よし、強化しよう!!
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出品者:sword flower
○スキル欄――スキルスロット 1つ ○
価格: 4 SJP
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俺は、この出品にスッと目が行った。
いや、勿論他にも気になるものはあった。
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出品者:誰か至急、買ってくれ!! 頼む!!
○スキル【戦闘勘Lv.1】 必要スロット数:3 ○
価格: 3 SJP
もしくは 150 EXP
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これとかね、もうツッコミたくてツッコミたくて。
出品者名他になかったのか!! と。
でもそれぐらい状況が逼迫してるんだろう。
かなり追い詰められてる感が伝わってくる。
だが、まあそこはいい。
この『出品者:sword flower』だ。
確かにこの市場は『スキル』で、説明文にも『[スキルステータス]内のものを売買いただけます』とある。
だが、今このモンスターが現れた状況では『スキル』と聞いたら、【 】のように、実際のスキルを連想するのが普通じゃないだろうか。
それを、この“sword flower”という人物は、「いや、スキルだけでなく、スキル“スロット”も行ける」と言っているのである。
この画面の右上には『スキル』市場における売買実績数が記載されている。
勿論、そこに記されているのは“0”。
つまり、何が売買できるのか、未知数の状況。
いや、そもそも売買それ自体もきちんとできるのかすらわからない。
それを、この人は大胆に攻めている。
「……あれか、宿題とか現金出品してみる、みたいなもんか」
日常のフリマアプリで偶に問題になる。
“夏休みの読書感想文 売ります!!”とか。
“現金50000円売ります!!”みたいなの。
あれみたいに、通常想定しているような物以外を売ってみて、稼ぐチャンスを窺う、ということだ。
ちなみに、読書感想文とかはわかりやすいが、後者は“価格:60000円”とかだったりする。
要するに、カード払いとか現金以外で購入できるのを上手く使って、借入ができないような人が新たな現金調達方法として利用することを想定している。
……まあそこはいい。
「ふぅむ……やりおる、こやつ」
変な感嘆の声を漏らす。
それに、これができれば“sword flower”は売るだけでなく、後々スキルスロットを買えることをも意味する。
勿論フリマなのだから買えるのは他の奴も同じだが、そういうことではなく。
――それを最初に見つけたとなると、コイツには、先見の明があるということだ。
そういう他の人が全く気付かない部分を気づける、というのは。
「こういうサバイバル的世界では重要だよなぁ。むむぅ……」
管理者の癖に、その可能性に思い至らなかったことが少し悔しい。
まあ、そうしてアプリやサイトは改善されていくんだ、と割り切っておこう。
それに、そもそも本当に買えなければ、そして売れなければ意味がないのだ。
“sword flower”にとっても。
そして、管理者たる俺としても。
「実際に使えないアプリなんて過疎るだけだしな……――あ、そうか」
今の“sword flower”の先見の明、いいなあ、俺も何かないかなと考えていると、ティンと来た。
SJPは今、7ポイントある。
これを使って俺は、自分のジョブレベルだとか、スキル獲得だとかを頑張っていくもんだと今まで思っていた。
でも――
――俺が、買えばいいのか。
今出品している人達は誰かに買ってほしい。
俺は、管理者として、売買実績数を増やして、もっとこの【スペースレンタル】を強くしたい。
なら、俺が買えばいい。
売りに出されている他の4つに目を通す。
どれも必要なスロット数が3か4。
俺自身【スペースレンタル】が4つスロットのスペースを食いやがって、頭を抱えたばかりだ。
5つ目のスロットがあるのは、多分ジョブ“商人”のおかげ。
とすると……。
「普通、ジョブとか関係なしの場合はスロット数は……“4つ”」
そりゃ売りたくなる。
俺みたいに何故か知らんが取り外せないわけじゃないんだ。
一つのスキルだけで3つも4つもスロットが埋まれば、他のスキルを装備できない。
逆に言うと、スロットを他の方法――商人の効果や、あるいは“sword flower”の考えるように他者から買えるなら、それを補うことができる。
……どちらにも、動機はあるってわけか。
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出品者:誰か至急、買ってくれ!! 頼む!!
○スキル【戦闘勘Lv.1】 必要スロット数:3 ○
価格: 3 SJP
もしくは 150 EXP
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俺は、先ずは見るからに買ってあげた方が良さそうなこれから購入することに。
この部分をタップしていく。
普通のフリマアプリのような詳細な情報とか、売るに至った経緯とかは出てこない。
そんなもんか。
その後、購入画面まで行くと、自分の“ユーザー名”を登録することを求められた。
「……“Tarai”でいいか」
“渡会”からとった。
身バレを防ぐ意味でだ。
深い意味はない。
『や~いや~い、お前の苗字、タライに似てる!!』とか言われたことないから。
本当だから!!
それを登録後、実際に自分が出品価格分を支払えるかどうか、確認画面があった。
ここで足りない場合に弾くのか。
そして、最後に例の如く『購入を実行します。 よろしいですか?』と最終確認。
「“はい”っと……」
『購入が完了しました。 出品者から商品を転送します。 しばらくお待ちください』
との文字が。
それと同時に、ステータス画面に変化があった。
ステータス画面のうち、『SJP:7』の部分が点滅し出す。
その後、数字が一瞬消え、直ぐに“4”へと変化した。
……購入代金の3ポイント分が引かれた、ということか。
そして――
――ピロリンッ
「おっ」
スキルの【スペースレンタル】で出したメニュー大の画面に、また通知が届く。
『おめでとうございます!! 売買成約数が 1 件 を達成しました!!』
また100Rが新たに追加された。
よくよく見てみると“計 208 R”となっていた。
……登録者数と売買成約数1つに応じて1Rってことか。
丁度少し待ち時間があるので、これを使ってみることに。
『管理者様用』のページを進めていく。
10Rにつき、ランダムに1人、この[スペースレンタル アプリ]を通知・宣伝してくれるらしい。
今後もどんどん貯めていくために、一気に200R使って、20人に送ることにした。
「ありゃ、早っ」
本当に今送ったばかりだというのに、もう一人ダウンロードしたと通知が来た。
これでまた1SJP増えたわけか。
「…………おっ、こっちもか。――ってか本当に、できたんだな」
『“出品者:誰か至急、買ってくれ!! 頼む!!”様 から、【戦闘勘Lv.1 ③】が届きました』
本当……急ぎだったんだな、とはわかるが、出品者名がシュールだな。
そしてその文書の下を押すように指示がある。
それに従うと――
[スキルステータス]
SJP:5
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5――(+)
〔保管スキル一覧〕
【戦闘勘Lv.1 ③】
ステータス画面に移る。
そこには、先ほどまでなかった項目が追加されていた。
「おおう!! きちんと反映されてる!!」
まだ画面上だけだが、一応売買はなされた。
後は確認するだけだが……。
「くそう、【スペースレンタル】が邪魔だ……」
お前がスペース食ってるせいで【戦闘勘Lv.1 ③】がはめられない!!
この“③”って部分が多分、必要なスロット数のはず。
ぐぬぬっ。
俺は急いで次の売買へと向かう。
日常の時みたいに、「よい商品を売っていただき、ありがとうございました!!」とかいう一手間もこれにはない。
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出品者:sword flower
○スキル欄――スキルスロット 1つ ○
価格: 4 SJP
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こやつから買うのは少し癪だが。
背に腹は代えられない。
俺は先ほどと同じように購入手続きを進める。
『“sword flower”様 から、スキルスロット 1つ が届きました』
同じようにタッチする。
[スキルステータス]
SJP:1
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5――(+)
6――
〔保管スキル一覧〕
【戦闘勘Lv.1 ③】
「マジか!?」
おっしゃあ!!
できてる!!
ってか売り買いできんのかよスキルスロット!!
俺は増えて嬉しいけどもさ、これ。
“sword flower”はじゃあ、普通より1個少なくなんだよな?
マジか、大丈夫なのだろうか。
スロット数が少なくて済むスキルを持ってるか。
或いは、俺から得たSJPを利用して、スロット数の少ないスキルを買う・取るでしのぐか。
……まあ、今は他の奴のことはいいか。
そう、俺は今、スロット数が増えたのだ!!
ようし、これで――
『×:このスキルは必要スロット数 ③ です。後 1つ 空きスロットが足りません』
そうだったぁぁぁぁ!?
②と勘違いしてたぁぁ!?
それじゃあ折角売買できても、俺は実質スキル無しで戦わないといけないのか!?
――ピロンッ
そんな中。
スキルの方の画面に通知が届いた。
これ、開けっぱなしじゃないと気付かないんじゃないだろうか。
通知の件名には、またアプリ登録者が増えたことが書かれていた。
計5人。
さっき来たのと合わせると6人になる。
『5名ダウンロードされましたので、5SJPが還元されます』
あれ?
さっきは100人に通知して6人だったのに、今度は20人に通知して、6人?
何か、今回の方が多くない?
……いや、確かに喜ぶべきことではあるのだが、ちょっと違和感が。
そういえば、俺は通知された文面を、最初のものしか知らない。
だってそっちで既にダウンロードしてしまったから。
割合的に、後者の方の文面がちょっと違ったのだろうか。
『既に売買実績もあります』みたいな。
今後も、もしかしたらこっちのほうが効率がいいかもしれない。
念のため、ステータス画面を再度見てみる。
ちゃんと SJP:6となっていた。
ふう……。
――ピロンピロンッ
なんだ、今度は。
またスキルの方の画面に音がした。
管理者用の部分を進めると、何やら見ていなかった項目が光っていた。
『出品管理』との項目。
そこを推してみる。
すると『出品対象商品を許可するかしないか、設定できます』との説明があった。
今は『包括許可』となっていて『個別許可』に切り替え可能らしい。
まあ、今は少ないからいいけど、出品が増えてきたら、わざわざ俺が一個一個判断するのもしんどい。
それはそのまま放置しておくことに。
そして『包括許可』であっても『出品申請された商品』と『出品許可された商品』はそれぞれ俺が閲覧できるようになっている。
『包括許可』だとこの二つは完全に一致するわけだな。
俺は試しに『出品許可された商品』の項目を覗いてみることに。
「どれどれ――っては!?」
俺は純粋な驚きの声を上げた。
また新たに3つ、出品が許可されていたのだ。
それ自体はいい。
その中の二人は一番新しい5人のうちの二人だろう。
問題は、もう一つの商品。
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出品者:これって本当にスキルを売り買いできるんでしょうか?
○スキル【風魔法Lv.1】 必要スロット数:5 ○
価格: 4 SJP
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出品者:かつヲ節
○スキル【算術Lv.1】 必要スロット数:4 ○
価格: 3 SJP
もしくは 100 EXP
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出品者:sword flower
○スキル欄――スキルスロット 1つ ○
価格: 5 SJP
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いや、出品者名を件名として使うんどうなん? とか。
【風魔法Lv.1】!! マジか、魔法とか胸熱熱盛なんですけど、とか。
ツッコミたいところはある、あるんだ。
だが、それは、今回はいい。
――“sword flower”の野郎……。
コイツ、また!
しかも、今度は『4SJP』ではなく『5SJP』。
売れると分かって、値段上げやがった!!
間違いない、コイツ、普通じゃないスキルをもってやがる!!
スロットが1で済むとか、あるいは『SJP』を使って成長させれば必要スロット数が少なくなる、とか。
知らんけど、でもそうじゃないとこの強気のスロット売りの理由が分らん。
手強い。
何に対して手強いと思ってるかはわからんが。
こういういざという時大胆に行動できて、頭も回る。
でもこういう奴、大概イケメンチート持ちの主人公っぽい奴だ。
ケッ、どうせハーレム侍らせて俺TUEEEしてるんだろうな。
俺は若干の悔しさは表面上は出さず、下手に出て購入手続きを進めた。
いつか見てろよ、ヒィヒィ言わせてやる……ゴメン、適当言った。
そんな雑魚臭丸出しで、俺はもう一つのスロットを購入――
[スキルステータス]
SJP:1
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5――(+)
6――
7――
〔保管スキル一覧〕
【戦闘勘Lv.1 ③】
よし!!
俺は残り1SJPは再び100人への通知・宣伝へと使用。
そして――
[スキルステータス]
SJP:0
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5~7:【戦闘勘Lv.1】
〔保管スキル一覧〕
【戦闘勘Lv.1】を装備することに、ようやく成功する。
よしよし、いい感じだ!!
これで本当にステータス上での素手を回避できた。
一切の戦闘関連スキル無しとか、自殺志願者じゃないんだから是が非でも避けたかったのだ。
お。
心なしか強くなった感がある!!
なんて。
……まあプラシーボ効果みたいなもんかな。
流石に【戦闘勘Lv.1】だし、戦闘になって発動するもんだろう。
そういえばステータスでAPを使うのを忘れていた。
それを振り分け、一度、全体を確認しておく。
[個人ステータス]
名前:渡会 耀
種族:人
性別:男
職業:商人Lv.1
年齢:20歳
Lv.2
HP:25→28
MP:0
STR(力):11
DFE(頑丈さ):1→4
INT(賢さ):18→19(+1)
AGI(敏捷):14
DEX(器用さ):15→16(+1)
LUK(運):8
AP:0
[スキルステータス]
SJP:0
1~4:【スペースレンタル Lv.1】
5~7:【戦闘勘Lv.1】
〔保管スキル一覧〕
[個人ステータス]
名前:渡会 耀
種族:人
性別:男
年齢:20歳
保有ポシブレナジー:10
[アクイジション ステータス]
AS:15/15
《スペースレンタル:ランクG 0/20》
APはHPと防御に振った。
だってあのままだと紙装甲のままだもん。
……まあ今でもそれは殆ど変わってないように見えるが。
一応、これでできることはした。
後は――
「――ブフィィィ!!」
とうとう最初の戦闘の時を知らせるモンスターの鳴き声が、耳に届いてきた。
ちょびっと情報:何か後書きを充実させようと始めたが、もう既に書くことが思いつかないでいる。数字の計算違いとかは頻繁にしているので見つけた方は報告していただけたら幸いです。
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