第31話 今後のこと
本日二つ目の投稿です
あれ? わたし、そんなにおかしいこと言ったかな?
だってリアム様、くっきりとした二重、鼻筋の通った彫りの深い整った顔立ちをしているし。ぱっと見、かっこいいと思う……って、あああああ! そうじゃないわ! いえ、リアム様は客観的に見てかっこいいと思うけど!
わ、わたし、アンディ兄様に接するのと同じように、リアム様に接してしまった!
うわあああああ! 問題はそれよ!
リアム様は今までアンディ兄様としてわたしの側にいてくれたけど、でも、実の兄ではないのに!
わ、わたし、なんていう気安い態度を取ってしまったの!
そ、それに……今更ながらに思えば!
わたし、兄と思い込んでたとはいえ、血のつながらない男性と……ひと月も、丸太小屋で一緒に暮らしてしまっていたのよ!
衝立はあったけど、個別の部屋なんかない場所で。
しかも、お湯を使わせてもらった後、濡れた髪を乾かしてもらったりまで……。
うわああああああ!
わたし、これでも一応貴族の令嬢なのに!
ど、どどどどどどどうしよう!
今更ながら……顔を赤らめていいのか、それとも青ざめるべきなのか。
わ、わからないいいいいいいい!
と、とにかく、わたし、固まったままのリアム様に何か言わないと……!
「あ、あの、リアム様。ごめんなさい! わたし、リアム様のこと、アンディ兄様と同一視して……た、わけじゃないけど、その……あの、なんて言いますか、兄的な感じに思って、気安い態度で……えっと、その……」
アンディ兄様のふりをして、姿も変えて、側にいてくれたからって、気安くしてしまうのは失礼かもしれない。
だって、今、リアム様は、元の姿に戻っているし。
それでもなんとなく雰囲気がアンディ兄様っぽいから、どうにもこうにも安心して、頼ってしまってもいいような感じがして……。
なんて、言い訳みたいだけど。というか、何を言っても失礼に当たるようなって言うか、墓穴を掘っているような気が……と、あわあわしていたら。
リアム様はようやく、「あはは……」と笑ってくれた。
「えっと、頼ってくれるのも、気安く接してくれるのも、嬉しいからそのままでいいよ」
「い、いいんですか⁉」
「うん。もちろん」
「なんていうか、ボクも……えっとその、アンディのフリして、ずっとニーナの兄として接していたから、今更他人行儀な態度を取られると……違和感というか、さみしいというか」
そ、そうなのよ!
なんとなく、もう一人の兄! みたいな気になっていて……あわあわ。
……でも、ちょっと照れてしまう。
うん、兄扱いだけど、リアム様は、兄ではない。気安くしてしまうかもしれないけど……最低限の礼儀というか、抱き着いたり、手を繋いだりっていうのは……ちょっとダメかもって思ったり。できなくなるのはさみしいって思ったり。
わたわたしていたら、テレンス様が、わたしたちの様子を見て言った。
「二人とも、仲良しってことでいいんじゃないかな?」
な、仲良しー!
そ、それは、嬉しいというか、ちょっと照れるというか、なんというか。
えーと。
「私たちは……、私とニーナとリアム様は、アンディを通じての交わりというか、共に、皆、アンディと大切に思ってきた仲間と思えば……、単なる知り合い同士というよりも、もう一段、仲良くしてもいいのではないかな……。ああ、すまない、勝手を言ったが、そう思うんだ」
テレンス様が素敵なことを言ってくれて、ちょっと感動。
そう……ね。わたしたちは、仲良し。うん。わたしもそう思うし、そうでありたい。
「じゃあ……改めまして、リアム様、テレンス様。今後とも、どうぞよろしくお願いします。あと、リアム様、恋人役も、どうかお願いします!」
みんなで、握手なんかもしてみて。
それで、今後のことを話し合った。
わたしはなるべく早く、アンディ兄様のお墓参りに行きたいけど。
今日明日で、すぐに……っていうわけにはいかない。
そりゃあ、キラキラの金色の橋を渡ればすぐだけど。
でも、まずは、綿密な、準備。
わたし一人だけじゃなく、テレンス様もご自分の道を歩けるように。
みんなで、ずっと一緒、が、できるのなら最高だけど。それか無理だとしたら、それぞれの道で、それぞれにしあわせになって。時折、みんなで集まって、アンディ兄様を偲んで。
そんなふうにしていきたい。
可能な限り円満に、とは思うんだけど。
どうしても無理なら……。
最終手段を取ることも、辞さない。
そのくらいの思いで。
がんばろう……って思った。