第1章-4
―カーメリー執務室―
「推測ですが…。お話を聞くに確かにお嬢…リト様は死んでしまったのでしょう。状況判断ではございますが。本来命が消え、別の新しい命に紡がれ、それまでの記憶はなくなるという話は聞いたことがあります。稀に新しい生命となっても、生前の記憶を持って生まれ変わることがあるそうです。ただ、今回の内容ですが、リト様の生きていらっしゃった様子とこの世界とで大きく異なる様子が見受けられます。これはそもそも別の世界で死してこの世界に生まれ変わったのでは、と考えるのが可能性として高いのではないかと」
神妙な面持ちでバカラはそう答え、彼女は内容を吟味する。
「そしてお嬢様と呼んだ理由についてですが…あまりにも美しかったからに他なりません」
「はあ」
「その瞳の色…。その色は…400年程生きてきた私でも見たことのない色です。その瞳を宿すあなた様に見惚れてしまい、自ずと出た言葉でございます」
どうやらこの人、もといデーモンは400年生きているらしい。かなりの長命だが寿命はどれくらいなのであろうか。そして瞳の色とのことだが…、そもそも色はおろか、生前視えたことがないわたしにとっては視える事実が不思議な感覚だ。あの時見えたきれいと感じたものをバカラは感じ取ったのだろうか。それなら尊敬の念がわくのは分からなくもないが、自分に向けられたものと思うとかなり気恥ずかしい。それに…このデーモンは何かを隠している。
はっと思い出す。先ずは現状の確認からだ。あの氷の粒と、自分の手から出てきた炎。現実世界では見たことはそもそもないのだが、聞いたことないものだ。この姿の事といい気になることはきりがない。
「あーと。バカラが出していた氷の粒のようなものだけど」
「申し開きもございません」途端に腰を深く折り曲げる。
「あー違うの!責めてるんじゃなくて、その、気にしないで。そうじゃなくて、私の手からでた火みたいなのとか、なんかきらきらしてたのとか何かなって。そもそも何で生まれかわって、えーとこの場合転生っていうのかな?転生してしかもこんな姿なのかな」
バカラはばっと顔を上げる。
「魔法のことですね。こちらは後ほどゆっくり話すとして、転生と仰るリト様の生まれの件については私でも分かりかねる案件です」
「そうよねえ」
「以前の世界ではどうやら別の種族だったとのことですが…」
「歓談中失礼致します」
唐突に別の声が聞こえると、バカラの傍に藍色がかった黒髪の女性が姿を見せたことにリトは気付いた。
初投稿となります。
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