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ハオトの魔王  作者: 月
6/38

第1章-5

一部編集致しました。

「御客様に失礼ですよ」


「誠に失礼ながら、急を要する案件につき発言の許可を頂ければと存じます」


「あの、私のことは気になさらずに」


 ふーとため息をつき次の言葉を示すようにとバカラは合図を送る。


「感謝致します。先程近隣のジプターにてエルフの者が話をしていたのですが。勇者が現れたとのこと。同国エルフの者達は大変慌てておりました」


「些末なことではないですか。リト様不躾な侍女についてお詫び申し上げます」


「いえいえ。…すみません…、勇者ってどういうことですか?」


 リトは事態が飲み込めず率直に尋ねる。


「ここより大陸の北西に位置するユーラスという国から定期的に魔大陸へ送り込まれる者の呼称です。類稀なる力を有することから魔大陸では危惧されておりますが、私どもからすれば無関係の事象です」


 そう何事もないように語るバカラであったが、侍女と呼ばれたデーモンは言葉を返す。


「恐れながら、そのように口上するのは侯爵様だけです。子爵様や男爵様を含めカーメリーでも勇者の件は見過ごせない事案でございます」


「ピアニッシモ。あなたは大変真面目に仕えていますが、この勇者については兼ねてより切り捨てて良いと伝えていた筈ですが」


 そう問われるも、侍女ピアニッシモは譲らず。


「侯爵様の身の安全が全てです。杞憂と後に語れるのならば、些末なことでもこの身を費やせればと思案してのことです」


「やれやれ、分かりましたよ。して、勇者は今どの辺りですか」


「10日程前にユーラス国南部の辺境を通過。そのままルピアース山脈まで南下し山脈沿いに東へ向かう模様です」


「ふむ。これまでの勇者が最も使う道筋で、ミサカニの森を目指す道を通っているようですね。ふむ…静観で問題ないでしょう。動きがあれば報告してください」


「は!」


 言葉を最後に侍従が離れ、侯爵はやれやれといいった様子で「気配りが過ぎる侍従でして」と言葉少なく呟く。数刻置き「この件も含めてご説明しましょう。そうですね、先ずは魔法から話しましょうか」そうバカラが話し手を掲げると、うっすらと光り手のひらの上に氷の粒が渦巻く。


「こちらが魔法です。自らの魔力を行使しながらイメージを膨らませて具現化するのです。もちろん、より広範囲となれば相応に魔力を消費しますので適度な加減は必要ですね」


 あの光の部分が魔力で、あとは想像力とのことだ。試しに目を瞑り手のひらにイメージする。目の前の現象を手本としながら、今まで過ごしてきた感性を頼りに想像力を膨らませる。目で見てイメージするよりこちらの方が断然落ち着いてできる。見える世界に感動しつつも、見えてなかった世界で頼りにしてきた感覚が遥かに研ぎ澄まされているので、正直見る作業には慣れるまで暫くかかりそうだと感じる。


 そう思いながら右手に向かって、体の中から水が少しずつ流れ込むように意識する。そしてこの音は…「ソの音」そう小さく呟き目を開ける。対象に向かい合った状態で、相手とわたしとで氷の旋毛風を形成している。


「…お見事です。一回で相手と同じ魔法を作り出す技量や魔力の繊細な操り方は言葉だけでは身に付きません。日々研鑽し漸くたどり着ける領域ですが、…僅かな説明だけでここまでできる者は私の知る限り数えるほどしかおりません」


 400年生きたというデーモンからここまで褒めてもらえば、多少誇張表現があるだろうけど素直に嬉しい。自分の行為に対してこんなに素直に褒めてもらったのはいつ振りだろうか。手を下ろしてじんわりと目に涙が溜まってくる。


「ど、どうされましたか」と慌てたバカラから声がかかるが、ゆっくりと目を瞑り気持ちを落ち着ける。


「ううん。大丈夫。褒めてくれてありがとう。とてもうれしかったわ」そう伝えながらバカラを見つめる。


 銀色の瞳がこちらを覗き込んでいる。このデーモンは何かを隠しているが、たぶん大丈夫。隠していること以外で嘘はついていないし、信用しても良さそうだとリトは感じたのであった。


初投稿となります。

誤字、脱字、慣用句の間違った使い方、矛盾点などのご指摘やご意見、ご感想を頂けましたら幸いでございます。

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