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第27話:2年生になりました

夏休みも終わり、王立魔法学園の2年生がそろそろはじまる。

授業が始める数日前に、マーサとアルマは学園の寮に戻ってきた。


「学園にくるのも久しぶりね」

「そうですね、夏休みも楽しかったですね」


アルマは夏休みを思い出しているのか、楽しそうな顔をしている。


「そうだアルマ、文通は続いている?」

「はい?」

「アメリアの領主館で働いている文官の方との文通は今も続いている?」

アメリアから帰国してから、二人は手紙のやり取りを始めたらしい。


「も、もちろん続いています。お互いの近況報告などをしてます」

「ユースティティアに帰る直前のデートで押し倒した?」

「そんなはしたないことしませんよ!公爵令嬢が何をおっしゃっているのですか!清く正しい関係ですっ」

アルマは、ほっぺを膨らませて、プンッとしている。


「ごめんごめん」

「そういうマーサ様こそクラトス様とはどうなのですか?」

「わたくしの婚約者は、ムーノ殿下ですよ。クラトス様は将来の補佐官です」


アルマは、淑女の微笑みを浮かべている自身の主人をみた。アクトゥール公爵家に迷惑をかけないよう、ムーノ殿下側の瑕疵で婚約破棄を目指している主人は感情を読み取らせないように徹底している。


「つまらぬことをお聞きし大変失礼しました。エフィー殿下から送られてきたお菓子があるのですか、どうしますか?」

「食べる!」

アルマがみたその笑顔は、とてもいい笑顔だった。


ーーーーーーーーーーー


「魔法師コースのAクラスを担当することになったジョンだ。今年一年よろしく頼む。今日は初日ということもあり、今年度のガイダンスを中心に行う。特に秋学期の終わりに課外授業があるから、話はしっかりと聞いておくように。なにか質問はあるか?」


私の担任は今年もまたジョン先生だった。2年生から魔法師コースと魔法行政コースにわかれる。A、B、Cの3クラスが魔法師コース、D、Eクラスが魔法行政コースになっている。カミラ様はDクラスで、ファウナ、レオ様、レイラ様は私と同じAクラスになった。ムーノ殿下と側近とジャンヌはCクラスだった。


課外授業は、ムーノ殿下とジャンヌの距離が近づくイベントであるため、私の中で要注意事項になっている。


「よし、質問がないなら。各自ガイダンスにむかってくれ」



初日のガイダンスを終えた翌日。

今日は魔法の授業と戦闘訓練の授業がある。午前中は魔法の授業だ。


魔法の授業の教師が授業を始めた。

「1年生の間にみなさんは一定の基礎を学んだと思います。事前にアナウンスをした通り、今学期は半年かけて魔法を自作してみましょう。意図的に悪用することを前提にしない限り、何でも構いません。新しい物を作る過程を経験することが目的ですので、魔法の効果が成績につながるわけではありません。自由な発想で魔法に触れてみてください。昨年は、風で大根の皮剥きを行う魔法を作った生徒もいました。それでは、みなさんの創意工夫を楽しみにしています。相談があれば随時きてください」


王立魔法学園は、国の魔法エリート養成機関でもある。将来の魔法技術の発展にむけて、学生のうちからこのような授業が取り入れられている。


マーサ、ファウナ、レイラ、レオはいつものように集まった。

「マーサ嬢は、どんな魔法を作るか決めているのか?」

「ある程度決めていますわ、レオ様。氷で置物を作ろうと思っています」

「へー、どんな感じなんだ?」

「せっかくなのでお見せしますね」


私は、演習スペースに向かい魔法を唱えた。


「氷華」

氷の華を作った。見た目はハスの花に似せている。


「これは!冷気がまわりに伝わってきて、涼しい?」

レオ様は目をキラキラさせている。

「そうですわ、これがあれば暑い夏でも人間が冷風製造機にならなくてもすみますわ」

にっこり微笑む私に、ファウナとレイラ様から同情したような目が向けられた。

あの進級試験トーナメント以来、氷の女神のあだ名がさらに浸透した。

「しかも、なんか花びらもゆらゆらしているし、自発的に冷気を出していないか?」

「レオ様、お目が高い!お父様が土魔法で動くゴーレムを作れるので参考に致しましたわ」

「器用なもんだな」

「それでもまだ自作魔法として個性が足りない気がしておりますの」

そこにファウナが提案してくれた。

「マーサ様は治癒魔法も使えると思うので、冷気と一緒に治癒魔法を拡散するのはどうですか?氷と水を同時に操れるのかはわからないのですけど・・・」

治癒魔法とは聖女のファウナらしい。

「氷と水の同時使用はやったことがないのでわかりませんね。どちらも本質的には同じ水なので、やればできそうな気もしますし試してみますわ!」

赤味噌と白味噌を混ぜて、合わせ味噌にする感じでできないかな?といっても、本物の味噌はユースティティアでもアメリアでも、なかなか手に入らないのですけれど。


「ファウナ様は、自作魔法はどうするのですか」

味噌のことは一旦忘れて、私はファウナに聞いてみた。

「光魔法で、日焼けをしにくい結界のような魔法を作ろうと思ってます。太陽の光が、建物や木に遮られて影になるイメージを考えてます」

「実用的ですね。ファウナ様は元から肌が白いですからね」

「日焼けは乙女の天敵ですから。アメリアのビーチで遊んだ時に、日焼け止めを塗っていても少し焼けてしまいまして・・・」

あれ、ファウナさん、なぜか目が据わっていませんか。

「ところで、マーサ様とレイラ様はほとんど日焼けしていませんでしたが、秘訣でもあるのですか?」

「氷属性に変質させた魔力を薄く体に纏ってました。氷は太陽光を反射しますでしょう?」

「闇属性も有効ですね。過信はいけませんが、闇属性は多少は吸い込む性質があるので、闇属性に変質させた魔力を体に薄く纏って、体にあたるまえに太陽光を吸収してました」

「だからあの時のお二人は、少し明るかったり、少し暗かったりしたのですか!ずるいです!」

「お、落ち着いてください、ファウナ様。反射すると言っても全て反射するわけにもいかずに限界がありますし、直接光を操作できるファウナ様の方が有利です!」

有利とは?と思いながらも、私はフォローした。

「そうですよ!闇魔法で吸収するとその分熱が溜まるので、不便ですし!」

レイラ様もフォローした。


その後、ファウナ様も落ち着いたので、レイラ様とレオ様の自作魔法の話になった。


レイラ様は、中距離攻撃を想定した防御魔法を考えているようだ。固有スキルのシューティングスターは攻撃には向いているけど、防御には向いていないかららしい。中距離の攻撃だけなら避ければいいけど、進級試験トーナメントのファウナ様のように遠近両方の攻撃を混ぜられると対応に困るようだ。一般に防御用の闇魔法はあるけど、せっかくなので自作してみるようだ。


レオ様は、考えてない!どうしよう!って言っていた。



午前の魔法の授業が終わり、午後の戦闘訓練の授業になった。

今日の授業では軽い模擬戦を行う。

マーサはレオと模擬戦を行った。


「やっぱりマーサ嬢は強いな。スタンダードな貴族の剣技って感じだが、カウンター狙いが多いから攻撃型の俺にとっては相性が悪い」


私は学園では剣技に個性の出にくいスタンダードな戦い方をしている。私が目立つとムーノ殿下を刺激する可能性がある。そういう時のムーノ殿下は自分をすごく見せようと権力を振りかざす。どんどん権力に依存していて、周りへの損害も多いため、私は自重せざるを得ない。

ただ、ムーノ殿下は上部だけなので、午前中の魔法の授業で作った氷の華はただの氷の彫刻としか認識しないだろう。上部だけしか見られないゆえの抜け道だ。


「お褒めにあずかり光栄です、レオ様。しかし、まだお祖母様には一度も勝ててないのですよ」

「あー、ダフネ様は対人にやたら強いんじゃないのか?特に1体1だと世界最強クラスだと聞いたことあるぞ?」

「それでも勝ちたいものは勝ちたいです」

一度くらいお祖母様にも勝ちたいと思っているけど、なかなか先は長そうなんだよなぁと思っていたら、レオ様が聞き捨てならない単語を発した。


「その怪力を持ちながら、さらに技術を磨くとは、末恐ろしいな」

「怪力?」

「あぁ!身体強化魔法を使っているとはいえ、俺の剣とマーサ嬢の刀がぶつかる時は岩のように感じるぞ!」

「レオ様・・・年頃の女の子に向かって、あろうことか、岩のような怪力とおっしゃいましたか?よくしゃべるのはそのお口ですか?氷漬にしますわよ?」

日頃鍛錬しているからしょうがないとはいえ、そういうところは流してほしいものよね。


マーサは気付いてないが、二人の会話を聞いていた一部の特殊な生徒がざわついている。

「なぁ、氷の女神に氷漬けにされるのも、こう、アリじゃないか?」

「ああ、氷漬けにされて動けないところを上から見下ろされたい」


こうして、氷の女神に個性的な崇拝者が増えたのであった。

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