ありそうだね。希、赤点とかあったらダンジョン探索禁止で、お勉強させるからね」
「ひえぇ、それは勘弁してください」
「赤点取らなきゃいいだけだから。それもだけど、九月から探索者養成に特化した高校が出来る話は聞いてる?」
「はい、学校でも結構話題になってますから」
「私たちって、これからもダンジョン絡みで休まないといけない事とかありそうじゃない? だから転校するのもありかな? って思うんだけどどうだろ」
「私も日向ちゃんも先輩がいる場所が居場所だから、先輩が決めたならそうしたいです」
「そっか、ちょっと聞いてみたんだけどここから通う場合でも、転移の事とか秘密にしてくれるらしいから、行こうと思ってるんだよね」
「編入試験とかあるんですかね? 私試験があったら落とされるかも……」
「多分大丈夫だよ、主に探索者としての実力重視だろうし」
「それなら、ちょっとだけ安心です。それじゃぁ私は帰りますね」
「おやすみ希」
「希ちゃん、おやすみなさーい」
「まった明日ねー」
希が帰っていくと、日向ちゃんに話しかけた。
「日向ちゃんは今日はまだ眠くない? 今からお料理するけど」
「はい! 大丈夫です。早速準備しますね」
今日の下関で手に入れた文章の内容が『不思議なペットボトルは、一度空にして別の液体を入れると応用が出来る』だったし、一度中身を空にして牛乳を容れたいから今日はお出汁をたくさん使うお料理にしよう。
金沢ダンジョンから持って帰った取っておきの食材、ダンジョン松葉ガニが有るから……
これは迷わずカニすき鍋だよね! お父さんの作るカニすき鍋は凄い絶品だったんだよ‼
負けないレベルで仕上げたいなぁ。
まずは、お野菜から準備しよう。
白菜、エノキ、椎茸、白ネギ、春菊、丸もち、葛切り、焼き豆腐これだけでOK
白菜は一枚ずつ剥がして丁寧に洗ってからたっぷりのお湯で湯掻く、白い部分を縦に折って、割れないぐらいで丁度いいよ。
春菊もさっと湯掻く。
こっちはしなっとなれば十分だから五秒くらいでいいよ。
巻きずしを巻く時に使う、巻き簾を用意して、白菜を互い違いに並べ、真ん中に春菊を置いてしっかりと巻く。
太さは直径で三センチメートル位が丁度いいよ。
これを三センチメートルの幅で切る。
巻き簾が十八センチメートル幅のなら六等分だね。
中心部分の春菊の緑がとっても鮮やかできれいだよ。
エノキは根元の部分を切り、適度にほぐす。
椎茸は見た目が大事だから、石づきを取って切り込みを入れる。
白ネギは、三センチメートル幅の筒切りにして、表面をバーナーで炙る。
葛切りは、バットに並べてお湯を注ぎ、芯が残る程度に柔らかくする。
丸餅は小ぶりなものを選んで焼き目が付く程度に焼いておく。
膨らまなくてもOKだよ。
焼き豆腐は一丁を八等分に切る。
次はカニさんだよ。
足を広げると一メートルはある大きなサイズの松葉ガニ、足も太いし日本海の最高級品をさらに厳選した物を、もっと太らせた感じだね!
足を全部切り離して表面の色の濃い方の殻をそぎ取る。
爪の部分は調理バサミでくるりと切り取って身をむき出しにする。
これだけ太い足だと、先の方まで身がたっぷりだね!
胴体の方も真横に二等分して身を取り出し易くしておくよ。
剥がした甲羅の中には、びっしりと味噌が詰まっていて、これも濃厚ないい味が出そうだね!
たっぷりと沸かしたお湯の中に、取手の付いたざるにカニを並べて静かに浸ける。
鮮やかな色が出たらOK! 火を通し過ぎたら駄目だよ!
デリシャスポーション十六杯をお鍋に入れて、薄口醤油と白醤油を一杯づつ、お酒を二杯、味醂を一杯入れたお出しに、カニを入れる。
カニから美味しいお出しが出てきたら、別のお鍋にお野菜を奇麗に盛り付け、カニも見栄え良くのせ、お出汁はシノワで濾しながら注ぐ。
カニ味噌も一度温め、アルコールを飛ばした日本酒で少し伸ばして、甲羅に入れお鍋の中で温める。
一煮立ちさせたら出来上がり!
お野菜やカニの身をそのお味噌に付けて食べるともう最高に美味しいよ!!!
日向ちゃん用の昆布出汁バージョンも用意して、さぁ実食!
「ホアァ……言葉が出ない程の美味しさだよ。絶対今鏡見たら目が垂れ下がっちゃってるよね。幸せだなぁ」
「先輩、凄いです。まるでお鍋の中に絵が描いてあるように綺麗だし、もう芸術品の域ですー。それにカニってこんなに美味しいんですね。お出汁をたっぷり吸いこんだお野菜も最高ですー」
食べ終わってテレビを点けるとケニアのスタンピード関連のニュースをやっていた。
無事に攻略されて溢れだした魔物の掃討戦に移っているけど、国外にまで広がっていった魔物の根絶は難しいだろうという内容だった。
今回、ケニアでの被害は十五以上の集落が壊滅して、死者が二万人近くになったとの報道を見てちょっと悲しくなっちゃったな。
ダンジョンに誰かの意思が反映してるなら許せないよこんなの……
「先輩、これから先って世界中で魔物が溢れてきたりするんですか?」
「わかんないけど、その可能性は高いよね。私たちに出来る事は何が起こったとしても周りの人達を守って上げれる強さを身につける事だね」
「私も戦闘メイドとして先輩のお手伝いができるように頑張ります!」
「戦闘メイドは譲れないんだね……」
「それはもう!」
「明日は、美味しいデザートを作るから期待しててね」
「うわー超楽しみです」
日向ちゃんが部屋に戻ると空になったペットボトルをよくそそぎ、ミルクをいっぱいに容れた。
恐らく丸一日は置かないとデリシャスポーションの効果は出ないかな?
ペットボトルを冷蔵庫に仕舞い込むと先程から広がっているスキル獲得画面に目を向ける。
【重力魔法】
【スキル消去】
【テレパシー】
【大結界】
大結界ってもしかして広範囲に結界を張れるのかな?
金沢全域とか包み込めるなら、近隣の町の安全が確保できるのかも。
でも、恐らく結界の出入りに私の許可とか必要になりそうだから後回しかな……
だとすると今日取得するのは前から気になってた重力魔法だよね。
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【重力魔法】
重力神『アメノミナカヌシ』の加護を得て、重力を支配する力を得る。
ランク×十倍の重力負荷を掛けることが出来る。
グラビティⅠ LV1
グラビティⅡ LV20
グラビティⅢ LV40
グラビティⅣ LV60
グラビティⅤ LV80
グラビティⅥ LV100
グラビティⅦ LV120
グラビティⅧ LV140
グラビティⅨ LV160
グラビティⅩ LV180
方向指定 LV50
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わぁこれは絶対強力だよ、方向指定が出来るって事はもしかして自由に空を飛べたりできるのかな? 楽しみが広がるよね。




