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君と僕と未来を  作者: 三宅健吾
1/1

1話 始業式


【2040年12月24】


「緊急警報!緊急警報!住民の皆さんは速やかに避難してください!もう一度言います!速やかに避難してください!」



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【2040年4月8日】


『今日4月8日にmindcompany社によって、mindparkがオープンされました。

mindparkでは近年話題のマインドパワーが使えるというアトラクションが多数建設されており、

小さなお子さんから、お爺さんやお婆さんと老若男女が楽しめるとの事です。

また、現在入場制限を実施しており、既に1年後までのチケットが完売との事で、

気軽に遊びに行くことはまだまだ先の事となりそうです。

さて、鈴木さん。

マインドパワーが使えるとことで近年話題になりましたが、どうお考えですか?』

『そうですね〜、マインドパワーという事で脳波で機械を操る訳ですから小さなお子さんやおじいちゃんおばあちゃんには少し危険じゃないかな、と思いますね』

『なるほど、確かに言われてみると危ないかも知れませんね。

斎藤さんはどうお考えですか?』

『はい、私はむしろ逆の意見ですね。

脳を使うと言うことで子供には考える力や、お年寄りには認知症予防とこれからの未来での期待、というものが強いですかね。』

『なるほど、未来で━━』



「凄いわねぇ最近の技術って。家から近いじゃん優人(ひろと)行ってきなよ。」

「お母さん話聞いてた?1年後までチケット取れないんだよ」


朝7時、今日から新学期だっていうのに去年と何ら変わりの無い朝のニュース番組を見る。

何ら変わりの合ったらそれは世界が滅びる時ぐらいだろう。

食パンに苺ジャムを塗りたくり、口に放り込む。


「あらそうだっけ、優人も今日から高校2年生なんだからいい加減彼女でも作って遊び振らついてきなさいよ。」

「はいはい気が向いたらね。」


まぁ朝からよくペラペラと口が回るものだ、それはそれで朝から退屈って訳では無いけれど、もう少し静かな朝を迎えたいものだね。


「はいはい気が向いたら彼女が作れるなんて

彼女の顔も見てみたいものね。

それはそうと、もう行く用意した方がいいんじゃないの、悠真(ゆうま)君達来るんでしょ?

今日は早く行くんじゃなかったっけ?」

「あ、忘れてた」


慌ててパンを飲み込む。慌てすぎて蒸せた。牛乳で流し込む。もう大丈夫。

急いで立ち上がり自室に戻る。カッターシャツに袖を通す。ほんの少し丈が短くなったズボンを履きネクタイを縛る。

ここまでで1分。慣れたものだ。

洗面所に移動。水を出す。温かくなるまで少し時間がかかるのでその間に歯磨き。既に温まった水で口を濯ぐ。そして頭を洗面器に突っ込む。寝癖がまぁ凄いことになっているのもいつも通り。頭をお風呂上がり直後みたいまで濡らす。ハンドタオルで頭を拭き、最後にドライヤーで髪をセットして完成。

もう一度自室に戻りブレザーを着る。1年間着続けたブレザーには少々小さな傷がついてるが、遠目で見ればなんのことやら新品同然、では無いが気にはならない。

そうこうしてると、


「優人〜!悠真君来たよ〜!」


お呼び出しだ


「は〜い!今行く!」


最後にカバンを肩から背負い玄関へ。

今日は始業式なのでカバンが軽い。

これが帰る時にはパンパンに詰まっているのだ。

考えるだけでおぞましい。


「行ってきます」


お母さんにそう告げドアを開ける。


「おはよ、悠真、沙耶香(さやか)

「おう!早く行こうぜ!」

「ヒロ!頭にアンテナたってるよ」


そこにいるのは幼なじみの2人。幼稚園からの友達で昔から近所の公園でよく遊んでいた。それがまさか高校まで一緒とは、見えない糸で繋がっているとはこの事だろうか。

悠真は僕の1番信頼できる人。意気衝天でいつでも明るい。そんな性格でサッカー部でもキーパーとして1年からレギュラーとして試合に出ているらしい。今日も練習なのか若干カバンが膨れている。

もう1人の沙耶香は、こちらも天真爛漫で笑顔の絶えない性格だ。周りをよく見ていて今は男バスのマネージャーを務めてる。

僕はというと2人とは全く違う性格。内気で自分の意見を言うのが怖い。そのせいか、頼み事は全て受けてしまうし、面倒事をよく押し付けられる。でも、それで誰も傷ついてないのならそれでいいと考えている自分もいる。とは言え別に会話が苦手な訳では無いし、友達もいない訳じゃない。ただ自分の本心を人に明かすのが怖いだけなのだ。

それに比べて2人は学校でも人気者で、周りの意見を聞きながら自分の意見まで言ってしまうんだからすごい。


僕らの通っている学校、涼村(すずむら)高校は家から近く自転車で20分の場所にある。いつもはこの3人で仲良く登校しているが、2人は時々部活の朝練とやらに行っているので、僕と悠真か僕と沙耶香の2人、もしくは僕1人で行くことになる。


「なんか俺この3人同じクラスになる予感するわ」

「それ毎年言ってるじゃん」

「そうそう、結局バラバラになるのがオチだけどね」

「うちらが同じクラスになったのって何回あったっけ?」

「えっと、小学3年生と6年生の時と、中1の時かな」

「違うぞ優人、小2の時も同じだったじゃん」

「あれ、そうだっけ」


この2人と喋るのは楽しい。落ち着くというか何を言ってもいい感じで返ってくる。

学校でも2人といるのかというとそれは違う。

クラスも違うわけだし、沙耶香だってずっと男子といる訳じゃない。

僕も友達と話している

基本的には僕の机の回りで少人数で「昨日なに見た?」的ななんとも当たり障りのない事を喋りあったり、次の授業の先生の手伝いをしたりと。

なんで先生の手伝いをするかと言うともちろん頼まれるからだ。

先生曰く「お前は頼まれたらやってくれるし、信頼もしている」だとか。

僕の断れない性格をいいことに好き放題言ってくる。まぁ信頼してくれているのならいいのだけれどね。


「おはよう」

「おはようございます」


門番の先生に返事をし、門をくぐる。

校舎の隣にある駐輪場に自転車を止める。

ここ、涼村高校は今年で創立66周年。そこらの学校のなかでは新しい方だ。校舎も汚くはないし、トイレはウォシュレットがついている。


「もう結構人いるな」

「皆新しいクラスが気になるんだよ」

「俺らも早く見に行こうぜ」


駐輪場から駆け足で抜け出し、下駄箱の隣、グラウンド側の校舎に貼られてる名簿を人混みをかき分けて覗き込む。

僕の名字は『関戸(せきど)』なので10~20番ぐらいだ。6クラスあるので、1組から順番に見ていく。

するとすぐに引っ掛かる。

『1組15番 関戸優人(せきどひろと)

今年も1組らしい。


「僕今年も1組だ」


僕は2人に報告する。


「えっ俺も!」

「えっ私も!」


2人の声がハモる。仲良しなこった。


「本当に!?」


僕はもう一度名簿に目を通す。八神悠真(やがみゆうま)の字と如月沙耶香(きさらぎさやか)の文字を探す。

あった。悠真が40番、沙耶香が10番。

やはり見えない糸で繋がっているのだろうか。


「やった、4回目だね。」

「5回目な、何回間違えるんだよ」

「先生は!?」


僕は一番右端の2年1組のしたにある名前を口にする。


深瀬(ふかせ)先生だね」

「てっちゃん!やった!」


深瀬哲也(ふかせてつや)。通称てっちゃん。担当教科は化学だ。

先生は教師になる前は警察官でバリバリ仕事していたらしい。

もと警察官という厳つい肩書きがある深瀬先生は生徒から恐れられてるかというとそうではなく、大ざっぱな性格で、元警察官とは思えない言動や行動に生徒達からは、『生徒と教師』の関係ではなく『生徒とカッコいいお兄ちゃん』という関係だと思われている。


「ヒロは去年もてっちゃんのクラスだったよね」


沙耶香が目をキラキラしながら聞いてくる。


「そうだね、あの人は僕の事を召し使いかなんかだとしか思っていないと思うけどね」


そう、僕は休み時間に先生の手伝いをすると言ったが、本当は全てこの人の頼み事だ。

4月に何回か先生の手伝いに応じたら、僕のこの性格に漬け込んで来てこのザマだ。

今となっては毎日のように重たいプリントを教室まで運ばされている。


3階にある教室に入る。教室の中では既に10数人が集まっていて「今年も一緒のクラスだね〜」だとか「このクラス、メンバー神じゃね」などと話している。

その中の1人が僕達3人に気づく。


「おお〜ヒロ!今年もオナクラだな!そっちの2人もよろしく!」

「あっ田中くん、よろしくね」


僕はそう単調な返事をすると。

僕の隣の2人も返事を返す。


「よろしく!沙耶香です!よくヒロと一緒に話してた子だよね、仲良くしてください!」

「あぁ!野球部だったよな!俺、いつも隣でグラウンド使ってるサッカー部の悠真!」


いきなりコミュ力を見せつけていく。2人のこういう性格が羨ましい。

僕なんて去年席が隣だったのに普通に会話できるようになるまで1週間以上かかったのに。

でも、1度話せるようになったならそれからはスムーズに会話できるんだけどね。

相変わらず自分の意見はあまり言えないのだけど。

しかし肯定だけでも会話は成り立つ。

だから最初の1歩が僕の前に立ちはだかるベルリンの壁だってことだ。


「そういや知らない子の名前名簿に書いてあったよな」


田中くんが急に思い出したように言う。


「あ〜七瀬蒼葉(ななせあおば)さん、だっけ」


沙耶香がそれに応える。どうやら沙耶香も知っていたようだ。

七瀬さん、気づかなかった。あの時すっかり全員の名前を見るのを忘れていた。


「どんな子だろうね」


沙耶香が頭をフラフラと揺らしながら話す。すると後ろでくくった髪がユラユラと動く。


「可愛い子に決まってるだろ!」


続いて悠真が断言する。

すると田中くんが、


「やめとけ、期待しすぎたらその分ガッカリするだけだぞ」

「サイテー」


沙耶香がすかさずつっこむ。


僕はと言うとそれを眺めながら横で笑っている。いつものマイポジション。

話に入りたい気持ちはあるがそれが出来ないのは自分が1番分かっている。

あえて入ろうとはしない。

悠真と沙耶香が凄いのは知っているが、田中くんも実はそっち側の人間だ。

去年も田中くんから話しかけてくれたんだっけな。



そんなこんなで話す事10分ぐらい。8:30のチャイムがなる。


「は〜い、席に着け〜」


ガラガラっと教室のドアを勢いよく開けて深瀬先生が入ってくる。相変わらずダルそうだな。

担任とか向いてないだろ絶対。


「2年1組の担任深瀬だ。今年1年間よろしく。

お前らも2年生になったってことで、当たり前だけど勉強も部活も忙しくなる。気を締めていけよ。

あと、気づいている人もいると思うがこのクラスに転校生が来る。今日は学校見学、校舎の中を回るだけで帰るが、明日からは朝からいるので仲良くするように。」


深瀬先生は淡々と話し、HRは終了した。

やはり七瀬さんは転校生だった。

一応今日も学校の中にはいるのか、会えるかもしれないな。

でも会ったとしても顔が分からないので、意味ないんだけども


休み時間、そう1人席で考え事をしていると

先生が僕の前の席に来る。


「関戸、後で職員室来てくれ」

「ちょっと早くないですか?」

「いいだろ?」

「いいですけど」


やれ、今年の僕の仕事は早くも始まるようだった。

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