第110話 それぞれの対応策
「藤堂首相、金沢のダンジョンスタンピードによる現地の封鎖はいつまで続くのですか」
「当然、現地の安全が保障されるまでは続くことになります」
「今後国内にある十二か所のダンジョンは順次同じ状況になるということでしょうか?」
「それは現時点でははっきりとした返答は出来ませんが、すでに攻略された下関ではスタンピードが起こっていない事から、ダンジョンの攻略こそが我が国を守るために最も必要な事ではないかと予想されます」
「しかしですね、金沢での今回のスタンピード誘発は特務隊による最終層の攻略の失敗によるものではないか? という有識者の意見も出ております。この責任は誰が負うのですか?」
「今回のスタンピードは誰にも予見は出来なかった。それに対して責任問題云々と言うのは、言いがかりに近い意見と判断せざるを得ない。あなたがたが政権を担当していたら今回の事態にならなかったと言うのであれば、その根拠を示しなさい。私はこの国を守っていくために、あらゆる意見を聞き入れ対応策を協議する。野党も日本を、世界をダンジョンの脅威から守るために協力をお願いします」
金沢のスタンピードを受け臨時で招集された国会では、野党の容赦ない意見に対して四苦八苦の対応を迫られていた。
国内が魔物の脅威に晒されている以上、特務隊や自衛隊の国外への派遣を許可する決定は到底できない。
「今後、この国を守っていくためには、国民が脅威から身を守るための力を身につける必要があります。現在の自衛隊組織による防衛だけでは到底追いつかない。そのためには魔物に対して対抗できるだけの実力者を養成する機関の創設をダンジョン協会との協力のもとに可及的速やかに行い対応する所存です」
「それは国民の血税を投入して行われるのでしょうか?」
「魔物から産出される魔石によるエネルギー政策は、今後化石燃料や、核燃料に置き換わると予想されます。いうなれば先行投資でもあります。ほぼ百パーセントを輸入に頼っていたエネルギー政策が国内で調達可能となれば決して高くはありません。未来のためへの投資に、与野党一丸となった協力体制を築き上げることに協力をお願いします」
◆◇◆◇
「ロジャー、グレッグ。自衛隊の上位ランカーたちが金沢でのリミットブレイクの取得を滞りなく行えたので、早急にステイツに戻りケニアの対応に向かう」
「ラジャー。ボス、ケニアはどんな状況なんだ?」
「日本や中国と違って人口密度は極端に低いが、現れる魔物のベースとなる個体が強力なものが多いという話だな。サバンナのライオンや象、鰐がベースになった個体が多くて、非常に強力だという話だ」
「まぁ、魔物化していないライオンや鰐なら今の俺たちにとって強敵とは言えないから、ビビらずに対処すれば問題はないはずだ。俺たちはすでにリミットブレイクは取得済みだからな」
ロジャーとグレッグの部隊は金沢最終層で期限なしのリミットブレイクを獲得して、横田からの特別機でアメリカへと帰還した。
WDAの呼びかけに応じた世界各国のレッドランカーは、日本と中国からの参加は見送られたが、それでも総勢六千名の人員が、順次ケニアに集結する事になる。
この呼びかけに応じない決定をした場合、自国でスタンピードが発生した時にWDAからの協力が得られない可能性が高いため、各国も協力的であった。
実際に参加するレッドランカーたちも、【パーティー作成】【エスケープ】【リミットブレイク】といった三種類のスキルをWDAからスキルオーブの形で供与されると発表があったので、積極的な参加が行われた。
全体的な作戦指揮は、金沢の攻略を経験したアメリカのマッケンジー長官が行うことになる。
日本側はダンジョン協会から澤田と轟が向かう事になり、スキルオーブの大量販売を行うD-CANの冴羽と大島杏も同行した。
移動には、政府から特別機を用意された。
国際的な集まりの中では冴羽と大島の言語理解スキルも極めて有用だ。
それに先立ち、中国のトップチームに対しては心愛が用意したスキルオーブが渡される。
「劉さん、二千人分のリミットブレイクと、突入チーム用のエスケープとパーティ作成スキルのスキルオーブです。突入前には碑文の解読をしますから、必ず連絡をくださいね」
「了解です、心愛ちゃん。協力を感謝します。早急に終わらせて食事にご招待します」
「はい、ご無事を祈ってます」
他の三人もすごい笑顔で手を振って劉さんの後に続いた。
去り際に諸葛さんが私にメモを渡してきた。
メモには諸葛さんの連絡先と手紙が記されており、天津のスタンピード阻止に問題が生じた場合の協力要請だった。
『心愛ちゃん。私は劉大尉が思うほど天津の攻略がスムーズに行く可能性は低いと思っています。他の三人にも秘密にしますので心愛ちゃんへの連絡先を教えていただきますか?』
これってナンパ?
急を要する場合も考えられるし、しょうがないかな? 信用できそうな感じだったし……ラインでの連絡先を教えておいた。
でも、急を要する場合かぁ……天津には昔、家族旅行で行ったことあるんだよね。
天津飯も天津甘栗も天津名物では無い事にびっくりした思い出があるなぁ。
一応、日本からの観光客向けに同じ名前の商品はあるんだけど、決して天津の名物ではないんだよ。
昔は港町の天津に日本向けの輸出品が集まっていて、甘栗の原料も天津港から日本に送られていたから、天津甘栗っていう名前になったんだって。
それはいいけど天津までは博多から直線距離で千三百キロメートルくらいか、一度ソウル辺りを中継点にすればテレポで十分にいけるかな。
ビザとか無いから見つかったらやばいけど……




