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 そして一ヶ月半後、迎えた開店初日。

 私は最初のお客さんを笑顔で出迎えた。



「いらっしゃいませ!」


「っ!」



『ルナの気まぐれ食堂』はカウンター席が五つ、四人まで座れるテーブル席が三つほどのこじんまりとした店内だ。

 早速席に案内しようとお客さんに近づいて声をかけた。



「お一人ですか?よろしければカウンター席へどうぞ」



 そう声をかけカウンター席を案内したのだが、なぜかお客さんは入り口で立ち止まったまま動かない。一体どうしたのだろうと再び声をかけてみることにした。



「あの、どうかしましたか?」


「…はっ!も、申し訳ない!」


「どこか体調でも?」


「い、いや、そういうわけではない」


「それならいいんですが…。ではこちらの席にどうぞ」


「いや、私は客ではないんだ。実は…」



 どうやらこの男性はお客さんではないらしい。話を聞くと王都に新しくお店ができた場合は騎士団の人と顔合わせをする必要があるのだそうだ。



「そういう決まりがあるって知りませんでした」


「まぁほとんどは店に看板が掲げられたらすぐに営業を始めるから決まりを知らなくても問題なく顔合わせが済むんだが…」


「も、申し訳ございませんでした!看板を付けてすぐに出掛けてしまっていて…」



 私は頭を下げて騎士団の方に謝罪をした。知らなかったとしても決まりは決まりだ。決まりを守れなかったのだから謝る必要があるだろう。



「いや、無事に顔合わせできたんだ。だからもう頭を上げてくれ」


「…ありがとうございます」


「えーっと確認なんだが、あなたがこの店の店主でいいのか?」


「あ、はい!ルナと申します」


「ルナ殿…。店の名前はあなたの?」


「そうです。分かりやすい名前がいいかと思いまして」


「なるほど。いい名前だ」


「ふふっ、ありがとうございます!あ、そうだ!」



 お店の名前を褒められて嬉しくなった私はふと思い付いたことを言ってみることした。



「もしよかったらこのお店の初めてのお客さんになってもらえませんか?もちろんお代はいただきません!…どうですか?」


「えっ」


「やっぱりダメですか?…そうですよね。騎士様は忙しいし、ましてや平民が食べるようなものは…」


「ま、待ってくれ!ダメなんかじゃない!ぜひこのお店の最初の客にならせてくれないか?」


「!本当ですか!?」


「ああ、私でよければ」


「もちろんです!じゃあすぐに用意しますからこの席に座って待っていてください!あっ!騎士様、よかったらお名前を教えてもらえますか?」



 初めてのお客さんなのだ。是非ともしっかり覚えておきたくて名前を尋ねてみた。



「自己紹介がまだだったな。私の名前はイシス。イシス・ロイガートだ。一応騎士団の団長をやっている」


「!」



 なんとこの騎士様はただの騎士ではなく騎士団長だった。



(どうりで強そうだと思った!それに騎士団長自らわざわざ確認に来てくれるなんてきっと真面目な人なのね)



 私がそんなことを考えていると心配そうな声が聞こえてきた。



「…驚かせてしまったか?」


「いいえ。ただ団長様はとても強くて真面目な方なんだなって思って」


「っ!」


「さぁイシス団長様!席に座って待っていてくださいね!はい、お水です」


「っ、魔法…!」



 団長様が座る席に魔法を使って水の入ったコップを置いた。団長様は驚いた様子だったが私は特に気にすることなく、急いで厨房に行き料理の準備を始めるのだった。


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