第15話 合格!
本日二つ目の投稿です。
合格発表は試験の次の日。
朝、宿で朝食を取って、発表時刻に間に合うように、魔法学校へ行く。
昨日と同じ、正門を通って、並木道を抜けて、校舎的なお屋敷に辿り着いて。
一階のホールへと向かう。
ざっと見たところ、ホールには発表を待つ人たちが大勢いた。百人……二百人……、いや、もっとかな?
この中から何人が受かるんだろう?
わたしは受かるかな?
いや、受かるだけじゃなくて、成績上位者五名の中に入らないと、授業料や寮費なんかが免除にならない……。
そわそわして、ドキドキしていたら。
実技試験の時の十人いた試験官が、全員、ホールに入ってきた。
発表が始まるんだ……。
わたしは神様に祈るみたいに、両手を胸の前でぎゅっと組んだ。
受かりますように……。
どうか、合格しますように……。
手が震えだした。
そうしたら、アンディ兄様がポンポンと軽く、わたしの頭を撫でてくれた。
試験官のうちの一人、ロングコートを着ている短い青色の髪の人が「これより合格者を発表する」と言った。
「俺はS クラスの担任となるハイマンだ。これから五名の名を呼ぶ。名を呼ばれた者は俺の近くまで来るように」
このハイマン先生という名の三十歳過ぎくらいの男の人が、成績上位者クラスの担任ということなのね……。
どうかこの先生に名前が呼ばれますように……。
「一人目はアンディ・フィッツロイだ」
わたしが祈っていたら、あっさりとアンディ兄様の名前が呼ばれた。
さすが兄様。
アンディ兄様は、小声でわたしの耳元に「じゃ、先に行くから後でね」と言って、青髪の試験官……ええと、ハイマン先生のところへゆっくりと歩いて行った。
「二人目」
どきどき。わたしの名前は呼ばれるかな……。どうかな……。
「ジェームス・クロフトン」
眼鏡をかけた黒髪の男の人が、歩いて行って、アンディ兄様の横に立った。アンディ兄様に向かって「よろしく」とか挨拶をしている。
「三人目はミュリエル・テレス」
今度は女の子だった。頬や鼻のあたりにそばかすが浮いているけど、キレイな顔立ちで、淡い空色の短めの髪。
次は四人目。わたし、呼ばれるかな……。
胃がキューっとしてきた……。
「四人目はモルダー・スチュワート」
……呼ばれなかった。呼ばれたのは緑色の髪の、童顔……というか、かわいい感じの男の子。
あ、ああ……、あと一人。
学費が免除されるのは、あと一人。
わたし……もしかしたら、成績上位五名には入らないかもしれない。
たとえ受かったとしても、学費の支払いをしないといけないかもしれない。
ああ……、どうしよう……。
泣きそうになって下を向いたとき「五人目はニーナ・フィッツロイだ」という声が聞こえてきた。
え、え、え。まさか幻聴……じゃないよね……。
思わず顔を上げて、アンディ兄様を見る。
アンディ兄は「当然」というような顔をしていた。
わたしは慌てて、アンディ兄様のところに走っていく。
受かった!
ギリギリの五位だけど、わたし受かったんだ!
「兄様!」
アンディ兄様の腕にしがみつく。嬉しくて、信じられなくて、泣きそうだ。
「だからニーナも受かるって言っただろ?」
アンディ兄様が笑う。
わたしはもう、胸がいっぱいで、返事もできないで、ただコクコクと頷くだけしかできなかった。
「何だ、君たち、兄妹か?」
黒髪の……えっと、ジェームス・クロフトンが、かけている眼鏡をくいっと押し上げながら言った。
「……うん」
アンディ兄様が答える。だけど、即答ではなく、ちょっと間があった。
わ、わたしが、しがみついているから、反応が遅れたのかな。
あわわ……。
わたし、ちゃんとしないと。
「えっと、わたし、妹です。ニーナと言います」
アンディ兄様にしがみついている手を離して。背筋を伸ばして挨拶をした。
ジェームス・クロフトンにだけじゃなく、他の二人にも。
「以上五名がSクラスになる。お互いの自己紹介は教室に着いてからな」
と、ハイマン先生はわたしたちに言った。
わたしたちも、ハイマン先生にわかりましたと頷いた。
「じゃ、Sクラスの五人は早速だが教室のほうに向かおう。合格の発表の続きはAクラスを担当するオクタヴィア先生から。オクタヴィア先生よろしくお願いします」
オクタヴィア先生と呼ばれた背が低くてぽっちゃりしている中年女性は、柔らかく微笑みながら、頷いた。
「それでは、わたくしの担当するAクラスの皆様、十名のかたのお名前をお呼びしますね……」
そのオクタヴィア先生の声を後ろに聞きながら、わたしたちはハイマン先生の後について、ホールを出て、中庭を抜け、進んでいった。