2.倍返しだ
2010年1月25日夜9時
眠りから醒めるように視界が開けた。
お!おお!戻って来た。本当にあの日に戻って来たんだ。
あー懐かしいな〜このガラケー、よくこんなので投資していたよな〜
そしてこのアパート!そしてこの布団!すべてが懐かしい!
哲也は30歳まで時間を巻き戻され、ガラケーで株取引をして大事故が起こる直前に戻ってきていた。
そして人生最大の過ちだった行動を思い出し、修正するための行動をとっていく。
さてさて、おお!やっぱり株価が狂っている。前世では、ここで金が少なかったから、欲張って信用取引にして大きく損失を出すことになったんだよな〜。
なぜあの時、現物で買えば良いと思わなかったんだろう。
俺は本当にバカだな。
それだけが物凄く心残りだったけど、前回のミスを踏まえて今回は現物でしっかりと購入するぞ!
石油会社の株を1000株買い注文を入れ、ガラケーには注文承りましたの文字が写っていた。
さてと、後は明日の朝9時を待つばかり。
明日は大勝負となるし、精神の転生って意外と疲れる。
夜も、もう遅いので明日に備えて眠るとしよう。
明日が楽しみすぎるぞ!必ずチャンスをモノにしてやる!
この騒動は証券会社の取引アプリが1月25日夜、誤作動をして多くの銘柄が一律30円という金額に変ってしまった出来事だ。(この出来事は実話に基いている。)
そして哲也はこの誤作動を見逃さず、できるだけ単価の高い1株60万円以上で取引されている石油会社の株を1000枚、僅か3万円で注文することができたのだった。
翌朝、早めに起きて懐かしさに浸りながら、支度をして会社に出社をした。
うわ~こんな感じだったな、懐かしき印刷会社!そして懐かしき人々!って遊んでるわけにはいかない、もう少しで9時だ。株の購入が終わった途端に売りに転じるんだ。
本当に上手く行くのか?やばい、ドキドキして来た。
前世の記憶を蘇らせながら、できるだけ自然に振舞い事が起きるのを待った。
証券取引の開始はAM9時から始まる。
9時を回りガラケーに注文約定メールが届く
きたッ!普通に7億円分の株が購入できた!ここまでは前世と同じだ。
ここからだ、ここから何事もなくすべて売り払いたい。
仕事なんてどうでもいい、前回のようなミスは絶対にしない。
仕事をしているふりをしながらデスクのパソコンで、できるだけ相場を荒らさないように株を少しずつ売っていき、ジワジワと株価を下げながらも売り尽くしていった。
午前11時を回り
よっしゃ〜、全部売り切ったー!俺は人生2回目にして勝利を勝ち取ったぞ!
買えてしまえばこっちの物だった。
市場に出せば何事もなく株は60万円以上の金額で売買されていくという結果になった。
全ての売買が完了した証券口座には6億4327万円が振り込まれていた。
前回もそうだったが7億円くらいの株が動いていても証券会社は気が付かないものなんだな。
それにしても上手く行き過ぎだよな。
でもこれも前世の記憶があるからだ。きっと世界の理から1度外れたことも関係しているかもしれない。変な邪魔が入らないし自分が思った通りに事が運んでいく。
よし、このセカンドチャンスは絶対無双してやるぞ!
前世では、ここで含み損3000万円を出しており証券会社より、早くすべての売買を終えて損失補填をしてほしいと連絡が入っていた。
特に管理部の金田という人間には天空から「ざまぁ」と言わんばかりの物言いで「これから損失補填よろしく」と言われていた。
マジでアイツだけは許せん。
他人事だと思って、数時間で3000万の負債を作ったサラリーマンの気持ちなんてわからないだろう。
体中の毛穴から変な汗が噴き出るほど動揺した。
脳が起動停止しそうな精神状態だったのに、さらに追い打ちをかけるような対応だった。
そしてこの後、前世と同じように管理部の金田から連絡が来るのを待つ。
午後4時になり携帯に着信があり、電話に出る。
「ABC証券、管理部の〜」
「金田さんでしょ」
「え!、、、あ、はい、金田です。」
管理部、部長の金田は初めて電話をする相手に名前を言い当てられ困惑を隠せない。
「金田さん、今回の株取引、絶対に譲るつもりはないから~。当局だが金融庁だが知らんけど、判断を仰いでそっちの指示に従って~!」
天空からものを言うように、できるだけいやらしく
「あーこれから大変だね〜せいぜい頑張ってくださいね~アハッ(笑)」
「あの!佐藤様、佐藤様、、、プチ、、、ツーツーツー」
金田に対し一方的に話を進め、聞く耳を持たない態度で電話を切った。
前世で金田にやられたことをそのままやり返し、6億という金額を証券会社で補填しなくてはならない事態となった。
恨みは晴らした!倍返しだ!
どこぞのリーマンドラマのように相手をやっつけて、めちゃくちゃ気分良くせいせいした。
さてと、今度は島先生と梅島先生に連絡だ。
これから、何度もかかってくる電話を全て弁護士に任せて対応してもらおう。
(前世でも両弁護士のおかげで危機的状況を脱することになっていった優秀な弁護士である。)
いろいろ片付き、お金も入った。
哲也には前世から、ある少女の才能が気になり、プロゴルファーに育ててみたいと思っていた。
今はお金があるから想像していた夢が、現実の物とできるかもしれないが、時は2010年まで戻ってきてしまっていて、その子はまだこの世に存在していなかった。
莫大な資産を作ることができたので、これから生まれてくる少女の為に、哲也は下準備だけは進めておこうと思い、次の準備に取り掛かるのであった。
さてと、ここからいろいろと忙しくなるぞ!
でも夢見た将来を実現するためにやる気満々だ!