前編「雨の日の出会い」
私は、地の国の王太子セレット、セレット=イェンジェル。
6月、梅雨の時期になり、連日のように雨が降る。
天の恵み、干上がり気味だった私の国の井戸も、田畑も潤う。
庭園のカエル達も、喜んでいるように鳴いている。
だが、こう雨天ばかりだと気が滅入る。
私は、書類にサインをしながら、城の仕事部屋の窓から外を見ていた。
すると、空から薄い羽が生えた、妖精のように可憐な女性がバルコニーへ降りて来た。
私が驚いていると、彼女は窓をコンコンと叩いて、私に微笑みかけて来た。
「すみません。凄い雨ですね。少し、雨宿りさせていただけますでしょうか?」
「雨宿りくらいどうぞ。外は冷えるでしょう。よろしければ、中に入りませんか」
私は、彼女に興味があり、部屋の中へと招き入れた。
「ありがとうございます。わたくしは、雨の国の公女リゼリア=レイン。あなたは?」
リゼリアは、タオルで髪や身体を拭きながら私に問い掛けた。
「私は、この城の王太子、セレット=イェンジェルです。」
私とリゼリアは、話しをしているうちに打ち解けて来て、会話が弾む。
くしゅんとリゼリアが、くしゃみをした。
「大丈夫ですか?リゼリア嬢。風邪を引きますよ。さ、これを」
私は、リゼリアに自分の上着を着せた。
「ありがとうございます。セレット様。お優しいのですね」
先程まで、降っていた雨は小降りになり、雲間から陽が差し込んできた。
「ああ、もう、雨が止んでしまいますわ。雨の国の公女は、雨の日だけしか地上に降りてはいけない掟があるのです」
私は、驚いて彼女のきゃしゃな手を握った。
「貴女と離れたくない。この国にずっと、いてくれませんか?」
私と彼女は頬を赤らめて、見つめ合った。
「それは無理です。ですが、次の雨の日には必ず、またここへ来ます。その時は、わたくしをお嫁様にしてくださいませ」
「承知した!必ず、リゼリアを私の妻にしよう」
私とリゼリアは、熱い抱擁をし、口づけをした。
リゼリアは、私と固い約束をして、雨が止むのと同時に空に存在する雨の国へと帰って行った。
――“雨よ、降れ。”一秒でも、早く貴女(貴方)に逢いたい。――
〇「雨の国の公女」登場人物紹介〇
セレット=イェンジェル
地の国の王太子。
リゼリア=レイン
背中に羽を持つ雨の国の公女。
後編に続きます。