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1.目覚め

「てつや、、、てつやッ!」


誰かが自分を呼んでいる声に目を覚ます。


「んんッ」「ここはどこだ?」


目を開けるとそこは青と白の風景が一面に広がる、まるでCGで構成された何もない世界。

足元は浮遊しているように見えるが地面のような感触があった。


一人の老人がこちらを見て立っている。


「目覚めたか、ここは精神世界だ。俗にあの世だったり魂の世界とも呼ぶ。」


事態が掴めず混乱しつつも、少しずつ脳が覚醒していった。


「あの~どちら様でしょうか?」


「ワシか、ワシは神様じゃよ」


この爺さんは何を言っているのだろう?と思ったが目の前にいる雰囲気だけはしっかりとある老人をみて、一応下手な事を言って機嫌を損ねるのは得策ではないと思い丁寧に情報収集をすることにした。


「あの~、全然、話しが読めないんですが、、、」


「実はな、お主、死んじゃったのじゃ!」


「え!、、は?、え!、、、どういうこと?」


突然の死亡宣告に頭が付いて行けずに動揺するが、うっすらと記憶が蘇ってくる。


俺は死んでしまったのか、そういえば、正月に家族団欒で餅を食べている時に喉に詰まらせて、、、普段なら当然飲み込めるはずの餅がどうしても喉を通らず、苦しいと思っているうちに意識が遠のいていった。


「なんてことだ!俺はなんてベタな死に方をしたんだ。」


「そうそう、餅を喉に詰まらせて死んじゃったのじゃ。しかしじゃ、お主の寿命は実はもっと長かった。」


「世界には(ことわり)というものがあって、良い事も悪い事も大体同じ様にやってくるんじゃが、お主は理の外に出てしまい死んでしまったのじゃ」


自分があまりにもベタな死に方をしてしまったことを呆気にとられながらも、神様と呼ばれる存在の話を聞きながら現状を分析していた。


これはあれだな!最近流行りの転生もの。

神様にあって異世界に飛ばされるアレが、ついに俺にもやってきたのだとラノベ読みの俺は一瞬で悟った。


俺はどこに飛ばされるんだろう?次の人生は勇者?

スライムはめんどいから勘弁、ガイコツも嫌だし、剣も嫌だ!


農村スローライフで、かわいい嫁をもらうとかならいいぞ!と勝手に妄想しながらも、冷静に次の事態を考え始める。


本当に異世界に行くのであれば上手く交渉をしてスタートダッシュで無双できるよう、目の前の爺さんの話を聞きながら考えを巡らす。


状況把握と妄想を織り交ぜながら考え込んでいる自分をよそに、神様の話は続いていく


「お主、生前に自伝に書いておったろう!」


(神様とは言わないが「大いなる力」もしくは「人生のシナリオ」のようなものが、世の中には存在していて導かれているんじゃないか?と感じることが私の人生では幾度もあった。)


「これを書いているのを見て、こやつ、只者ではないなとワシは感じたのじゃ。」



そういえば自分の人生を振り返ると、あまりにもタイミングが良すぎたり、悪すぎたり、まさしく波乱万丈の様々な経験をした事で、「大いなる力が世界には存在しているのではないか」という、ちょっと中2病のような思いから自伝にもそう書き残していた。


そして見るからに雰囲気を出していて、白髪に白い髭、年老いた風貌、手には魔法使いが持っていそうな杖を持った、自分の想像通りの神様に質問をしていく。


「それで寿命があったのになんで俺はことわりの外に出て死んだのですか?」


「う〜ん、ミスった」


「ミスった?どういう事でしょうか!」


「実はスマホで『なろう』に書いてある、お主の自伝を読んでいて、トイレに行こうとした時に、ことわり装置に足を引っ掛けて、、、うん、なんというか、ほんのちょっと!ちょっとだけ壊しちゃったのじゃ」


「それで、お主の自伝を読んでる最中だったからの!お主の精神と繋がり、魂をことわりの外に出してしまい寿命が0になっちゃったんじゃ」


大体、筋書き通りのアホ設定で起こるトラブルだなと思いながら、お約束のように同じ熱量で驚いて見せる。


「ウソでしょー、じゃあ神様のせいで俺は死んだということ?転生するとか浮かれていたけど!俺には家族だっていたんだ!そんな、あ、やっちゃった!みたいなので殺すなよー!バカなの?」


「でも大丈夫じゃ、ことわり装置は直したし、世界の平和は保たれた。」


「いやいや!世界は守られたかもしれんけど、俺は死んじゃったでしょ。奥さんも娘もどうすんだよ〜!やっぱりバカなの?」


「あれ?やっぱり怒ってるかの?」


「当たり前だろ〜!こうなったら神様とて許さん!ギッタンギッタンにしてやる」


「哲也!待つのじゃ、早まってはならん。ことわりの外に出た者を戻すのはルール違反なのじゃが今回はワシのミスじゃ。哲也の自由に戻りたい所まで精神を送ってやろう。」


「ん?それってどういうこと?転生して異世界じゃないの?」


「お主、自分の人生を振り返り、自伝を書いておってよかったの〜。」


「時代と情景が事細かに書かれておればワシがその時を探して、お主の精神をその時代のお主の体に送ってやるという事じゃ。」


ひとしきりアホ設定で起こった顛末のやり取りをしながら自分がこれから転生ではなく、人生のやり直しができるということに驚いた。


「神様!それは人生のやり直しができるってこと?!こっちのパターンかよ!異世界も捨てがたいけど、人生やり直しの方が無双できるじゃん!」


心の声が駄々洩れだが、人生のリスタートに頭をすぐに切り替える。


「しかしある程度、時と場所が鮮明に書いてないと送ることはできん。」


「なるほど〜、時と場所が鮮明に書いてあるところか。」


「無双できそうな場所はあそこしかないかな。神様!自伝に書いた証券トラブルに巻き込まれた、あの時!自伝に書いた23.窮地に陥る2010年1月25日に戻してもらうことはできる?」


「ここなら問題ないぞ。ではこの時代のお主の自宅にいる時に精神を送るぞ!」

「では、セカンドライフを楽しむのじゃぞ!Have a Nice Day!」


こうして佐藤哲也は自伝に書かれた本当の人生とは異なる人生をリスタートさせることになる。

果たして2回目の人生はどうなるのか?



2010年1月26日

現実の世界では証券トラブルに巻き込まれて数億円の取引をしてしまい、わずか数時間にして3000万円の損失を出してしまうという信じられない出来事が起こっていた。


記憶を持ってやり直しをすれば証券トラブルを回避できるのか?

それとも、、、、


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