Sランク冒険者
「え⁉ いきなりSランク冒険者ですか⁉」
――冒険者ギルド。その応接室にて。
ギルドマスターから突如告げられたその提案に、俺はぎょっと目を見開いた。
「ええ。あなたなら適任かと思うのですが……いかがでしょう」
真向いに座るギルドマスターが、テーブルに両手を置きながら言う。
「しかし……俺なんて《外れスキル》を授かった人間ですよ。そんな奴がSランク冒険者になるなんて……」
「ふふ。だからですよ、ユノ殿」
「は……?」
「ニヘラムに勝利し、No.3さえも瞬殺した方が迫害されるのは間違っています。あなたは《外れスキル》所持者じゃない。それを世間へ知らしめるためのSランク冒険者昇格です」
「あ、賛成!」
それを聞いたフラムが、にんまりと笑いながら挙手をする。
「オルランド家はスキルの概要を確かめもしないで、ただ名誉のためだけにユノを追い出したのよ? ぎゃふんと言わせないと駄目だって」
「ぎゃふんっておまえ……」
たしかに父ガイアは、俺が《外れスキル》を授かった瞬間からガラリと態度を変えた。これまでは自慢の息子とさえ言ってくれていたのに、それがスキルひとつで一変したのだ。
そして代わりに父に愛されるようになったのが――弟ベルフ。
あいつは生来怠け者で、ずっと剣の修行をサボってきた人間だ。
《剣聖》はたしかに最強格のスキルだと思うが、しかし、それを授かったからといって人柄が変わるとは正直思えない。
「それにね……ユノ」
いまだ戸惑う俺に向けて、フラムが続けて言葉を発した。
「私はベルフのことが昔から苦手で……。ある程度の歳になってからは、私の身体をじろじろ見つめてくるようになって……」
「…………」
「そんなベルフが《剣聖》スキルを授かったいま、私の専属護衛は――誰になると思う?」
「そうか……たしかにそうだな……」
オルランド家は代々、剣聖のスキルを継ぐ家系として活躍してきた。
その実力を買われて王族の護衛を任されているくらいだし、俺も順当に剣聖スキルを授かることができれば、フラムの専属護衛になる予定だった。
しかしその俺は《外れスキル》を授かり。
そして弟のベルフが、代わりに《剣聖》スキルを授かることになった。
このままでは、誰がフラムの護衛を務めることになるのか――
その想像は容易にできるだろう。
「もしかしておまえ、王城を飛び出してきたのも……」
「……うん。そういうこと。オルランド家に抗議する意味でも、こうやって出てきたってわけ」
……マジか。
そこまで俺のことを考えていてくれるのは嬉しいが、さすがに申し訳なくなるな……
「ふむ……。なるほど。そういうことでしたか」
一連の話を聞いていたギルドマスターも、顎をさすりながら呟く。
「たしかに、昨今の《スキル絶対主義》には私も疑問を抱いているところでした。スキルの強弱だけで人の扱いが変わる状況は、はっきり言って異様と言うしかありません」
「そう。そういうこと」
フラムは小さく頷くと、再度俺を見て言った。
「だからユノに示してほしいの。たとえ《外れスキル》で馬鹿にされている人がいたとしても、それは違うんだって」
「…………」
「……だめ?」
上目遣いで聞いてくるフラムに、俺は小さく息を吐くと。
改めてギルドマスターに目を向け、決意とともに告げた。
「まだまだ未熟者ではありますが、このユノ・オルランド、Sランク冒険者に就かせていただこうと思います」
「おお……! そうですか。ありがとうございます」
そう言って深々と頭を下げるギルドマスター。
「やったぁ!」
フラムも表情をほころばせ、嬉しそうに片手を掲げている。
(ふふ……しかしフラム王女殿下。あなたもお優しいですな。本当はただ……ユノ殿が迫害されている姿を見たくないだけでありませんか?)
(あ。バレた?)
(まあ、これでもそれなりに生きておりますからね)
(あはは……でもユノには内緒よ。彼は自分の利益なんて無視しちゃうから)
(ええ。承知しておりますよ)
なにやらコソコソと話し合っているフラムとギルドマスターだった。
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