花に聞く花言葉 アマリリス編
花言葉を知っているのは何も人間だけじゃないのですよ。
いつもは来ない、植物園に来た。都会はうるさい場所だが、私にとってはこちらも大差ない。
ちょっとぴり嫌なことがあったから、気を紛らわせるために来たのだ。
あちこちの植物がいろんなことを話している。
私は、他の人と違い植物の声が聞こえる。最近そのことは他人に言わなくなったが、昔はよく喋り、変人扱いされたものだ。
それでも私は植物が好きだ。
彼らの言葉は人間よりもずっと深く根ざしたもので、どこか儚い。
そんな植物園の花畑コーナーに足を進め、目的のアマリリスの前で私は語りかける。
「あなたの花言葉を伺っても?」
私は腰をかがめ花たちへのインタビューを開始する。
「あら?あなた、私たちと喋れるのね、ふふ純粋で美しい子、よかったらお友達も一緒でもいいかしら」
もちろんと返す私に、彼女は嬉しそうに揺れる。
「嬉しいわ、私たちお話しするの大好きなの」
「やめてよ〜、それはあなただけでしょ〜」
「何言ってるの、あなただってゴシップになると饒舌になる癖に」
「キャー、やめてよ!始めましての人の前で」
恥ずかしそうに、嬉しそうに揺れる彼女たち、横を向きお互いに向かい合い、楽しそうに話している。
「私たちの花言葉よね、代表的なものだと、『おしゃべり』とかかしら」
彼女たちによく似合う楽しげな花言葉。
「素敵ですね、ですが、毎日喋ると飽きてしまうのではないですか」
「あら、そんなことないわよ」
彼女は強く否定するように言う。
「その日の太陽からもらう明かり、影を作って休ませてくれる雲やその形、私たちの目の前を通る人たち、虫たちの噂話。」
彼女が話すことは誰も楽しそうで、一つ一つが美しい。
「私はね、私が花であることに誇りを持っているのよ」
そう、言い切る彼女は、とても強く素敵だ。
「でもね、全員が全員そうじゃないのもわかってるのよ」
そう言って彼女は続ける。
「後ろのあの子はちょっぴり内気で、少し離れたあの子は見栄っ張り」
「私は少しだけ赤が強くて、隣のこの子はピンクちょっと先の子は、見たことないけど、白が映える子だそうよ。」
彼女の言う通り、彼女たち一人一人全く違うものを持っていて、同じものなど一人もいない。
「だから、あなたも大丈夫」
彼女はそう言って、私に微笑んだ気がする。
「ありがとうございます、美しいあなた方に感謝を」
私はそう言って、涙が溢れそうになるのを隠すように、彼女たちに一度お辞儀をした。
彼女たちも噂話で聞いているのです、あなたたちのお話は、全部聞こえていますよ。