彼女に釣り合う男になるために
一方その頃。
ベール村にて。
俺は目前の巨大な屋敷を見上げながら、あんぐり口を開いていた。
「こ、ここに住まわせてもらえるんですか!?」
「ええ。もちろんですよ」
もしかしなくても、オルランド家の屋敷と同程度には大きいのではなかろうか。大きな外壁のなかに建造物がいくつも存在し、さながら大貴族の屋敷である。
「一応、私の土地ではあるのですがね。しかし正直持て余しているのが現状でして……それでしたら、あなたがたに住んでいただきたいと思っているのです」
そう言うのは、ここまで案内してくれたギルドマスターだ。
一通り話し合いも終わり、どこに寝泊まりしようかという話題になったあと――ここまで連れてきてくれたのである。
「で、でもいいんですか? かなり立派なお屋敷なのに……」
「いえいえ、いいのですよ。むしろあなたがたはどちらも高貴な身分でいらっしゃる。こんなみずぼらしい屋敷でいいのかと、こちらが心配になるほどですよ」
「みずぼらしいって、そんな……」
たしかにオルランド家の屋敷には召使いがいっぱいいたし、毎日のように清掃をしていてくれたからな。
その屋敷と比べると若干汚れが目立つものの、それでも充分なほどに豪勢な屋敷だ。
フラムと二人で住むには……あまりに大きすぎるが。
「ありがとう、ギルドマスター」
フラムはにっこり微笑んで言った。
「そういえば、あなたの名前聞いてなかったわね。なんて言ったっけ?」
「おっと。これは大変失礼致しました」
ギルドマスターは頭を下げると、改めて俺たちを見渡しながら言った。
「私はルイス・ヴェストナと申します。ご存知の通り、ベール村でのギルドマスターを務めておりますので……なにかお困り事がありましたら、いつでもお話しくださいませ」
そうしていったん、ギルドマスター改め、ルイスとは別れることとなった。
★
「わぁ……ほんとに大きい……!」
屋敷の扉を開けた瞬間、フラムが黄色い声をあげた。
「こんなにいいところに住まわせてもらうなんて、私たち本当に幸せ者だね!」
「はは……。そうだな」
ちなみにだが、テーブルやベッド、お皿や料理道具などなど。
いわゆる生活必需品については、すでに取り揃えられていた。わざわざ買い出ししに行かなくていいのも、嬉しいポイントだな。
「ふふ♪」
フラムは一通り屋敷をぐるっと見回したあと、最後に俺の手をぎゅっと握った。
「二人で同居生活……。私たち、本当に夫婦になったみたいだね♪」
「はぁ……。おまえはまたそんなことを……」
村人たちに聞かれていたら大事故になる発言だった。
「たしかに俺たちはこうしてよく遊んだけど……でも、それも昔の話だ。俺は《外れスキル》所持者で、おまえは王族。世間的に見たら、大きな溝ができたのは間違いない」
「…………」
「だから滅多なことを言うなよ。俺はともかくとして、おまえの名に傷がつくぞ」
「いいもん」
「は?」
「私の傷なんてどうでもいいの。ユノと一緒にいられれば、それだけでいいんだから!」
「どわっ!」
どさっと。
勢いよく抱き着かれ、俺は思わず地面に仰向けになった。
目の前にはフラムの可愛らしい顔があった。
「…………」
「…………」
どれくらい時間が経っただろう。
たった数秒ほどか、もしくはもっと時間が経ったか。
俺たちはしばらく見つめ合っていた。
「……ふふ、ごめんね。急にびっくりするよね」
フラムはそこで一瞬だけ切なそうな表情を浮かべると、ゆっくりと身を引いた。
「わかってる。ユノは優しいから……私のためを思ってくれてるの、よくわかってるよ」
「…………」
「でも、これだけは約束して。もしユノがSランク冒険者として有名になって、汚名を返上することができたら……そのときは……」
「フラム……」
俺はゆっくりと起き上がると、ぼそりと呟いた。
「ああ……わかったよ。俺も頑張る。おまえに釣り合う人になれるように……な」
「あ……」
そこでぱあっと表情を輝かせた彼女の表情を、俺は一生忘れることはないだろう。
「うんっ♪」
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