第9話 魔法修行、二日目
誤字報告、ありがとうございます! 感謝です!
昨日はお風呂に入らせてもらって、リラックスして。
そうして今日は、その魔法修行の続き。
昨日みたいに水を使った魔法の練習をするのかと思ったら……、今日は泥、だった。
「水と土を混ぜて、泥を作るよ。あ、先に砂からやった方が分かりやすいかな?」
「ど、泥? 砂?」
な、何をするんだろう?
昨日は水でずぶ濡れになって、今日は泥まみれ……?
ふ、服とか、汚れたら……、えっと、お洗濯……?
どうやるんだろう……?
伯爵家にいるときは、お洗濯とかは使用人にお任せだったし。
あ、アンディ兄様が魔法を使って一瞬できれいにしてくれちゃうのかな?
うん、多分。
アンディ兄様に不可能はない。きっと、多分。
とすると……汚れても、いい、かな?
うん、気にせずがんばろう!
わたしが考えている間に、兄様は昨日巨大化させて、わたしがバスタブとしてお湯に浸からせてもらった容器を、今度はテーブルの上に乗せられる程度の大きさに変えた。
うーん、魔法って便利。
そこにアンディ兄様は砂を出現させた。
ホント魔法って便利。
「さて、ニーナ」
「はい、アンディ兄様」
「ここに今、砂を出したけど」
「はい」
「水を入れて混ぜたら砂はどうなる?」
どうなるって……。
砂と水を容器の中に入れて混ぜる? 混ざるの?
えーと、たとえば井戸水をくみ上げるときに砂が混じったりすることはある……のかな? あるよね? でも、水に砂が溶けて混ざることはない……と思うんだけど。
砂は砂、水は水のままで、ちょっとだけ濁ったっぽい水……とか。
「うん。正解。じゃあ、水と土だったら? 混ざる? 混ざらない?」
「水と土? 混ざって泥になるんじゃないですか?」
ぬかるみ……、えっと、雨や雪解け水によって地面がどろどろになっている状態だよね、泥って。
「またまた正解! じゃあ、砂と土の違いって何? どうして砂は水に混ざらないのに、土は水と混じって泥になるの?」
「え⁉」
そ、そ、そ、そ、そんなこと、いきなり聞かれても!
えーっと?
砂はサラサラしていて、土に水を混ぜるとどろどろするから……とか?
あああ、言葉で説明するのって、むずかしい!
イメージは、あるんだけどな……。
もぞもぞ言っていたら、アンディ兄様が容器の中の砂を消して、今度は土を出した。そして、更に水を追加する。
「手でいいから、この水と土を混ぜてみて」
「は、はいいいいい!」
恐る恐る手を入れる。
う、うわあ……。
べたべたで、ぐちゃぐちゃで、気持ち悪いのかと思ったけど……あら?
意外にも、泥の感触は……なんていうのか、滑らかで気持ちがいい。
ああ、そういえば、美容関係で、泥パックなんていうのもあるらしい。
わたしはしたことないけど、リチャード様のお母様、ジャクソン夫人がその泥パックというのを試したとか何とか、お母様とお話していたような……。
確か、顔に美容液入りの泥? みたいなのを塗って、時間をおいてから、洗顔して、それで化粧水とか塗ったら、お肌がしっとりしたとか何とか?
わたしのお母様は真剣に聞いていたけど、わたしはそんなものなのねーって、聞き流していた。
そんなことを思い出しながら、ペタペタ触っていたら、形が作れるようになってきた。
えーと、水分が抜けて、粘土みたいになってきた……感じ?
こねこねと、練ることができるようになってきた。
えーと……なんか、楽しい。
陶芸とかってこういう感じなのかしら……。
「あ、好きに形を作ってみていいよ」
好きにと言われても……、とりあえず、丸めてみる。真ん丸……ボールみたいに。
しばらく無心に捏ねていたら、なんていうのか、練り固まって、キレイな球体になってきた。
わあ……。
「じゃあ、今のと同じのを、今度はキラキラモード発動でやってみよう」
アンディ兄様がまた別の土と水を用意してくれた。
「えっと、土と水に、キラキラを混ぜて、球体を作る……んですか?」
「そう。最終的には土と水なしで、キラキラだけで球体とかいろんな形を作るってところまでやってみたいと思うんだけど、最初は、実際に手で触れるものがあったほうが分かりやすいでしょ」
な、なるほど……。
わたしはキラキラモードを発動して、土と水とキラキラを混ぜて球体を作っていった。
ここまでは、結構簡単だった。
実際に、泥があるからね。
でも泥なしで、金色のキラキラだけで、球体を作るのはちょっと時間がかかった。
何回も繰り返してみて、一気に、泥なしで作るのがむずかしかったから、少しずつ泥の比率を減らしていって、少しずつ金色を増やしていって……。
で、金色のキラキラだけで球体を作れるようになるのに……十日もかかってしまった。
ううう……。試験に間に合うのかな……。
「魔法における物体構成……というか、錬成に近いのかなあ? 無から有を生み出す……とは違って、世界に広まっている魔法物質……、金色のキラキラを、自分の魔法で自由自在に形作るっていうことの、基礎になるんだよ」
「へえ……」
アンディ兄様は、実際にいろいろな形のものを魔法で作ってくれた。
葉っぱ、花、ウサギのぬいぐるみ。剣や盾なんかも。
何もないところから……ではなくて、空気中にある金色のキラキラを集めて、まとめて、捏ねて、作る……んだけど、それを一瞬でやっているから、何もないところからいきなり作った物が出現するみたいに見える。
「金色のキラキラを見ることができて、それを自在に扱えるようになれば。どんなものでも作ることができる。土や水と金色を混ぜれば、堅牢なお城とか、巨大なものさえも作れるようになるよ」
ああ、そうか。
巨大なもの。アドネア王国からブライトウェル魔法王国に来るときに、アンディ兄様が渡してくれた、金の橋。あれほどにすごいものだって、きっとできちゃうんだ!
「まずは、基礎から。金色のキラキラで球体が作れるようになったら、今度は葉っぱとか、比較的簡単な形を作っていこう」
「はい!」
まずは、土や水なしで、金色のキラキラだけで、球体を作れるようになること。
それが出来たら次は葉っぱのような簡単な形のものを作ってみる。
それが、現時点でのわたしの目標。
よしっ! がんばるぞー!