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第21話:王立魔法学園での1年目が終わります(1)

鬼教官もとい、カミラのとてもためになる授業を乗り換えたマーサたちは無事に試験を終え、残すは進級試験トーナメントのみとなった。

進級試験トーナメントは一日目に予選、二日目に準決勝・決勝が行われる予定である。試合会場は学校の修練場となっており、当日は観客用のテントも張られる。試合に使う武器は、自前でもいいが、刃物の場合は刃を潰す必要があるため、学校が用意したものを使うことが多い。


「ファウナ様、ご武運をお祈りしていますわ」

「ありがとうございます、マーサ様、頑張ってきますね!」


ファウナも進級試験に参加申し込みをしていたようで、私はファウナのことを見送った。レオ様とレイラ様は二人で準備運動をしていて、カミラ様は運営を手伝っている。


「お嬢様、わたしたちもそろそろ移動しましょう」

「そうね」


アルマに案内されたテントには、氷の女神、と大きく文字が書かれている。

私は女神という柄ではなくただの人間なので、非常に、本当に非常に不本意ではあるのだけど、これには深い事情がある。


進級試験トーナメントが開催される時期は、1年生の終わりつまり6月末である。夏に差し掛かっていて、昼間は暑い。


「アルマ、ここが私たちの持ち場?」

「はい、お嬢様」

アルマも微妙な顔をしている。


「私は氷魔法で空気を冷やせばいいの?」

「お願いします。そのあとわたしが風魔法で冷えた空気を拡散します」


つまり、私たちは救護テントの中で人間クーラーをやることになっていた。


「ここに置かれているこの容器は?」

「魔力回復ポーションだそうです。お嬢様の場合は不要かもしれませんが・・・」


しかも、冷えた炭酸水の代わりに、冷えた魔力回復ポーションつきのようだ。


「せっかくなので、いただきます」


学園には私以外にも氷魔法使いも在籍している。彼/彼女らは、氷の柱を作って会場全体の空調調整をしているのだけど、救護テントの空調だけは、私にやってほしいと頼み込まれた。

異世界転生して人間クーラーをやることに微妙な気持ちになりながらも、あいまあいまに応援をしていたら進級試験トーナメント初日が終わったようだ。


「マーサ様!予選勝ち残りました!」

「おめでとう、ファウナ様」

「ありがとうございます!この勢いで優勝目指します!」


「優勝は渡さないわ」

「どっちも強いしどうなるかわからないな!」

レイラ様とレオ様も予選を通過したようで、私たちに合流した。


「皆様お疲れ様です。素晴らしい試合でした。明日に備えて今日はゆっくり休んでください」

カミラ様も運営の手伝いが終わったようだ。


カミラ様が、私の婚約者様のムーノ殿下が2回戦で敗退したことを教えてくれた。1回戦負けじゃないなんて、すごいじゃないですか、殿下。殿下のとりまき、他の攻略対象の方々も早々に敗退したようだ。



ーーーーーーーーー


トーナメント二日目は晴々とした青空だった。つまり、人間クーラーの再登場である。私とアルマは慣れた手つきで対応していた。


「ファウナ様とレイラ様があたるとしたら決勝ですね」

「そうね、二人が戦うのは楽しみだわ。アルマも参加すればよかったのに」

「私はお嬢様のメイドですよ。学園のトーナメントは遠慮します」


私たちが雑談をしていると、準決勝が終わった。ファウナ様、レイラ様、レオ様は勝ち上がったようだ。

決勝戦は、今年は女子から行われる。年毎に男女交互になっているそうだ。

光の聖女と、星夜の舞闘姫の決勝戦だけあって、観客も盛り上がっているわね。


試合の審判は学園の教師が務める。

「勝利条件は、相手を降参させる、戦闘不能にする、場外に押し出す、のいずれかです。後遺症の残る行為は禁止とし、危ないと思ったら介入します。それでは、双方準備はいいですか?」


ファウナは杖と小さい弓を、レイラは細剣を装備し、お互いに向き合い、うなづいた。

「はじめっ!」


ファウナは魔法を唱えながら杖を向けた。この杖は、教会がファウナのために用意した物で、光魔法や聖女の魔法の補助機能がある。

「ライトボール!」

光属性の初球魔法だ、威力より発動時間を優先したようだ。

レイラはそれを躱すと、闇魔法をまぜた身体強化魔法を自分にかけ、細剣を抜いた。刃を潰した学校からの借り物である。

素早くファウナに近づき切りかかったが、その間に身体強化をかけたファウナに杖で受け止められた。

「ガンッ」

と鈍い音がする。

レイラは至近距離から蹴りを入れ、ファウナはそれを腕でガードした。ファウナは杖を鈍器代わりに、ファウナは細剣を使って、近接戦をした。

近接戦は分が悪いとみたファウナは、杖を大きめに振り、一旦距離をとった。

腰にかけていた小さな弓を左手にもち魔法を放った。

「ホーリーアロー」

魔力を矢の形にしてレイラに打ち出した。この弓も魔法の補助道具である。矢の先を丸くしてあるとはいえ、当たると衝撃が大きい。

レイラはそれを避けつつも、完全に避けられない矢は体に薄くまとわせた闇魔法で吸収した。

レイラは固有スキルシューティングスターを発動することにしたようだ。


球状のエネルギー体がレイラの体の周りに出現した。

レイラが、星夜の舞闘姫と呼ばれる所以である。闇をまとった体の周りに、光りの球体が浮び高速で動く様子は、夜空に浮かぶ流れ星を連想させる。細剣の剣技も舞い踊っているように滑らかであり、この二つ名がついた。

それを見たファウナは聖女の結界を試合会場にはった。魔力を大きく消費するが、結界内の任意の人物の能力を底上げできる。今回は自分自身のみを対象にした。


一進一退の攻防をしていた二人であるが、徐々にレイラが押し始めた。


そして、細剣で杖をはじき、その切先をファウナの顔に向けた。


「参りました」


ファウナは悔しそうに両手をあげて降参のポーズをとった。


「勝負あり!勝者、レイラ・カードナー」


わぁと歓声が上がり、熱戦を繰り広げた二人を拍手が迎えた。



マーサは、控えテントに戻った二人の元を尋ねた。


「二人ともお疲れ様!いい戦いだったわ!」

「ありがとうございます。勝てはしましたけどヒヤヒヤしましたよ」

「でも、わたしは専用武器を使っていて、レイラ様は学園のレンタル品じゃないですか。悔しいです」

「わたしは小さいころから騎士の家で育ちましたし、年の功ってやつですね。ファウナ様は才能もあるので、すぐに抜かれてしまいそうですけどね」

「レイラ様の方こそ、センスがすごいです。追いつけるように頑張ります!!」


私はレイラ様とファウナに、水魔法の治癒をかけることにした。

「とりあえず二人とも体を休めたら?」


6つの魔法属性、火、風、水、土、光、闇のうち、治癒魔法が使えるのは、水と光だけだ。

無属性でも軽い切り傷を治すくらいはできるが、マーサとファウナのような水魔法と光魔法ほど効果がないので、治癒魔法と言えば水魔法と光魔法をさす。


「マーサ様の治癒を受けるのは入学試験の時以来2度目ですね。ひんやりとして気持ちいいです」

「水魔法の治癒は初めてうけました。光魔法の治癒はポカポカする感じなので、違いがおもしろいですよね」


レイラ様が、あっ、という感じで。


「マーサ様はこちらにいらして大丈夫でしたか?」

「大丈夫よ。残りは男子の決勝戦だけだから、冷風発生装置の役割は終えました」


ちょうど外から、男子決勝戦の様子が聞こえてきた。


「いつもお前だけずるいぞ!!誘う権利くらいよこせー!!おい!避けるなよ、レオ!!」

「はっはっはっ、当たると痛そうだからそりゃ避けるよ」


私たちは顔を見合わせて休憩をした。

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