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第29話:課外授業に行きます(1)

王立魔法学園の魔法師コースの2年生の課外授業が行われる時期になった。


王都近郊にある比較的安全な森で、三日間の演習が行われる。森の北側には山がそびえ、東側には畑や田んぼがあり、西側には平原を挟んで街があり、南側には舗装された道が続いている。


学生や教員は馬車で移動して、遠征を行う森の南に位置する入り口についた。森の中には生徒だけで入るが、緊急時の対応のために、教員や従者は森の入り口のすぐそばで待機することになっている。


数人のグループに分かれて、演習初日に渡される課題をこなす必要がある。採取や魔物討伐、教員たちが事前に隠したアイテムの捜索などを行う。


マーサは、ファウナ、レオ、レイラの4人でグループを作っていた。魔法行政コースのカミラはボランティアとして運営に携わっている。


「マーサ様、何か危険なことが起こったら信号魔法を打ち上げてください。すぐに向かいます」

「ありがとうアルマ、頼りにしているわ」

私は、アルマと第一王子のユーノ殿下に今回の演習で危ないことが起こらないか心配だわ、と事前に相談していた。ユーノ殿下も何か疑わしい情報を掴んでいたのか、騎士団と魔法師団から数名派遣すると言ってくれた。アルマも森の中にすぐに駆けつけられるように待機してくれることになっていた。


「何事もないといいのだけど・・・」

ムーノ殿下とジャンヌが表立って行動を共にするきっかけになるイベントだったと思うけど、魔物が暴れる、くらいしから覚えていない。私が独り言を呟いていたら、カミラ様がやってきた。

「皆様、教員の方々が安全を確認してくださった森とはいえ、危険もあるかもしれません。お気をつけくださいませ」

「まぁ大丈夫だろう!」

「気をつけて行ってくるわ」

「ご心配ありがとうございます!」

近くでそれぞれ準備をしていた、レオ様、レイラ様、ファウナ様が答えた。



少しすると学園の教員が生徒を集めた。

「これから、課外授業を始めます。先ほど各グループに渡した封筒に、課題が書かれた紙が入っています。今回の課外授業ではその課題に臨んでもらいます。グループ同士で協力しても良いですが、故意に妨害した場合は処罰の対象とします。また、野営の練習も兼ねますので、森で三日間過ごすこととします。私たち教員で森の見回りはしましたが、魔物や野生動物もいますし、危ないことが起こらないとは限りません。身の危険を感じたら、すぐにその場から離れて安全を確保してください。自分たちで対処できないと少しでも感じた場合は、すぐに信号魔法を打ち上げてください。教員が救援に向かいます。いいですか?」


ハイっ!と生徒達がいい返事をした。期待や不安、ワクワクした気持ちや緊張感などが入り混じっている。

「健闘を祈っています。それでは、各班出発!」


ーーーーーーーーーーー


私たちは、森の中に入った。

昼間ではあるけれど、冬ということもあり肌寒い。まだ森の入り口付近なので明るい。


見通しが確保できる場所で私たちは立ち止まった。

「俺たちの課題はなんだった?」

「確認するわ」

レイラ様が課題が書かれた紙を広げて、レオ様と確認を始めた。

「俺たちのグループ課題わっと、ふにゃふにゃキノコの採取、はぎしり白菜の採取、ハム大根の採取、フォレストタートルの討伐、か」


課題の内容を聞いて私はそれぞれの課題の対象のことを思い浮かべた。ふにゃふにゃキノコは食べると顔がふにゃっとして笑い出すキノコで、はぎしり白菜は半分魔物のような白菜で、はっば同士がぶつかってはぎしりのように聞こえる野菜だったと思う。ハム大根は、見た目も味も大根だけど、中身の色合いがハムに似ているのよね。


レイラ様がレオ様に答えている。

「そのようね。それと隠されたアイテムの捜索ね」

「方針はどうしますか?ファレストタートルの討伐は後半の方がいいですよね?」

「そうですわね、ファウナ様。血の匂いにつられて他の魔物が寄ってくると困ってしまいますものね」

マジックバックがあれば気にしなくてもいいのだけど、今回は授業の一環であるから、持ち込みが制限されているのよね。

「フォレストタートルは、見つけてもまずは場所を記録するだけでいいか?一日目は、森の地形を調べながら、野営ができる場所を探しつつ食料や水の確保、課題については採取できるものはついでに採取するくらいにするか?」

「それでいいわ」「わかりました」「問題ありませんわ」

私たちはレオ様の案に同意した。


「よし、じゃ方針が決まったところで早速出発しよう!俺が先頭で、」

「私がやるわ」

ノリノリで先頭を進もうとしていたレオ様をレイラ様が止めた。

「地形や周りを調べつつ進むのよ?あなたそういう細かいこと向いてないじゃない」

それを聞いた時のレオ様の様子が、ノリノリで尻尾を振っていた犬が、しょんぼりした様子に似ていた。

「・・・わかった、レイラ先頭を頼む」

「ええ。わたし、レオ、ファウナ様、マーサ様の順番でいい?」



その後、私たちは森の中を散策し、暗くなる前に野営の準備を行なった。

森の中で少しひらけていた場所があったのでテントをはった。1〜2分歩くと小川も流れていて、真水も確保しやすい。


「初日でハム大根は手に入れたな。フォレストタートルの住処も見つけたし、明日は、ふにゃふにゃキノコとハギシリ白菜を探してみるか?」

「そうね。隠されたアイテムも探してみない?」


レイラ様とレオ様が課題の確認をしている一方で、私とファウナはご飯の用意をしていた。

「マーサ様、うさぎ肉の処理が終わりました。ハム大根と一緒に鍋で煮込んでいいですか?」

「ありがとう、ファウナ様。味付けも任せてもいいですか?」

授業の一環であるから持ち物が制限されているとはいえ、調味料が持ち込めるのはありがたいわね。調味料が持ち込めないと暴動がおきかねないとは思いますけれど。他には、水筒や最低限の装備は持ち込めることになっているわね。

「はい、わたしにお任せください!」

ファウナが自分の胸を叩いて、任せて!って言ってる。楽しそうにしているなぁと思いながらも、私も私で魚の準備をすることにした。魚は煮込まずに焼き魚にしたい、なぜならそっちの方がキャンプっぽい!

「レオ様、少しいいですか?」

「なんだ?」

「凍った魚を火魔法でとかしていただけませんか?」

レオ様は、私が渡した魚を眺めた。

「・・・なんでこんなにも芯まで凍っているんだ?」

「魚を捕まえる時に凍らせました」

「捕まえた後の保存じゃなくて、捕まえる時?」

「そうです。釣り竿もないですし、素手で捕まえるのも面倒ですし、罠を仕掛けてもかかるかわかりませんし、泳いでいるところを直接魔法で凍らせました」

「そうか・・・わかった。氷を溶かすから少し待ってくれ」


レオ様が魚の氷をとかしている間、私はリンゴジュースを作ることにした。水魔法で手とおばけリンゴを洗う。

おばけリンゴは、おばけみたいな模様があるだけで普通の果物で、一般的に市場に出回っているリンゴよりもフレッシュで奥深い味わいなのよね。森で見つけられて運がよかったわ。


私は、おばけリンゴを布でつつんで、絞った。

「よっと」

レオ様がこっちをみて驚いた顔をしている

「えっ、素手で?」

「ちゃんと水魔法で手はあらってますよ!安心してください」

「お、おう」

レオは、おばけリンゴって結構硬かったと思うけど素手で・・・?と思っていた。


調理も終わったので、私たちはご飯を食べることにした。

「ファウナ様、このうさぎ肉と大根の煮込みとても美味しいわ!」

レイラ様が褒めている。

「ほんとだ!ウマイ!」

レオ様も褒めている。

「これは美味しいわね!クセを抜きつつもうさぎ肉の美味しさを引き出していて、ハム大根の味もほどよく、2つの食材を同時に見事に活かしているわ!」

私も褒めた。


「ふっふっふ、パン屋の娘をなめちゃいけません。うちは惣菜パンも扱っているので、調理もするのですよ!」

ファウナは嬉しそうだ。



ご飯を食べ終わり、焚き火にあたりながら雑談をしていると、3人が私の方を見ていることに気付いた。

「どうかしましたか?」

「今は冬だから寒いじゃないですか」

「そうですわね、ファウナ様」

「冬の小川の水ってかなり冷たいじゃないか」

「そうですわね。レオ様」

「暖かいお湯で体をふきたいわ。できれば疲労回復もしたい」

「えっと・・・?」


3人が目を合わせた。

「「「アメリアの時みたいに温泉をだしてくれませんか」」」

野営中の入浴は避けることになり、温泉を樽に出してタオルに濡らしながら体をふいた。



そして、私たちは交代で見張りをして、睡眠をとった。

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