第1章-6
一部修正致しました。
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-ユーラス国南部-
整備された街道から離れ、未整備の道を少年は一人で歩いていた。
「さすがにこの辺りは人がほとんど通らないんだろうな」と独り言をこぼしながら、地道に歩みを進める。少年-先日勇者に任命された者-はこれまでの勇者がたどったいくつかのルートを吟味した上で、先ずは南下しルピアース山脈を目指していた。北部ルートは山脈、マハーマの山々が連なっており幾多の人々が命を落としている死の山脈だ。極寒の上、傾斜がかなり勾配で豪将と呼ばれた5代目勇者のみそのルートを辿ったとのことだ。東部に進み南下するルート、東部から船旅にて東側の大陸に向かう道程が残されていたが、昔のおとぎ話で聞いた海にまつわる話が怖くて…というのは内緒にして、今回選んだ南下する道のりで旅を始めたのであった。
「なんでこんなことになったんだろうなあ」と愚痴を零す少年。今回20年ぶりに開催されたユーラス国武闘大会。魔王が生まれた際に開催されることを知ったのは後からであったが、自らの力量を試す上で挑んだこの大会で優勝したまでは良かった。優勝者には100ゴルド-年間2ゴルドあれば一般的な暮らしができる-に目が眩んだことは認めよう。ただ不意打ちで謁見の間まで呼ばれた挙句、勇者の称号をもらい、あまつさえ実は旅の軍資金としての賞金だったなんて気付いた時には後の祭りだ。そう思い出しながら、これまでの道のりを振り返る。ユーラス国首都オイコットにて資金を受け取り、丸一日呆然としていた。逃げることも考えたが、故郷の両親のことを考えると躊躇われた。それはそうだ。勇者誕生はすでに喧伝されており、逃げたとしても親族が肩身の狭い思いをすることになることは明白だった。どうしようもなく、二日目以降は旅支度を整えるべく、武器と防具を新調し、保存可能な食料を携えて南下を始めたのだった。
大国ユーラスの領土はかなりの広さであるが、整備されている場所はやはり限られており、首都オイコットを中心として7つの都市が周りを囲むように林立しているが、それ以外の場所は轍があれば良いくらいで草木が生い茂る場所も少なくない。旅路も七日目になり早朝にユーラス国南部都市、ワトシーンを出立し轍もなくなってきた頃合いであるが、ルピアース山脈まではまだ2倍程度の道のりが残っている。
「大体、魔大陸まで2か月はかかるのにその間どうしろと」
そう思いたくなる気持ちが独り言としてこぼれてしまう。ルピアース山脈まであと2週間程度はかかるとして、そこから山脈沿いに東部に進路を取るが、魔大陸との領土の境にあるミカサニの森は踏破に困難が予想される。ミサカニの森までは小さな村が点在しているので頼るとして、それからの道のりは衣食住すべてが安全から遠ざかる。
「大金があっても持ち腐れになりそうな上に魔大陸情報なんてほとんどないのに…」
ため息をつきながら始まったばかりの旅を憂いに思う少年であった。
初投稿となります。
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