第1章-3
―?執務室―
噛みしめる様に事態を確認する彼女。意識を失いーおそらく死んだのではと思いながら-気が付けば今までいた世界とは明らかに違う世界で意識が蘇り、しかも今まで視えなかった世界を目の当たりにしている。そして…自分の姿が明らかに普通の人とは異なる姿を現わしていることを何度も確認する。以前友人たちがコスプレやらなんやら話していたことを思い出す。見ることは叶わなかったがたぶんこんな感じだったのであろう。そう思い出す彼女はデーモンと呼ばれる種族に生まれ変わり現在に至るわけだが。
「お嬢様の姿は私が見たどのデーモンよりも美しい」と話すのは同じデーモンのバカラである。デーモンとは、カーメリーと呼ばれる大陸-これは大陸というより空間のような概念なのだが-に住む種族とのこと。ここにはデーモンの他、アンデッド、首無し族、デビルなどの種族が住むようである。諸々説明を受けながら、自分の最後を思い出してしまいつつ、現状に至る彼女であったがふと気になることがあった。
「あのー、バカラさん」
「バカラで結構ですよ」
「呼び捨てはちょっと…」
「お気になさらずに。お嬢様から呼ばれることは名誉以外の何物でもございませんから」
こんな調子でなかなか話が前に進まないが、だんだんとやり取りにも慣れてくる。どことなく生前の自分の兄さんと近い雰囲気を感じる。
「わかりました。ではバカラ。わたしはお嬢様ではなくリトと呼んでください」
「畏まりましたリト様」
「様は要りません」
「滅相もございません。お嬢様といえでもこれは譲れません」
「…わかりました。それでは、なぜ私をお嬢様と?あとわたしは死んでしまったのでしょうか?」
初投稿となります。
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