第44話 身支度は、勇気
夕食を食べた後、自室に戻ってちょっと仮眠。夜中に出かけるからね。
で……、ベッドで横になって、ふっと目が覚めた時には、空に月が煌々と照っていた。
残念ながら、満月ではないけれど。満月は……後、二、三日後くらいかな……。
「キレイねえ……」
ついうっかりと……っていうか、ぼんやりと見てしまうけど。月がキレイと感動している暇はない。
わたしも、キレイにしないとね!
これからリアム様に告げる、そのための勇気を出せるような服を!
ベッドに横になっていたために、皺になってしまった服なんかじゃダメ。
勇気を出すためと、それから夜のお出かけだから、明るい感じのかわいい服にしたい。
かわいい服……。うーん。どれがいいかな……。あー、ミュリエルとお買い物に行ったとき、ピンクとかも似合うんじゃないかなって言われて、買ってみたワンピースがあったっけ……。
うーん、ピンク……。
最近はそれなりにかわいい服にも慣れてはきたけど、元々、地味な服ばかり着てきたわたしには、ちょっと勇気のいる色なのよね、ピンクって……。
いかにも女の子っていうか、かわいさを前面に出し過ぎているようで、恥ずかしいというか……。
そんなことを言ったらミュリエルは「大丈夫! ピンクって言ったって、いろんな色があるんだから! ピンク初心者は、まず薄めの色から! ほら、これなんて、白色とほとんど変わらない! フリルとか、レースとかも控えめなら、かわいいっていうよりキレイ目だから、だいじょーぶ!」って、ベビーピンク色のワンピースをわたしに押し付けてきて……。
わたし、ミュリエルの勢いに負けて、そのまま、お買い上げしてしまったのよね……。
一度も着ることなく、クローゼットに仕舞いっぱなしで……。でも、クローゼットにこんなにもかわいいワンピースがあるってことに、ちょっとうきうきした気分になっていて……。
今日、これから。
着てみるのはどうかな?
勝負服ってわけじゃないけど……。
でも、せっかくだし……。
よし!
もそもそと、着替えてみた。
そして、鏡の前に立って自分の全身をくまなく見て見た。
う……。
かわいいけど、やっぱり気恥しい……。
どうしよう……。
あ、そうだ、思い付いた。
カーディガンかボレロを羽織ればいいか! うん、そうしよう! 夜の海とか、風が強いかもしれないし、防寒にもなる……。あ、防寒とすると、ボレロとかよりも、ショールのほうがいいかも……。
そ、それと、髪! 髪の毛も‼ 整えなくっちゃ‼
バタバタと身支度をしていたら、窓から「コンコン」という音がした。
見れば、窓の外にリアム様が立っていた!
三階だから、立つのではなく、飛んでいたのかも。
慌てて、窓を開ける。
「やあ、お待たせしたかな?」
「リアム様!」
今はアンディ兄様の姿ではなく、元のリアム様の姿に戻っていた。
どちらの姿を取ってもらっても、もう構わないんだけど、やっぱりこれから告げることを考えると、リアム様のお姿のほうがいい。
「大丈夫です。準備はばっちりです!」
と言いつつショールを羽織って、ブローチでショールが落ちないように留めた。
「うん、じゃあ行こうか」
窓の外から差し出された手。そこにわたしの手を重ねる。
「はい、お願いします」
ふわっと、わたしの体が浮いて、窓から外に出る。
そうして、一緒に金色のキラキラを集めて、橋を作る。
海側まで一直線。
夜の空を飛んでいく。
空には月。
もうすぐ満月の、丸に近い明るい月。
それと星。
わたしたちの、この先が、光に照らされて、そして輝くの。
そのために、わたし、がんばる。がんばって、告げる。
ねえ、リアム様。
わたしと一緒に、生きてください……。
次回、最終回です




