第32話:課外授業に行きます(4)
レイラと学園の女子生徒が大鬼の棍棒で攻撃を受けたことに気付いたレオはすぐに、大鬼にきりかかった。
「なにしてくれてんだぁ!」
レオは大鬼を切りすてると、動かずぐったりしている二人に近付いた。
「おい、大丈夫か!」
頭から血を流している二人の反応はない。
焦ったレオは二人の脈を確認した。
「よかった、二人とも脈はある。気を失っているだけか」
レオは急いで二人をファウナの元に連れていくことにした。
ファウナはというと、能力を底上げをする結界を広く展開し、その結界の中にさらに展開した魔物が入ることができない聖域のような結界の中で、怪我人の治療にあたっていた。二重にはった結界の、内側の結界に近づいてくる魔物は光の魔法の矢で迎撃している。
「ファウナ嬢!二人が怪我をした!見てくれないか。脈はあるから気を失っているだけだと思う」
レオがファウナの元に到着したようだ。
「レオ様!?わかりました!お二人を横にしてください」
ファウナが2人の治療をしている間に、離れたところで雄叫びが聞こえた。
魔物の掃討戦が終わったようだ。
しばらくするとレイラが目を覚ました。
「おい、レイラ!!大丈夫か!心配したぞ!」
そして、目を覚ましたばかりのレイラにレオが抱きついた!
「抱きつくな!バカゴリラ!周りの目があるだろう!!!」
レイラは反射的にレオを蹴り飛ばした!
「いてっ!ほんとうに心配したんだぞ!」
レイラに怪我がないか確認しようとまた近づこうとするレオ!
「うるさい!近づくな!けだものっ!」
悪態を突くレイラの顔はものすごく赤くなっている!照れ隠しにしか見えない!
レイラの横に寝ていた女子生徒も目を覚ましていたようで、目の前で起こった突然の青春イベントに、キュンとした顔をしている。
ファウナは、前から二人は怪しいと思ってたんだよね周りの目がなければいいのかな?、と独り言を言っている。
治癒魔法ですぐに動けるようになった騎士団と魔法師団のメンバーは治療の補佐をしていた。レオとレイラの様子を眺めて、青春だねーと呟いた。
一方、マーサとアルマとローガンは森の中にいた。
マーサは、タイミングよく現れた魔物の群れに違和感を感じていたのだ。ローガンもそれは感じていたようで、撃ち漏らした魔物の討伐も兼ねて森の中に入っていた。他の隊員は、魔物が再度現れる可能性もあるため、念の為に先ほどの戦場に待機させている。
ローガンがマーサに話しかけた。
「アクトゥール嬢、今回の魔物の襲撃はタイミングが良すぎないか?それと、脇目も振らず森を目指していたことが気になる」
「そうですわね、ローガン様。たとえばなのですけれど、魔物を呼び寄せる道具などは存在しますか?」
「魔物を呼び寄せる道具もあるがここまで効果があるかは疑問だ。効果範囲の広い、祭壇を使った儀式もあるらしいが、そんなものを設置したら目立つはずだ」
そこでアルマが口を開いた。
「わたしなら幻惑魔法を使って祭壇を隠せると思います」
ローガンとマーサが反応した。
「高位の幻惑魔法の使い手ならそれも可能だな。しかもここは森で物は隠しやすい」
「確かにそうですわね。アルマ、幻惑魔法の痕跡を探せますか?」
「できると思いますけど、集中力が必要なので、その間の守りはお任せしてしまってもよろしいですか?」
「あぁ任せろ」「任せてください」
少し時間が経過した頃にアルマが口を開いた。
「この先に幻惑魔法のような魔力を感じます。わたしの魔法で相殺しますか?」
「アルマ嬢、よろしく頼む」
「わかりました、ローガン様。3秒数えたら相殺します」
ローガンとマーサは武器を手に取った。
「3、2、1。解除」
アルマの言葉と共に、祭壇が姿をあらわした。その横には、学園の教師の格好をした男性がいる。その目はうつろだ。
ローガンは剣を構えながら一歩前にでて、マーサとアルマを背中に匿った。
「お前は何者だ?」
「魔物、魔物、魔物、来い、来い、来い、ふふふ」
男性の様子がおかしい。
ローガンも男性の様子のおかしさに気付いている。
「ここで何をしていた?」
「魔物、魔物、魔物、来い、来い、来い、ふふふふ」
ローガンは男性の様子を観察して、考えた。
この様子には見覚えがある。精神干渉魔法か、強い魅了だ。前者だとすぐに判断は難しいが、もし後者だとすると、魅了を仕掛けた相手を連想させれば態度が変わるはずだ。
「誰に頼まれた?どんな女だ?」
「僕のかわいいあの人!!!!僕だけの天使!!!!!」
男性の様子が一変した。
その様子を確認したローガンは、男性への警戒を続けながらもマーサとアルマに話しかけた。
「アクトゥール嬢、アルマ嬢。この男性はおそらく強い魅了にかけられている。この場で解除は難しいが、捕まえて情報を吐かせたい。わたしがこの男性を無力化するから、二人には、祭壇の破壊を任せていいか?」
マーサが答えた。
「わかりました。祭壇の破壊の際に気を付けることはありますか?」
「祭壇のうえにある、あの道具と、魔法陣のようなものが書かれている紙は残したい。魔法陣の紙は効力をなくすために半分に切り裂いてくれ。確認したところ、祭壇にトラップはない」
「わかりました。では、ローガン様の合図に合わせて動き出します」
私は、ローガン様がこの短時間でトラップがないことを確認したのは、スキルなのか、魔法なのか、経験なのか、気になったけれど、今は聞くことではないと考えた。
それとこの男性は、おそらく学園内のジャンヌの協力者なのでしょう。この様子を見る限り使い捨てにされてしまったようですけれど。
「了解した。それでは、」
そのタイミングで、森の中から炎が現れて、私たちの前に立ち塞がった。
「くっ」
ローガン様が炎から離れ、私たちも距離をとる。
炎が出てきた先を見ると、なんと、ムーノ殿下が剣を片手にこちらに飛び出してきた。
「おいっ!おまえたちの仕業か!」
私もだけど、アルマとローガン様も驚いている。
すぐにローガン様はムーノ殿下に声をかけた。
「ムーノ殿下!?急にどうされましたか?」
「お前たちの仕業か!」
私は、ムーノ殿下の様子がおかしい!?もしかして魅了にかけられている?と思ったけれど、いつもこんな感じだったわね、と思い直した。
マーサが思い直している間、ローガンは状況を把握しようとしている。
「ムーノ殿下、何があったのですか?」
「ジャンヌが、突然現れた魔物に攻撃をうけて、意識不明だ。魔物を呼び寄せたと聞こえたぞ!そのせいではないのか!」
ローガンが答えた。
「ムーノ殿下、私たちは、魔物を呼び寄せた道具の確保と、祭壇の破壊を行うためにここにいます。実際に魔物を呼び寄せたたのは、私たちではなく、そこにいる男です」
「こいつか!こいつのせいでジャンヌが!」
ムーノは愛用の魔剣イカロスをふり、炎をだした。ムーノの足元も燃えている。
「ムーノ殿下!この男は生け取りにします!その祭壇も証拠品として抑えます!落ち着いてください!」
「うるさいぞ、ローガン!ジャンヌに大怪我をさせたこいつを許すわけにはいかない!イカロスよ!燃やし尽くせ!」
マーサがムーノを見ると、愛用の魔剣を使い炎をばら撒いた。周りの木々にも燃え移っている。
森の真ん中で炎をばら撒くなんて一体何を考えているの?と、私は思ったけれど、消火が先だ。
「ローガン様、森に火の手が回る前に、私の水魔法で消火します。よろしいですか?」
「わかった!アクトゥール嬢、頼む」
「ウォーターレイン!」
私は魔法を唱えて、付近に大量の水を降らせて消火を始めた。
そして、消火を終えた私たちの目に映ったのは、燃え尽きた祭壇と、炎の魔剣で焼き切られた学園の教師だった。
ローガン様が思わず。
「ムーノ殿下、祭壇は証拠品に、その男は生け捕りにすると・・・」
「うるさい!魔物を呼び出した犯罪者だろう!これ以上俺に口答えすると、不敬罪でお前たちも燃やすぞ!」
アルマとローガン様は、あきれた様子だ。私たちは、先ほどの炎はムーノ殿下の魔法ではなくて、魔剣によってひきおこされたことと、ムーノ殿下の魔法の実力が低いから魔剣を奪えば一瞬で鎮圧できることはわかっていたけれど、率先して面倒ごとを起こしたいわけではないのよね。
私とアルマに嫌なことをさせるわけにはいかないとばかりに、すかさずローガン様が対応してくれた。
「失礼な態度をとり、申し訳ございませんでした。殿下の仰せのままに」
頭を下げたローガン様のことを、ムーノ殿下は満足げな顔をして見ていらっしゃる。
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王立魔法学園の課外授業の翌日。
この世界のどこかの国、どこかの都市、そのどこかにある茶屋。
そこに、不思議な雰囲気の2人の男女がいた。
「ここがおすすめの茶屋か?なかなかいい雰囲気だな」
「気に入ってくれたならよかったわ。しっかり満喫してね」
「はいはい。おっ?俺のお姫様も目を覚ましたようだ」
「それで、大丈夫なの?」
「あぁそのあたりはしっかり見極めた。御誂え向きがいたんだ」
「そう。それならよかったわ」
「そっちのお姫様の様子はどうだ?」
「なかなか頑張ってくれてるわね」
「結構気に入っているよな。後継者にでもするのか?」
「そこまでは考えてないわ。それにたぶんあの子は・・・。それより、早く注文しましょう。抹茶とみたらし団子がおすすめよ」
「へー、これがお前の故郷の料理か」
「そうよ」
「それじゃ堪能させてもらいますか」




