スキルの秘密
「あ……そうだ」
ベール村に向かう前に、どうしてもやっておきたいことがあった。
No.3の素材回収だ。
さっきは《デスライガー》という謎の文字列が浮かんできたが、こいつの情報はほとんど明るみになっていない。ここでこいつの素材を剥ぎ取っておけば、きっと王国の研究にも役に立つだろう。
たぶん。
「ううむ……」
そうしてNo.3の素材を回収していると、フラムが不思議そうな表情で俺を見つめてきていた。
「なんだ? 俺の顔になにかついてるか?」
「ううん。そうじゃなくて……ユノ、どうやってこの魔物を倒したのかなって……」
そうか。
たしかにそうだな。
すっかり忘れかけていたが、《0ターンキル》というこのスキルも、いまだ謎に包まれているまま。
さっきまでは外れスキルだと思っていたし、ぶっちゃけどうでもよかったんだけどな。
あのNo.3を瞬殺したとなると、俄然興味が湧いてきた。
「なんか……えっとね。さっきのユノを見ていると、古い伝承を思い出したっていうか……」
「は? 伝承?」
「うん。ユノもわかるでしょ? 千年前の魔王の伝説」
「ああ。たしかにわかるが……」
たしか《学び舎》で教わった記憶があるな。
凶悪な力を持つ魔王が突如現れ、そして人々を立ちどころに瞬殺していったと聞いたことがある。
――瞬殺。
まさか。
「おいおい……さすがに飛躍しすぎじゃないのか?」
「うん。私もそう思うけど……敵を瞬殺するスキルなんて、それこそ聞いたことがないし……」
「…………」
「《剣聖》スキルを授かったベルフはたしかに強いと思うよ。だけどユノのスキルが、そもそも戦う必要がなくて、問答無用で強制勝利するスキルだとしたら……それこそすごいことになりそうじゃない?」
「…………」
フラムの言っていることはあまりにもスケールが大きく――現実味がない。
けれどたしかに、さっきNo.3は瞬殺されたわけで。
もしこのスキルが問答無用で勝利するスキルなのだとしたら、それこそ剣や魔法のトレーニングでは絶対に到達できないような、恐るべき能力だと言える。
「ふふ……ユノ。これは大きなチャンスかもしれないよ?」
「は? なにが」
「まだスキルの全容はわからないけど、そのスキル、絶対に《剣聖》より強いじゃん。あの間抜けなガイアを含めて、コテンパンにできるかもしれないよ?」
「いやいや、さすがにそこまでは……」
たしかにNo.3を仕留めることはできたが、これだけで判断するのは次期尚早だろう。これから少しずつ、この《0ターンキル》の謎を紐解いていきたい。
それに。
「もういいんだよ……。王都には戻る気になれない」
「え……?」
外れスキルを授かったというだけで、俺を迫害してきた王都の住民たち。
たとえこの《0ターンキル》の強さを証明できたとしても、またあそこに戻る気にはなれなかった。
むしろ――
……ソウダ。人間ハ醜キ存在ヨ――
……殺セ。愚カナ人間を鏖ニセヨ――
「……っ」
ふいに脳裏に浮かんできた声に、俺は目を見開く。
なんだいまの声は。
ドス黒い化け物のような……まったく聞いたことのない声だった。
「ユノ? どうしたの?」
「いや……すまない。なんでもないんだ」
やっぱりフラムには聞こえていなかったみたいだな。
心配をかけるわけにはいかないので、ここは黙っておくのが懸命だろう。
「結局道草を食っちまったな。剥ぎ取りも終わったし、そろそろベール村に行くか」
「うんっ♪」
そう言って、再び俺に腕を絡ませてくるフラムだった。
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