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第20話:進級試験の時期になりました

マーサが登城して以来、大きな出来事もなく、1年生最後の進級試験が迫ってきていた。

王立魔法学園では、2年生で、魔法師コース、魔法行政コースの2つのコースにわかれる。そのため、1年生の最後に行われる進級試験はコース分けの大きな意味をもつ。


マーサは、ファウナ、レイラ、カミラと一緒に学園の一室を借りて試験対策をしている。マナーの授業の一環でサロンの開催に使われる建物があり、学生なら部屋の予約を取れば誰でも使える仕組みになっている。


「カミラ様は魔法行政コースを希望されているのでしたっけ?」

「ええ、魔法行政コースを希望しております。領地運営や組織運営に活かしたいと考えていますわ。マーサ様は、魔法師コース希望でしょうか」

「そうですわね」


魔法師コースが、実技多めの体育会系で、魔法行政コースが魔法を活かす政策などを考える頭脳労働多めの文化系のイメージである。


カミラ様が他の二人にも聞いた。

「ファウナ様とレイラ様も、魔法師コース希望でしょうか」

「「そうです」」

「わたくしだけ別ですのね」

カミラ様が寂しそうだったので、私は。

「コースが別でも教室も近いですし、同じ授業もとることもできますわ。これからもこうしてサロンで集まりましょう?」

「お気遣いありがとうございます。楽しみにしていますわ」


私はレイラ様に聞いてみた

「レオ様も魔法師コースですか?」

「そうですけど、なんで私に聞くんですか?」

「仲がいいから知っていると思いまして」

ファウナがワクワクした目で口を開いた。

「よく一緒にいらっしゃいますし、息もあってますよね。お付き合いされていらっしゃるんですか?」

「なっ、そんな分けありませんよ。ただの腐れ縁です」

「えーほんとですか?長年連れ添った夫婦のようですよ」

ファウナがからかうように、レイラ様を見つめている。

「そんなことをおっしゃっていますけど、ファウナ様も第一王子のユーノ殿下がよく教会に尋ねているそうじゃないですか」

今度はファウナが慌てた。

「ち、違います。あくまで、王子として聖女の様子を見にきてくださっているだけです。からかってきますし」

「からかう?詳しくお話を聞かせてください」

レイラに続いて、マーサとカミラもこの話題に食いついた。



色々と話を聞けた私は満足した。


「そういえば、レオ様は今日はいらっしゃらないのですね?最近は男子グループにいることも多いですし」

カミラ様とレイラ様が苦笑いしている。

先にカミラ様が、

「マナーがそれほど厳しくない魔法学園内とはいえ、未婚の貴族の男女が一緒にいるのは目立ちますし」

レイラ様が続けて、

「男同士の方が気安いということもありますけど、氷の女神様と、光の聖女様と同じグループにいると、それだけで嫉妬されますからね」

私とファウナがびっくりした。

「「えっ?」」

「ほら、レオって戦闘訓練の授業でよく訓練相手に誘われるでしょう?あれは大義名分を得て攻撃できるからです」

「レオ様が強いから、訓練の相手として人気だと思ってました。すいません」

「マーサ様は気にしないでください。おかげで成長する機会が多くて強くなれる!って本人も喜んでますし。進級試験のトーナメントでも優勝してやる!ってやる気満々です」


王立魔法学園では、1年生で行われる進級試験の最後に、希望者が参加できる勝ち抜き形式の男女別のトーナメントが予定されている。上位者は進級試験の結果に加点される。生徒の自主性を重んじるため、一回戦で敗退してもマイナス点がない、加点制である。


「レオ様は進級試験トーナメントに参加するんですね。レイラ様もですか?」

「はい、参加します。マーサ様も参加しますか?」

「私は参加しませんわ」

これは意外だったのか3人とも驚いた様子だ。

「白く美しい刀を携え、氷魔法を手足のように操り、相手の攻撃をヒラヒラと躱しながら、的確に反撃し、見る者の目を奪うかのような流麗な戦いをなされるマーサ様が参戦しないのですか?・・・これはファンクラブの方も落胆しますわね」

最後の方は独り言のようだったけど、聞き捨てならない単語が聞こえた。

「カミラ様、過大評価ですわ。それと、ファンクラブというのは・・・?」

「なんでもございませんわ」

えー、とてもいい笑顔で言い切られてしまった。

「参加しないことはシンプルに勿体無いと思いますけど、なにか理由があるのですか?」

「レイラ様、その、万が一優勝してしまった場合、ムーノ殿下をお誘いしたくありませんし」

周りが、あー確かに、と同情してくれた。


「それに加えて、ここは王立魔法学園です。試験の一環とはいえ、将来を見据えたアピールの場でもあります。アクトゥールはアピールする側ではなく、される側ですから、ご学友の機会を応援しますわ」

「大貴族っぽい」

「ファウナ様、雇って差し上げてもよろしくてよ?」

私たちは笑い合った。


カミラ様が、そういえばという雰囲気でおっしゃった。

「皆様のことですから、魔法や戦闘系の実技試験は心配ないと思っておりますけど、他の科目はどうですの?」


カミラ・フラメルは、周りの3人がさっと目を逸らしたのを見過ごさなかった。

その3人も、カミラの雰囲気が変わったことに本能的に気づいた。


「まず、マーサ様」

「はい!私は、淑女の授業の刺繍が苦手です」

「苦手?」

「いえ、壊滅的です!」


「次、ファウナ様」

「はい!わたしは、マナーの授業が苦手です」


「最後、レイラ様」

「はい!わたしは、算術が苦手です。数字を眺めて何が楽しいかわかりません!」


「そう。みなさん、ご自身の苦手をわかっておられるようですね。試験までまだ時間がありますので一緒にお勉強しましょう」


にっこりと、それは美しく微笑むカミラに、3人はコクコクと頷くしかなかった。


見た目もご令嬢、中身もご令嬢のカミラ・フラメルは苦手科目がない。戦闘系こそ、上位の中の下位ではあるがそれでも上位である。他の科目は学年トップも多く、そうでない場合でも軒並み上位の中の上位だ。秀才として名高い。


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