第119話 ロマノフスキーへの尋問
『アンリ、ありがとうな』
『ああ、気にするな俺の責任だ。お前の娘は必ずこの世界を救う存在になる。俺はその為にサポートをし続けるさ』
『こっちじゃレジオンのくそったれな訓練が無いから住み心地は悪くもないんだけどな』
『お前は料理さえできれば、何処でも満足できるんだな……』
『心愛と翔子に会えない事以外はな、せめてお前が料理できれば心愛を巻き込むことも無かったんだがな』
『無理を言うな、トーストの焼き方も解らないぜ』
『おっと他の連中が起きだしてきやがった。またな』
『五郎、必ずそこに辿り着いてやる。お前の娘と共にな』
◆◇◆◇
『杏さん、ダンジョンコアの鑑定してきました』
『早かったわね。それでどうだったの?』
『結構、凄い事実が判明しました。鑑定結果をそのまま伝えますね』
私は先ほど鑑定した結果を個人の見解を含める事なくそのまま伝えた。
『心愛ちゃん。これは大変な事になりそうだね。すぐにマッケンジー長官たちと協議してどう対処するのか決めなきゃね。鑑定ありがとう』
『協議の結果がどうなったのか教えてくださいね。それでは連絡待ってます』
杏さんとの通話を終えると流石に眠気マックスだったので一眠りした。
◆◇◆◇
「なんだって? ロマノフスキー大尉がダンジョンマスターになっているだと?」
杏は、心愛との通話を終えた後すぐにマッケンジー長官、冴羽社長、澤田理事、轟常務理事、ロジャー、グレッグ、君川一尉、冬月二尉の八名に連絡を取り、ケニアダンジョン協会の会議室に集まってもらった。
「美穂、私たちってやっぱり、こんな時には雑魚扱いなんだね」
「しょうがないよ樹里。早く日本に戻って雑魚扱いされないくらいに強くなろうね」
「だよね」
九名で会議室に集まって協議を始めるが本人に確認する以外にこの話が進展する事もないので、ロマノフスキー本人を召喚する事になる。
冴羽、澤田、轟、大島の四人に関してはロマノフスキーの行動に対して意見が出来る立場ではないとして発言を控える事にした。
「でもこの人数でロマノフスキーを呼び出しての尋問じゃ、犯罪者扱いにしか思わないだろうな。やつがダンジョンマスターになっていたとしても、現時点では悪用しているわけじゃないし、ヘソを曲げられるのが一番厄介だ。面談はマッケンジー長官一人で行うほうがいいだろう」
ロジャーの発言に対して君川一尉が疑問を呈した。
「危険が無いと言い切れますか?」
「もちろん俺とグレッグが隣の部屋で待機しておくさ」
「ロマノフスキーがそれに気付かないとも思えませんが」
「私からいいですか?」
美里が発言を求める。
「冬月二尉、なにかいい案でもあるのか?」
「はい、ロマノフスキー大尉の召喚の際にソフィア中尉も一緒に呼び出すべきかと」
「何か理由があるのか?」
「あの二人は特別な関係にあると思いますのでソフィアの意見も聞けた方が良いかと」
「なぜそう思った」
「それは、突入の際女性メンバーだけ六名でパーティーを組んだんですが、女性六名だと雑談もあるので……」
「なるほどな」
「私がソフィアと話し、ロジャーとグレッグとマッケンジー長官がロマノフスキーと話すほうが自然に受け入れるのではないでしょうか? 少なくとも隣の部屋で隠れているよりは怪しくないと思います」
「そうだな、奴もダンジョンマスターになっている事を俺たちが気づいてるとは思ってないだろうし、冬月二尉の案で面談をしよう」
マッケンジー長官によりロマノフスキーとソフィアが召喚された。
◆◇◆◇
「ソフィア、ロマノフスキーから何か聞いてる?」
「ん? なんの事を言ってるの」
「その反応だと何も聞いてないようね。だったらいいわ。ソフィアはロマノフスキーと付き合ってるんだよね?」
「んー……厳密にはまだ男女の関係ではないわよ。ずっと言い寄られてはいるけどね」
「そうなんだ……でも、まだって事は脈無しではないんでしょ?」
「そうね、いっぱい貢いでくれるし嫌いじゃないわよ」
「なんだかその言い方だとロマノフスキー大尉が可哀想な気もするけど……」
「そんな事無いわよ、他に男がいるわけでもないんだし、彼は性格をこじらせてる部分があるから男友達もいないし私以外に仲のいい人っていないから、放っておけないしね」
「ソフィア……もしかして職務としてロマノフスキーのそばにいる?」
「それは国の紐付きって事かな?」
「ええ……」
「半分正解、残り半分は自発的にそばにいるから大丈夫よ」
「そっか、ロシアはロマノフスキーを制御できるの?」
「その辺りは国家の問題だから答えられないわ」
「わかったわ。ソフィアが何か聞きたい事とか無い?」
「あるわよ沢山! あなたたち日本人四人とロジャーとグレッグ、明らかに魔法の威力がおかしかったわよね? あれはなぜ? 特に准尉の二人、使える魔法の種類も多いし……それにグレッグは最初の突入の時、魔法を使えなかったはずよ」
「それは……ロシアも把握してるでしょ? 心愛ちゃんの事」
「報告は見てるわ。彼女の協力があったって事? 彼女本人が凄いだけじゃなくて他人を強くする事が出来るの?」
「ロマノフスキーの事とか聞いちゃったから特別に答えるわね。答えはYESだよ」
「それは私でもそうしてもらえるの?」
「国家間の問題とかあるから返事は出来ないけど、心愛ちゃんと仲良くなれればチャンスはあるんじゃない?」
「ふーん……美里、最初の話に戻るけどロマノフスキーに何かの嫌疑がかかってるの?」
「うん、実はね。こちらが手に入れた情報としてダンジョンコアの破壊者はダンジョンマスターとして自分のレベルと同等のダンジョンを生み出す事が出来るという事がわかったの」
「えっ? あのやろー私にも隠すとか許せないわ、後でお仕置きしてやろう」
「ちょっ、ソフィアお仕置きって危険な奴? さっき男女の関係じゃないって言わなかったっけ」
「ご想像にお任せするわ」
◆◇◆◇
「ロマノフスキー大尉、我々は貴官がダンジョンマスターとなった事実を把握している事を最初に伝える」
マッケンジー長官がそう伝えるとロマノフスキーは、そう焦った様子もなく答えた。
「なんだ、知られていたのか。それで、何を言いたい?」
「ダンジョンマスターになって何をする気だ?」
「別に、今の所はなにもしないさ。アメリカに咎められる様な内容じゃないだろ? それよりなぜ、アメリカはその事実を知ったんだ?」
「それはダンジョンコアを鑑定したからだ」
「俺がコアを破壊するまでにそんな時間は無かったと思うが」
「誰もガリッサのコアを鑑定したとは言ってないだろ」
「ほう、他のダンジョンか。誰が行ったんだ? 日本のミラクルガールか?」
「ああ、そうだ。彼女を怒らせると怖いぞ。少なくとも今のロマノフスキーでも全く相手にならないだろう」
「なんだと? 俺を甘く見てないか?」
「さぁな、お前が得た能力を悪用すれば、俺たちと心愛が必ず立ちはだかる」
「ふん、今の所そんな気もないが、お前らが俺を勝手にヒールに仕立て上げる事でもあればわからねぇな。ロシアのメンバーはこのまま帰国させてもらう。次に会う時は戦いになるかもな」
「いつまでも、お前に負けてられねーさ」
「そう思うのは勝手だ。精々俺のために頑張って経験値稼ぎでもしてな」
「俺のため? どういことだ」
「さぁな」
ロマノフスキーが退出し、その日のうちにロシアのメンバーが帰国した。




