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16 イシス視点

 

「はぁ…」


「……う!…ちょう!」


「はぁ……」


「団長っ!」


「…ん?なんだ?」


「なんだ?じゃありませんよ!外から帰ってきてからずっとその調子じゃないですか!」


「…私はいつもと変わらないが?」


「そんなわけないじゃないですか!帰ってきてからどれだけ時間が経ってると思ってるんです!?書類一枚すら進んでないんですよ!?それのどこがいつもと変わらないなんですかっ!」



 私は指摘されたことを確認するために手元の書類に視線を落とす。



「…ああ、確かに一枚も進んでいないな。副団長の言う通りだ」


「…理解していただけたのはいいのですが、それにしても一体どうしたんですか?外で何か問題でもありましたか?」


「問題…」



 副団長が言うには帰ってきてからの私の様子がおかしいとのことだが、自分はどこか悪いわけでも問題があったわけでもなく至って普通なのだ。

 ただあの人の笑顔が頭から離れないだけで…。



「そうだ。問題で思い出しましたが、例の店の店主とは顔合わせできたのですか?」


「!…ルナ殿と?」


「ん?ルナ殿というのはあの店の店主の名前なんですか?」


「あ、ああ」


「ということは無事に顔合わせは終わったのですね。これでもう団長が毎日店に行く必要がなくなるのはよかったですね」


「っ!…もうルナ殿に会えない?」


「団長?」



 副団長の言葉に衝撃を受けた。副団長の言う通り顔合わせが済んでしまった今、もうルナ殿に会いに行く必要はないのだ。しかしもう会えないと思うと胸が苦しくなった。



(これはなんだ?)



 私はとっさに胸を押さえた。



「…胸が苦しい」


「へっ?」


「ルナ殿にもう会えないと思ったら胸が苦しくて…」


「え?…ああ、そういうことですか。なんだか心配して損した気分です」


「なんだと?突然胸が苦しくなったんだぞ?もしかしたら本当にどこか悪いのかもしれないのになんて冷たいんだ」



 まさか副団長がこんなに冷たい人間だとは思わなかった。体調の悪い上司をもう少し思いやってもいいのに。

 それにしても本当にどこか悪いところがあるのではと心配になってきた。



「…仕方ない。念のため医務室に…」


「ま、待ってください!」


「なんだ?」


「医務室に行く必要はありません!」


「こんなに胸が苦しいのにお前は私を見殺しにするのか?」


「見殺しって…。団長、落ち着いてください」


「私はいつでも落ちついている」


「はぁ…。いいですか?私は団長のその症状に心当たりがあります」


「なに!?」


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