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第5話:冒険者ギルドで登録しました

マーサ様の洗礼が行われている間、わたしアルマは教会の控え室の椅子に座っていた。

隣には、戦いの師匠であり、主人であるマーサ様のお祖母様が座っている。


「アルマちゃんの固有スキルは魔力を反射するものだったわよね?」


名前をちゃんづけで呼ばれる時は、貴族と使用人としてではなく、師匠と弟子として話す時だ。


「はい。空間上に反射面を認識することで魔法を反射することができます。目に見える結界を張るわけではないので、目立つにくいですね」

「使い方次第でとても強くなれそうね」


お師匠様が楽しそうだ。きっと鍛錬の内容を考えているのだろう。


「マーサの固有スキルのことなのだけど、どう思う?」

わたしは少し考えてから、

「そうですね、、、高い身体能力が得られる類のものではないでしょうか」

「そう思う?」

「はい。王都からアクトゥール領への移動中に、ぬかるみにハマった馬車を身体強化魔法を発動せずに引っ張ってました」


ダフネは孫のマーサに稽古をつけている時のことを思い出した。


「稽古の時も、かなりの力とスピードだったわよね。わたくしの”直感”でも、剣や体術の稽古中は魔法は使ってなかったと思うわ」

「そうなると本当に魔法は使っていないのですね」


お師匠様の”直感”は固有スキルでしたよね。かなりの高確率で直感があたるのよね。


「高い身体能力の他にも、何か不思議な力も感じるのよね。ちゃんと自分の力をわかってないと危ない気もするわ」


その様子は、師が弟子を思うというよりも、純粋に孫娘を心配する祖母のようだ。


「もしかして、洗礼を急いで行ったのはマーサ様を心配したからでしょうか」

わたしの問いに対して、お師匠様は口に人差し指をあてながら柔らかく微笑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「つまり、私はあと2年待たないと冒険者になれないのですか?」


教会からの帰りの馬車の中で、私マーサの気分は非常に落ちこんでいた。

洗礼を終えて、冒険者ギルドで登録したいと伝えたところ、冒険者登録は10歳からと言われてしまったからだ。


「お祖母様、どうしても10歳じゃないと登録できませんか?」


将来何かあった時に、冒険者として不自由なく行動できるようにランクは早めに上げておきたいのだけど。


「冒険者ギルドの規定には登録は10歳からと記載されています」

「そんな、、、」


落ち込む私に、お祖母様はドッキリが成功したような顔でおっしゃった。


「あくまで規定なので、抜け道はあります」

「ほんとですか?」

「えぇ、そもそも10歳というのは、合同洗礼式を受ける年齢です。自分の能力を知らずに自分はなんでもできると過信するおバカを減らすための取り決めです。そのため、洗礼が終わっていることも条件です」


お祖母様がちょっと毒をはいていた。自分の能力を過信する無能はお嫌いですよね。


「なるほど、私はすでに洗礼をすませていますね。問題なく登録できるのですか?」

「残念だけど、10歳になっていないと登録できないことには変わりありません。8歳のマーサ・アクトゥールでは登録ができない、ということです」


私の頭にひらめきがおりてきた。


「その手がありましたわ!マーサ・アクトゥールとして登録しなければいいのですね!」

「その通りです。貴族が偽名を使ってお忍びで冒険者になることもあります。もともと冒険者は敷居が低いので、ギルドも登録者の素性をいちいち調べていません」


アルマは、目の前の親子の会話を、温かい目で見ていた。

冒険者の実戦は稽古と違って危ない時もありますね。ダフネ様が10歳の規定の話を持ち出したのは、本来は適正年齢ではないことを強調して気を引き締めるつもりだったのではないでしょうか。洗礼の証明書も、最初から簡易版で手配していたようですし。


冒険者になれると嬉しくなっていたマーサに、こちらが本題と言わんばかりに、祖母から質問が飛んできた。


「ところで、洗礼の結果はどうでしたか?」


おっと、どう答えるのが正解なのだろう。お祖母様とアルマには元から話すつもりだったけど、私はまずは当たり障りのない魔法から答えることにした。


「魔力量は、紫色でした。魔法属性は水だと思いますが、少し薄い青色だったので、水そのものよりも氷の方が得意かもしれません」

「魔力量が非常に多いですね。魔力量に驕らず、しっかりと扱えるように鍛錬していきましょう。使いこなせなければ意味がありません。属性については、実際に魔法を発動させながら、使いやすい方を伸ばしていきましょう」


アルマがそわそわしながら何か聞きたそうにしていることに気付いた。


「アルマ、どうかしましたか?」

「あの、メイドの私が聞くのも失礼かもしれませんが、固有スキルは、身体能力を高める類ですか?」


グンマなどの単語は伏せて、正直に答えてしまおう。

「効果の半分はそうですね。常時身体能力が向上されます」


「効果の半分?」

とお祖母様が聞いてきた。


「私の固有スキルの能力では、超人のようなものになれます。魔法に似たような事象を起こすこともできそうですけれど、まだ私自身能力を理解できてないので、何ができるかはわかりません。身体能力については、素の身体機能が向上するみたいなので、魔法による身体強化も併用できそうです」


お祖母様の目が光ったような気がした。


「試行錯誤をする必要はありますが、なかなか鍛え甲斐がありそうですね」


ーーーーーーーーーーーーーー


公爵家の馬車のままだと悪目立ちするので、私たちは一度家に帰ってきた。


ギルドへの出発前にお祖母様が変装を手伝ってくれるようだ。


「初めのうちは、私が二人に幻惑魔法をかけて髪や瞳の色を変えてあげますね。ゆくゆくは自分でできるようになりなさい」


少し経つと、私とアルマの変装が終わった。


「お嬢様、ローズ色の髪と瞳もお似合いですね」


私は普段の銀髪ラピスラズリ色の瞳なのだが、今回は暖色系にしてもらった。服装も普段の寒色系よりも暖色系にしていもらい、髪方も普段のストレートではなく、三つ編みにしている。腰にショートソードをさした。


「ありがとう。アルマもかわいいわね」


アルマは、茶髪で茶色の瞳になっている。普段はセットしている髪は下ろされていた。武器は短剣を装備している。


「一目見て私たちだとはわからないわね。いざ、冒険者ギルドに向かいましょう!」


すでにお祖母様の鍛錬を受けている私とアルマはある程度自衛ができると判断され、二人で出発した。


ギルドは街の中央付近にある。せっかくなので街まで走ることにした。鍛錬鍛錬!


「王都にも劣らず、活気がある街ね!」

「そうですね、アテナ様。あの屋台で売られているお団子がおいしそうです」

「言葉遣い!私はあなたの妹でしょう、メル姉(メルねえ)

「あっはい。あっうん」

私マーサが妹のアテナ、アルマが姉のメルである。最近アクトゥールに引っ越してきた、商家の姉妹という設定だ。


街並みの満喫しながら歩いていると、途中に大きな天文台があり、今度来ようね、とアルマと約束した。


そしてついに目的地である冒険者ギルドに到着した。

私は、ドアを開けて建物の中に入った。

ドアをいきよいよくあけて、たのもー!!!とやりたい衝動をおさえた私を褒めて欲しい。


掲示板にはクエストが貼られていて、冒険者達が実りの良いクエストがないか物色している。

建物の真ん中あたりに受付があり、お姉さん達が座っている。私たちは、冒険者達からの不躾な視線を受けながらも、登録を行うために総務担当らしき受付に向かった。


受付のお姉さんにアルマが話しかけた。

「こんにちは。冒険者登録したいです」

「こんにちは。あなたたち二人?大人の人は一緒にいる?」

受付のお姉さんはにっこりしながら答えてくれた。


「わたしたち二人だけです」

アルマが答えた。

「そっか、ギルドの規定で10歳じゃないと登録できないの。二人は何歳?」

「わたしが11歳で、こっちの妹が10歳です」

アルマが答えた。


受付のお姉さんことエミリーは、少し考えた。

妹と紹介された子は10歳になっていないような気がする。

改めて確認しようと口を開こうとしたら、


「これがわたし達の洗礼の証明書です」

アルマが先手をうって、マーサとアルマの分の証明書をエミリーに渡した。


「確かに洗礼を受けてますね。でもね、冒険者は危ないの。もう少し大きくなってからもでいいんじゃない?」

「ある程度自衛もできるので大丈夫です」


アルマが答えた。

今のところマーサは一言も発していない。お姉ちゃん役をできることにアルマが張り切っていたので、手続きを譲っている。


「そうは言っても、、、」

町娘風の服装をしているけど、二人とも育ちが良さそうな雰囲気が伺える。特に先ほどから一言も話していない女の子は貴族と言われても違和感がない。貴族の子供がお忍びでくることがあることもエミリーは知っていた。

エミリーが悩んでいると、酔っ払った冒険者が近づいてきた。


「おいガキども。おままごとなら、よそでやりな」

マーサは内心テンションがあがった。これが!噂に名高い!新入りいびり!

「特にこっちのチビ、ほんとに10歳か?冒険者のごっご遊びでもしにきたのか?」

マーサは内心さらにテンションがあがった。名指ししてくれたのだ!

「洗礼の証明書をそこのおねーさんに渡したじゃない?見てなかったの?おじさん、バカなの?」

とりあえず私は流れにのった。

「アァン?なんだと!!」

よし、いい感じいい感じ。

「疑うなら試してみる?そんな度胸はないかしら?」


隣でアルマがジト目をしているけど、気づかないふりをした。

冒険者登録時の新入りいびりは今回しか遭遇できないのだ。自重したくない。


「俺はなめられたくないんだよ!後悔させてやる!」


周りが止める前に、その冒険者が剣を抜いてかかってきた。


ちょっと!剣までぬくの?

弱い犬ほどよく吠えるってやつかしらと思いながら、相手の攻撃をヒラリと躱す。

受付のお姉さんが私たちの登録を躊躇っていたのが気になるわね。

おっと、また切り掛かってきた。そんなに振りますと危ないわよっと。

自衛する力があることをちゃんと示せば、受付のお姉さんも登録を受け付けてくれるでしょう。


私は改めて冒険者をみた。さてと、どう倒そう。



「上部だけの見た目で判断するからそうなるのよ。それと、なめられたくないなら口先だけじゃなくて、実力をつけなさい」


私は腕を組みながら、床に転がる冒険者を見下ろしていた。

私は攻撃を交わしながら、簡単な水魔法で注意をひき、相手の攻撃にあわせたカウンターで、剣の柄の部分を鳩尾に叩きこんだ。その結果今に至る。剣は抜いていないし、怪我もさせていない。


そのまま受付のお姉さんに話しかけた。

「さっきメル姉(メルねえ)が言った通り、私たちには自衛する能力があるわ。冒険者登録していい?」


受付のお姉さんはびっくりした顔をしながらも登録手続きをしてくれた。


冒険者のランクは、S、A、B、C、D、E、Fがあること。初めはFから始めること、その他の注意点など、受付のお姉さんが説明してくれた。

初級ランクを飛ばして登録することもできるらしいけれど、試験や手続きで身バレして年齢制限に引っかかる可能性があるため、Fランクから始めることにした。


アテナと名前の彫られた、冒険者のペンダントをもらった私はホクホクしながらギルドから出た。


「やったー、冒険者になったわ!」

隣を歩くアルマがジト目をしてくる。

「いや、ほら。あの冒険者、元から評判が悪くてマークされてたみたいで、感謝されたじゃない」

アルマの目が細くなった。

「・・・ごめんって、メル。今後はあまりああいうことはしないから」

アルマはため息をついた。

「わかっているのならいいのよ」

「ありがとう!さぁ冒険者生活を満喫しましょう!」

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