成長を確認しよう!!
「ふぃぃ……初戦は何とかなったな」
オークを倒し終え、家の中へ。
名前は知らないがとても可愛らしくセクシーな衣装の抱き枕は、ポンとソファーへ置く。
冷蔵庫から2ℓペットボトルを取り出し、グビグビと水を飲んでいく。
喉を潤すと人心地つき、今度はドッと疲れが体を襲う。
そしてまた一本だけ残っていた栄養ドリンクを開ける。
ファイトォォォォ!! いっぱぁつ、ですね。
空になった瓶を雑にテーブルの上に置く。
「うぅ……やばい、あれだけでメッチャ疲れた。【戦闘勘】が切れたか」
まあそりゃそうだ。
オークを倒して、戦闘が終了したんだから、俺は今こうして束の間の休息を味わえているんだ。
でも【戦闘勘】はかなり俺の役に立ってくれた。
今後も頼りにしてますぜ、【戦闘勘】先生。
「……ってか、飯、どうしよう」
オークが食料を漁っていたのを間接的にではあれ知っているので、ごはんのことが頭に上がる。
うちはその広さに反して、食料の備蓄は多くない。
大学生の一人暮らしなんてそんなもんだ。
「……今日の晩飯はそりゃ買ってある。問題は明日以降か」
喉を潤すために開けたばかりの冷蔵庫を見て、頭を悩ませる。
昨日買った半額弁当が一つ。これが晩飯用。
他の目ぼしい食料は……。
朝はパンッ!! パンパパン!!派の俺が買っておいたバターロール5つ。
炭酸ジュースのお供の常連さん、魚肉ソーセージが2本。
賞味期限が書かれた小さな紙を捨ててしまい、食べていいのか分からないドキドキ卵が3つ。
食べ過ぎて飽きたためにスプーンでかき混ぜて液体状にしたヨーグルト約100/380ml
そして、少し粘り気があって溶けずに伸びることが売りなのに、冷蔵庫が機能せずにドロッドロに溶けたアイスの液体が1つ。
……終わり。
「……俺の食糧事情が終わりだわ」
これは籠城だろうがなんだろうが、外には出ないとだめだな。
……最悪の場合は沢田さん。すんません。
「息子さんが角界入りしたら、必ず贈り物するんで……」
とはいえ、やはりどこかから食料は持ってこないと。
ずっと沢田さん家から拝借するわけにもいくまい。
いくら食べ盛りの息子さんがいようと、貯蔵には限度がある。
「一番近いスーパーは……」
徒歩5分圏内に、地域密着型の小規模スーパーが一店。
多分あそこの方が、コンビニより近い。
食料だけでなく生活用品などのことも考えれば、コンビニも一度寄った方がいいのだろうが……。
「やっぱり緊急性の高いのは食料、かな」
なら、次の目的地はスーパームラタに決まりだ。
ちなみに、自転車で5分の所にスーパー“タムラ”があるが、スーパー“ムラタ”とは無関係だ。
「次は……――」
俺はステータス画面を開くと同時に、【スペースレンタル】を発動する。
俺は上がっていたAPを、今度はバランスよく割り振っておくことにした。
[個人ステータス]
名前:渡会 耀
種族:人
性別:男
職業:商人Lv.1
年齢:20歳
Lv.4
HP:28
MP:0
STR(力):11→13
DFE(頑丈さ):4→6
INT(賢さ):19(+1)
AGI(敏捷):14→16
DEX(器用さ):16(+1)
LUK(運):8
AP:0
[スキルステータス]
SJP:6
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5~7:【戦闘勘Lv.2】
〔保管スキル一覧〕
[スペースレンタル アプリ]
[個人ステータス]
名前:渡会 耀
種族:人
性別:男
年齢:20歳
保有ポシブレナジー:10
[アクイジション ステータス]
AS:15/15
《スペースレンタル:ランクG 0/20》
そしてSJPのうち、今度はジョブレベルを上げるのに少し使うことにする。
1ポイント使うと……。
「ダメだ、これでレベルが即上がるわけじゃないのか」
もう1ポイント使ってみると……。
――ピロン!!
何かクイズの解答ボタンを押したみたいな音がした。
〈ジョブLvup!! 商人Lv.1→商人Lv.2〉
おお、上がった。
そして続けざまに――
〈商人のLvが2になりました。レベルアップ報酬を得ます〉
おお、そんなもんがあるのか。
〈…………“【値切りLv.1 ③】”を獲得。続けて、“【値上げ交渉Lv.1 ④】”を獲得〉
エ……。
なんか、全然良さそうなスキルに聞こえない。
レベルが低いからこんなもんなのだろうか。
ってか全く戦闘に役立たなそう。
まあ、商人だしね。
〈続けて、“スキルスロット 1つ”を獲得〉
おお!!
それはナイス!!
この世界、空きスロットの数って結構重要だと思う。
スキルは先ほどの戦闘でも感じたが、ちゃんとした奴だとかなり使える。
ただ、それをどれだけ装備できるかはスロットによって規定されてしまっている。
無限にスキルを取得して、俺TUEEE!!を誰でもできるわけではないのだ。
いや、厳密にいえば、スキルを入手するだけなら限定はない。
だが空きスロットがなかれば、それが保管庫で眠らされるだけになるが。
……そう考えると、この世界、結構なハードモードじゃね?
モンスターに対抗するには多分、うまいことステータスやスキルを駆使しないといけない。
でも、普通にやってたら、空きスロットは4つ前後。
今獲得できたスキルもだし、買い取った【戦闘勘】先生もそうだが。
空きスロットをバリバリ食いやがる。
よくて1つしか、使えるスキルを填められない。
……これは、思っていた以上にシビアだな。
「だが、そうだとすると、方針は自然に決まったな……」
今後、【スペースレンタル】を利用して買っていくのは“スキルスロット”と“戦闘系スキル”が最優先だ。
先ほどの戦闘では上手くいったが、【戦闘勘】先生は、まあ文字通り“戦闘に関する”勘である。
――じゃあ、戦闘以外は?
正に今のような場合だ。
多分、機能はしてくれない。
当たり前と言えば当たり前。
もし、相手に認識されずに接近できるモンスターが出てきたら?
俺は戦闘が開始されたと認識できずにグサッ、である。またはバクっ、でも可。
なので、戦闘以外でも自己を高めるスキルを買っていく。
理想は攻撃されたら反射的に防御できるスキルなんかがあればいい。
そして、それらを買っても先ほど思考した通り、空きスロットがないと話にならない。
だから、これらを買っていく。
「よし!!」
俺は今一度気合を入れて、『スキル』の市場へと入っていった。
ーーーーーーーーーーーー
出品者:拙者、侍にござる
○スキル【火魔法Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 3 SJP
ーーーーーーーーーーーー
出品者:プウ
○スキル【MP上昇Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 2 SJP
もしくは 50 EXP
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出品者:竹武
○スキル【逃げ足Lv.1】 必要スロット数:3 ○
価格: 3 SJP
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出品者:何か無茶苦茶強そうなゴブリン? がいるんだが
○スキル欄――スキルスロット 1つ ○
価格: 4 SJP
もしくは 250 EXP
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出品者:商人使えない、マジで
○スキル【値上げ交渉Lv.1】 必要スロット数:5 ○
価格: 2 SJP
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出品者:これって本当にスキルを売り買いできるんでしょうか?
○スキル【風魔法Lv.1】 必要スロット数:5 ○
価格: 4 SJP
ーーーーーーーーーーーー
出品者:かつヲ節
○スキル【算術Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 3 SJP
もしくは 100 EXP
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出品者:パイナぽー
○スキル【闘術Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 4 SJP
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ふむ……出品数は少しだが増えている。
後、“sword flower”は流石にいないな。
売買実績数も2件だが増えていた。
俺以外でも売買はきちんとされていたらしい。
……ってか。
ーーーーーーーーーーーー
出品者:商人使えない、マジで
○スキル【値上げ交渉Lv.1】 必要スロット数:5 ○
価格: 2 SJP
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だよな、と言いたくなる。
その意見には激しく同意だ。
でも……あれ?
【値上げ交渉Lv.1】は俺も今、これを獲得したばかりだ。
さらに言えば、この出品者名から判断すると、この人も“商人”。
だが、俺と違って“必要スロット数:5”。
……人によって、ジョブレベルが上がった際に貰えるスキルが、違う?
まあ俺のもスロット数が一つ少ないだけで、使い道ないだろうが。
……もしかして、そこでステータス上の“運”という要素が重要になってくるのだろうか。
推測の域を出ないが。
そして全体的な傾向としては、やはり――
「スロット数が、ネックなんだろうな……」
どれもこれも、売られているのは必要スロット数が3以上のもの。
そんなもの、中々使い道がない。
そして、偶に対価として“経験値”を設定している人を見るが。
「経験値で売買……できんのかな?」
まあ一回試してみるか。
俺は先ほど手に入れたスキルを、自分で出品してみることにした。
売る方も経験しといた方がいいだろう。
ステータスの方にある[スペースレンタル アプリ]から接続。
そして『スキル』の市場に行くと、『出品する』という項目が。
「えーっと……出品者名“Tarai”で、ああ、なるほど、これをタップして持ってけばいいのね」
『出品するものを選んでください』とある。
そこで一度、ジョブレベルアップによって得た8つ目の空きスロットをドラッグしてみる。
すると、これが出品される。
「ふむ……やっぱり出品自体はできるのか」
それを確認した後、【値上げ交渉Lv.1 ④】を引っ張ってくる。
そしてその後、価格を設定。
これはタイプする画面が別個に出てきた。
「『5 EXP』でどうだ」
とりあえず相場なんてものはまだない。
売れることを目的に、明らかに低そうな価格を付けてみる。
そして出品。
ーーーーーーーーーーーー
出品者:Tarai
○スキル【値上げ交渉Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 5 EXP
ーーーーーーーーーーーー
おお、出来てる出来てる。
俺はそれだけ確認すると、閉じて、『管理者様用』の画面から『3SJP』を使って、宣伝・通知をすることにした。
後の1ポイントは取っておく。
300人に通知して、今度は一体どれくらいがダウンロードしてくれるだろうか。
・
・
・
・
・
・
「……12人。マジか」
タイマーをセットして、15分だけ仮眠をとった。
そして、結果を見ると、落胆が俺を襲う。
す、少なくない?
いや、12人という数字だけ見れば一気に12SJPゲットだから多いじゃん、と言えるかもしれない。
だが――
「単純計算で100人に通知して4人。25人に1人ってことだろ?」
さっき200R――売買実績やダウンロードしてくれた人の数に応じて貯まるポイント――で6人だった。
つまり20人のうち6人。
……全然違う。
「まあ、0よりは、ましだけども」
今、自分自身を入れて、ダウンロードしたのは23人? かな。
多分この分母がどんどん増えてきたら、出品してくれる人も増えてくる。
そうしたら、レアなスキルとかが出品される割合も高くなってくるはずなのだ。
そして――
「――俺は、一番最初に、出品物を知ることができる」
俺は『出品管理』の項目へと進む。
そこにはまた別に『出品者登録』という部分があった。
俺が登録した出品者が出品申請をしたら、俺に、正確には『管理者様用』の画面い通知がくるというもの。
登録しているのは――
「フフフッ、“sword flower”め、お前の好きにはさせんぞ!!」
変な対抗意識が燃えていて、コイツには好きに売買させん!!と俺は決めた。
勿論、一切出品することを許可しないなんて意地悪はしない。
ただ、コイツに好き勝手売る相手は選ばせてやらないつもりだ。
「フフッ、俺が買ってやるよ、全部!!」
残念だったな!!
イケメンか主人公属性か知らないが、ネット的環境を通じて可愛い女の子とやり取りできると思うなよ!!
お前がやり取りするのは、全部この根暗ボッチ野郎だぜ!!
実は後からやり取りしていた相手が美少女だったとかで意外な縁を感じ、そして二人の仲は深まっていく――
なんてことはさせない!!
「あー……自分の三下っぷりが板についてて、虚しくなるな」
ーーーーーーーーーーーー
出品者:何か無茶苦茶強そうなゴブリン? がいるんだが
○スキル欄――スキルスロット 1つ ○
価格: 4 SJP
もしくは 250 EXP
ーーーーーーーーーーーー
出品者:パイナぽー
○スキル【闘術Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 4 SJP
ーーーーーーーーーーーー
俺は13SJPあったので、この二つを購入しておく。
だが、買ったはいいがやはり空きスロットは足りない。
今買ったのと合わせて空き2つ。
今後もスロットは購入を継続していかないといけない。
……後、“何か無茶苦茶強そうなゴブリン? がいるんだが”さんは強く生きてください。
そして残ったSJPは5。
これを使って、またジョブレベルを上げてみる。
結果的に4使った。
なので、また残りが1に。
〈ジョブLvup!! 商人Lv.2→商人Lv.3〉
〈商人のLvが3になりました。レベルアップ報酬を得ます〉
さて、何が出るかな……。
〈…………“【購入代金減少Lv.1 ③】”を獲得。続けて、“【値上げ交渉Lv.1 ⑤】”を獲得〉
おお、【購入代金減少Lv.1 ③】は何か良さそう。
もしかしたら、これ、『スキル』市場でも使えたりして……――って!?
また【値上げ交渉Lv.1 ⑤】!? しかも今度はスロット多い!?
なんでやねん、もう持ってるわい!!
〈続けて、“スキルスロット 1つ”を獲得〉
おおお!! これはマジでナイス!!
商人の一番の旨味はもしかしたらこれかもしれないな。
[スキルステータス]
SJP:1
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5~7:【戦闘勘Lv.2】
8――
9――
10――
〔保管スキル一覧〕
【値切りLv.1 ③】【値上げ交渉Lv.1 ④】【闘術Lv.1 ④】【購入代金減少Lv.1 ③】【値上げ交渉Lv.1 ⑤】
ふむ、じゃあ後一つの空きスキルで【闘術Lv.1】が装備できるわけか。
それと、【購入代金減少Lv.1】は一応今も装備可能だな。
これは一応残しておこう。
【闘術Lv.1 ④】が装備できるようになったら、戦闘とか探索中はこれを装備して。
今のように自分を強化するための時間は装備し直せばいいか。
よし、これで一先ずはOKかな。
あ、そうだ。
管理者用の画面を開き、Rポイントを見ておく。
先ほどダウンロード数も増え、そして売買実績にも貢献した。
「おお、そうか、10人は超えたか」
『おめでとうございます!! ダウンロード数が 10 件 を達成しました!!』
今回、これで500Rが加算された。
それも合わせて522R。
俺は300ポイント使って、強制的に1人ダウンロード。
220ポイント使って、22人に宣伝・通知を行った。
しばらく待っていると、後者は新たに3人がダウンロードを行ってくれた。
それで4SJPが追加。
合計5ポイント溜まったので、商人のジョブレベルアップに全部突っ込む。
そして――
〈ジョブLvup!! 商人Lv.3→商人Lv.4〉
〈商人のLvが4になりました。レベルアップ報酬を得ます〉
〈…………“【INT(賢さ)上昇Lv.1 ③】”を獲得〉
〈続けて、“スキルスロット 1つ”を獲得〉
今回は一つしかゲットできなかったが、ある意味帳尻合わせなんだろう。
結構レアっぽいスキルだし、二つ分、ということかな。
それと、商人はジョブレベル上がるごとにスロット一つは、ほぼ確定っぽい。
初めて商人選んでよかったかも、と思えてきた。
[スキルステータス]
SJP:0
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5~7:【戦闘勘Lv.2】
8~11:【闘術Lv.1】
〔保管スキル一覧〕
【値切りLv.1 ③】【値上げ交渉Lv.1 ④】【購入代金減少Lv.1 ③】【値上げ交渉Lv.1 ⑤】【INT(賢さ)上昇Lv.1 ③】
これで今度は間違いなくバッチリだ。
こうして初期で・初日で戦闘スキルを二つも装備できているのは結構いい感じに進んでいるのではないだろうか。
だって、商人は確かに空きスロットが増えていくが、それをするにはジョブレベルを上げないといけない。
でもジョブレベルを上げるためのSJPは普通に個人としてのレベルを上げないと入ってこないわけで。
そのレベルはやっぱりモンスターを倒していくのが原則なはずだ。
モンスター退治には戦闘スキルを持ってないと中々厳しい(最初に戻る)。
……おお、つまりかなり細い綱を気づかぬうちに随分わたっていたことになる。
でもこれでいい。
弱肉強食の世界へと変貌したのだ。
強いことに越したことはない。
ムキムキでガチ戦闘職もこなす商人がいたっていいじゃないか。
ちょびっと情報:既に終了の危機。次におそらく二つ目のステータスが役に立つ、と思う。