小学校、1人目の出会い
妹の奏を猫可愛がりして早3年…私、青空 涼は小学生になりました。
「(長かった…!ここまで長かった…っもう1人で身の回りはある程度出来るっっ)」
「ねーねっいっちゃ、やー!!!」
小学校に行く準備をしながら喜びを噛み締めてる私に、すっかりお姉ちゃんっ子になった奏が背中にしがみついてきた。
私?私は勿論シスコンですよ、当たり前じゃないですか。
「奏、お姉ちゃん困ってるでしょ?」
「やあぁぁぁ!!やぁぁなのっ!ねーね、といるぅぅぅぅっ!!」
「んぐぅ…今日も妹が可愛い…っ」
「……涼悶えてるのは良いけど学校遅刻するわよ?」
「ヤバっ行ってきまーす!」
「ねーねぇぇぇぇ!!!」
奏の泣き声に後ろ髪ひかれながら私は玄関から飛び出し、学校へ向かうのだった。
「涼ちゃん!おはよう!!」
「澪ちゃん!!今日も可愛いね!」
「ふふ、ありがとう」
校門をすぎ、靴箱に向かうとクラスメイトの澪ちゃんが声をかけてきて一緒にクラスに向かうことにした。
澪ちゃんはツインテールが似合う可愛い女の子なのだが、髪色がコバルトブルーという私が元いた世界ではない色をしていた。
「(まぁ、奏も金髪だし…この世界では普通なのかな)」
「そういえば、涼ちゃん聞いた?今日転校生がくるんだって!」
「へぇ…珍しいね?入学式からまだそんなに経ってないのに…」
サイドテールにした黒髪の自分の髪の毛を摘み弄ってる私に澪ちゃんは興奮して転校生の話をしてきた。
「なんでも、芸能人らしいよ!」
「芸能人ねー」
「……涼ちゃん興味が無さそうだね?」
「んー、奏がアイドルになったら全力で貢ぐかな」
「もー!そーゆー事じゃないのー!」
「あはは、ごめんごめん」
ぷくぅと頬を膨らまし澪ちゃんはポコポコと肩をたたいてきた。
「(そういえば、「アイ恋」のsaisonのメンバーの1人、東雲 春瑠も小学生で子役として活動してたって話だったな)」
大好きなギャルゲ「アイ恋」のアイドルグループの1人 東雲 春瑠はピンク髪のふわふわ系アイドルで輝くルビー色のタレ目をもつ女の子だ。
アイドルになる前は子役として活動してたが素行が悪く余り友達もいなかったって設定がある。
アニメでは彼女の幼少期が出ると聞いてたのだが、如何せんいつの間にかこの世界に赤子として誕生してしまい見れずじまいだったのだ。
「(気になるよなぁ…不良からどうやって、ふわふわ系になったのか…でも、ゲームもアニメもないから彼女の過去話どころか絵ですら見れないしなぁ…)」
「涼ちゃん、大丈夫?お腹痛い?」
少し落ち込んだ私を心配した澪ちゃんが顔を覗き込んできたので、大丈夫と返し席についたのだった。
「みんな、おはよう!知ってると思うけど今日は転校生が来るよ!」
ランドセルなどを片付けおわりチャイムと同時にこのクラスの担任である山田先生が意気揚々と入ってきた。
ちなみに山田先生はムキムキの男性教諭である。
彼を入学式でみて泣き叫んだ子達もいたが、その話は置いておこう。
「では、入ってこいっ」
先生の声と同時に教室に入ってきた子を見て私は目を見開いた。
ーだって…
「では、自己紹介だな!言えるか?」
「は?そんなん言わなくても知ってるやつはいるだろ?」
ーだって…
「知らんやつの為にもな!」
「わぁったよ…」
ー嘘でしょ…神様…
「東雲 春瑠…そもそもここに転校して来たのは撮影の為だしそんな長くいるはずもないから、仲良くしねー」
「こら、東雲!」
「うっせぇなぁ…」
そこには「アイ恋」の春瑠ちゃんと同じ名前同じ見た目の"男の子"が自己紹介をしていた。
「ここは…「アイ恋」の世界…なの?」
私の小さな呟きは誰にも拾われず小さく消えたのだった。