剣聖より強いスキル
「スキル発動――《0ターンキル》」
「ギャウウゥン⁉」
俺がスキルを発動したのと同時、目の前にいたレッドウルフが悲鳴とともに倒れた。
大きな傷を負ったわけでも、致命的な攻撃を受けたわけでもない。
ただただ問答無用で、スキルを発動した瞬間に倒れただけだ。
「こ、これで五回目か……」
「やっぱり強すぎない? そのスキル」
ベール村への道すがら。
俺たちは念のためウルフの素材を回収しつつも、そんなやり取りを繰り広げていた。
「だって他の魔物たちもたった一撃で倒れていったじゃん。戦うこともなく」
「まあ、そりゃそうなんだが……。魔物自体はそんなに強くないしな……」
そう。
フラムの言う通り、俺たちはここまでの道のりで、計四体の魔物と戦うことになった。
もちろん街道のど真ん中なので、そんなに強い魔物とは遭遇してないけどな。
ウルフであったりゴブリンであったり、初心者でも手軽に狩れるような魔物たちと遭遇してきたわけだ。
そしてその戦闘で、俺は一度も剣を抜くことがなかった。
謎のスキル《0ターンキル》――これを発動した瞬間、すべての魔物がその場に崩れ落ちたからである。
剣を用いる必要もない。
魔法を発動する必要もない。
ただただ問答無用で勝利を導くこのスキルに、俺は困惑していた。
これが弱い魔物ゆえにできていることなのか、もしくは通用しない魔物もいるのか、そもそもこのスキルが本当に《問答無用で勝利できるスキル》なのか……
それは不明だが、いまのところはすべての魔物を瞬殺できている。
これについては今後、色々と突き止めていく必要がありそうだな。ただの《外れスキル》だと思いきや、とんだ上位スキルにあたるかもしれない。
「やっぱりユノのスキルは最強なんだよ! 最強・オブ・最強!」
両手で大きな丸をつくり、なんとか強さの表現をしようとするフラム。
小柄な彼女がやっても全然強さが伝わってこないんだが――まあ、言いたいことは伝わってきた。
「あ、いま鼻で笑ったでしょ⁉」
「笑ってない笑ってない。おまえは変わらんなって思ってさ」
片や外れスキルを授かった俺と、片や第二王女のフラム。
ちなみにフラム自身も《賢者》という上位スキルを授かっており、ほぼすべての属性の魔法を扱うことができる。
二人で戦ったらたぶん俺が負けるだろうし――
立場でもスキルでも、俺たちには大きな差がついているはずなんだけどな。
それでもこうして懸命に俺をフォローしてくれているフラムは、正直言ってかなり有難い女性だった。
「さて……そろそろ着くな」
王都からベール村までは、それほど距離があるわけではない。
数時間ほど歩いたところで、ベール村の外観を望むことができた。
「そういえばフラム、大丈夫なのか? そのままの服装だと絶対にバレると思うんだが……」
「もちろん、準備は万端よ♪」
そう言ってリュックを降ろすフラム。
変装用の服装をたくさん用意してきたのか、サングラスやら帽子やら……沢山の衣装が詰め込まれているな。その用意周到さには思わず呆れかえってしまうもの、これならたしかに身バレの心配はあるまい。
「よし……じゃあ行くか」
俺はフラムに頷きかけると、そのままベール村へと向かっていった。
★
ちなみにだが、第二の人生では冒険者になってみようと思っている。
これまでの人生において、俺はずっと剣の修行のみを続けてきたからな。
他にこれといった特技もないので、冒険者として生計を立てていくのが無難だと判断したためだ。
ちょうどベール村にも小さな冒険者ギルドがあるようなので、さっそくそこを来訪してみたのだが――
「う、うわぁ……」
なんとなく想像はしていたが、ギルド内は非常に猛々しい雰囲気に包まれていた。
よほど新参者が珍しいのか、じろじろと睨みつけられている。
(フラム、これは……?)
(わ、わかんない……。どうしてこうなってるんだろ……)
事前にフラムから聞いていた情報によると、ベール村は本来のどかな村。
多くの自然に囲まれており、村人にも優しい者が多いと聞く。
実際にもベール村そのものは非常に穏やかな雰囲気で、王都とはまた違った趣に、心が安らぐ感覚を覚えていたものだが――
このギルド内だけが、異様に重苦しい空気を放っている。
「ふぅ……」
だが、もちろん臆してはいられない。
いくら《外れスキル》を授かった者といえど、俺は何年も剣の修行に打ち込んできた身だ。冒険者登録する資格くらいはあるだろう。
そう思いつつ、俺は緊張感とともに受付嬢に話しかけた。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが」
「あ、はい……。わかりました」
新米なのか、辿々しい様子で受け答えする受付嬢。
「それでは名前を教えていただけないでしょうか。あと年齢も……」
「名前……」
少し抵抗感があったが、さりとて偽名を使うわけにもいくまい。
どうせ後でバレるだろうしな。
「ユノです。ユノ・オルランド……18歳です」
「あ、はいわかりました。では次は……」
どうやら《新米受付嬢》だったことに救われたようだな。
彼女は俺の名前に違和感を抱く様子もなく、次の手続きを進めようとする。
が――
「おやおや。どこかで見たことあると思ったら……《外れスキル》所持者のユノ・オルランド君ですか」
ふと悪意に満ちた呼び止められ、俺は嫌な予感を抱くのだった。
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