お迎え
「あ、久しぶり」
「――え?」
急に話しかけられた声に戸惑って振り返ると、昔の同級生がそこにいた。
「覚えてる? 同じ学校だったけど」
「ああ、うん」
昔の同級生に街で偶然会うなんて、そう珍しいことでもないはずなのに、不思議な違和感があった。
この場所で会って話をしていることにも、それほど関わりがあったわけでもないのに、やけに親しげな様子にも、戸惑いが強まった。
「最近どう? こっちの方に来てるのは聞いてたけど」
地元では、外に出ていく人は少なかった。だから、こうして余所の場所で地元の知り合いに出会うことは少なく、それが違和感の原因かもしれないと思った。そして、地元を離れたこの場所で、昔の知り合いに会ったのが懐かしかったから、特に親しくしていたわけではないけれど、話しかけてきたのだろう。
当たり障りのない世間話をしながら、そう考えることで違和感と戸惑いの原因を納得させた。それでも、不思議な違和感は消せなかった。
一頻り世間話をして、そろそろ別れようかというころ、それが別れの挨拶だとでもいうように一言だけ残して去っていった。
「もうすぐ、だから」
その言葉で、話しかけられたときからずっとあった、違和感と戸惑いが理解できた。何故、昔の同級生と話をすることにこれほど違和感があったのか、何故、やけに親しげな様子だったのか、その理由が、すとんと胸に落ちてきた。
* * *
「もうすぐ、って言っただろ?」
「ああ」
再び話をしていた。今度は違和感も戸惑いもなく、自然と話をしていた。
白と黒と静かな花々に飾られたその場所は、同じように白と黒を身に纏った人々で占められていた。その中で、二人だけが色鮮やかな服を身に着けていたが、それを見咎める人はいなかった。