表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/46

第43話 伝えよう

本日二つ目の投稿です。

ブライトウェル魔法王国に帰りついてから、テレンス様は、改めて同級の皆さんと治療院の開業のためにあちこち奔走し始めた。

 わたしも何回かだけ、ちょっとお手伝いに行ったけど。

 そのときの、テレンス様はすごく楽しそうだった。

 吹っ切れた顔で、皆さんと一緒に笑っていた。

 よかった。

 ジャクソン伯爵夫妻には申し訳ないけれど、親の言いなりで爵位を継いでいたら。

 この笑顔はなかったんじゃないかな……。

 リアム様も、テレンス様に出資したのもあるし、やっぱり治癒魔法を使えるようになりたいと、かなりの頻度で治療院のお手伝いに行ったりしていた。

 テレンス様の治療院に行くときには、アンディ兄様の姿になっている。

 そうしたら「あれ、今日はアンディなのか」ってジェームスやモルダーたちから言われていた。

 ミュリエルからは「目の保養になるから、たまにはリアムになってよ」なんて、言われたり。

 それで、このところ、日替わりでアンディ兄様の姿になったり、リアム様の姿に戻ったりしているのよね。

 ……アンディ兄様が出来なかった学校生活。それを、リアム様が代わりに行っているだけじゃなくて……、リアム様自身も、ご自分として、みんなと楽しくすごせているのなら、いいな。

 そのうち、みんなには、本当のことを話せるといいとは思うんだけど。

 どうかな?

 Sクラスのみんななら、リアム様が、本当はアンディ兄様じゃなくて、本物のリアム・リードーマだと言ったとしても、みんな受け入れてくれるような気がするんだけど。

 でも、いくら仲が良くても、不老不死なんて簡単に言い出せない……かな。

 疑うわけじゃないけど、もしも、万が一何かあったら……と思うと、このままでもいいのかなって思ったり。

 うーん、難しいね。

 わたしが勝手に決められることでもないし。

 正直にすべてを相手に告げるってことが正解だとは限らないし、言っても伝わらないときだってある。

 それに言う言わないは重要事項じゃなくて……、要は言っても言わなくても、リアム様がしあわせならば、それでいいと思う。

 リアム様のしあわせって……何かな。

 アンディ兄様はわたしとテレンス様がしあわせになるようにって、リアム様に頼んだ。

 アンディ兄様のことだから、きっとリアム様にもしあわせになってもらいたいって、思ってるよ。

 アンディ兄様の願いっていうだけじゃなくて、わたしも願っているの。

 しあわせになろうよ。

 だから……。

 一歩を、踏み出す。

 まずは、ハイマン先生にお願いして、二つのものを一つにまとめて、まとめたものを二等分するような、そんな魔法はないか尋ねてみた。

 抽象的すぎて、何をどうすればいいのかわからんが……と言いつつ、ハイマン先生は、ものすごい大量の資料をわたしに持ってきてくれた。

 わあ……。

 これを読んで理解するだけでも二年か三年はかかりそう。

 だけど、やってみよう。

 そうして、書物の研究もするけど。

 リアム様にわたしの気持ちを伝えないとね。

 しあわせに、なりましょう……って。

 出来れば、Sクラスのみんながいるこの学園でではなく。どこか別の場所で、二人きりでお話させてもらいたい。

 みんなの前で、公開プロポーズはちょっと恥ずかしいから。

 なんて……ね。

 さて、リアム様は今どこにいるかな……。

 とりあえず、Sクラスのみんなはたいてい一階の玄関ホールで集まっていることが多いから、わたしも玄関ホールに向かう。階段を下りて、一階に着いた時、ちょうど、玄関扉が開いて、アンディ兄様の姿をしたリアム様が帰ってきた。

「おかえりなさい、リアム様」

 あ、この姿の時はアンディ兄様って言うべきだったか。

 でも、リアム様は気にせず「ただいま」と言ってくれた。

「あの、わたし、リアム様にお話しというか、相談したいことが……あるんです」

「ああ、馬車の中で言っていたやつだね。面談室とかどこか借りる?」

 わたしは首を横に振った。

「ううん、ここではなくて……別のどこか、二人きりになれる場所がいいです。長い時間が、かかるかもしれないし……。できれば秘密っていうか、内密に……」

 リアム様はちょっと不思議そうにわたしを見たけど。

「んー、じゃあ、夜中に。みんなが寝静まったころ。金色のキラキラの橋をかけて、どこか行こうか。例えば……ほら、魔法学校の試験を受ける前に泊まった、あの丸太小屋のあたりとかさ。あー、それとも海側とかに行く? 夜の海は静かで、誰もいないだろうし、晴れていれば星も見れてキレイだよ」

「海! わあ、行きたいです!」

「じゃあ、夕ご飯を食べたら、早めに仮眠していて。夜中に誘いに行くから」

「はいっ!」


次の次、45話で最終回です。

あとちょっとー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ