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1/9

始まり

はじめましての人ははじめまして。

こんにちはの人はこんにちは。


作者です。


お楽しみいただけるお話を書けるよう頑張ります。

読者の皆さんにお楽しみいただければ幸いです。

「……ウっス、きちんとお預かりしました」


「ああ、大事な嫁なんだ。君だからお願いしたんだ……頼むよ」


 目の前のまだ若い男性は、これから死地へと赴く戦士のような表情。

 これからの戦いに向けて、後顧の憂いは全て立つといわんばかりの気迫あふれる様子。


 しかしその瞳には、光る雫が――



 そして俺の肩を軽く叩く。


 何度も戦場を共にした戦友に自分の全てを託す、コイツに任せれば後は安心して戦える――そんな気安さや、信頼があった。


「では――」


 男性は踵を返す。

 もう、振り返らない。

 

 これ以上、視界に入れると、躊躇ってしまうから――そう言わんばかりに。



「…………」



 俺は、その背中が見えなくなるまで、見届けた。

 そして、家の中に入る。



 俺は、預けられた女性の表情を確認する。

 

 その女性は、切なそうな、これからどうなるのか――そんな表情をしてこちらに視線を向けていた。



「…………」


 俺はそれに向けて、何かを言うことはない。

 いや、何も……言えなかった。




 だって――

















「――アニメキャラの抱き枕は、初めてだな……」




 俺は2階にある家の空き部屋に、抱き枕をそっと置いた。





◇■◇■◇■◇■◇



「これで、完了っと――」



 俺は、しっかりと保管したことを示す写メを取り、先ほどの依頼人に送る。

 直ぐに返信が来た。



『ありがとう!! これで心置きなく最終決戦に挑むことができるよ!!』


 単に一人暮らししてる息子の部屋に親が来るだけだろうに……。

 俺は返信内容にそっと溜息を洩らしつつ、今いる部屋を見回す。



「……かなり増えてきたな」


 フローリングで6畳ほどの広さ。

 人が暮らすとなると、この部屋だけでは苦しいだろうが、物置となれば話は違う。

 

 当たった景品入れにそのまま飾られている人気キャラクターのフィギュア。

 アニメやブルーレイのDVDが詰まった段ボール箱。

 

 彼女や家族の視界に入れるにはちょっと勇気がいる漫画が詰まった箱もある。

 中には18歳以上のプレイが禁じられているようなアッハンでウフフンなゲームばかりつめたものも。


 そして、先程預かった抱き枕。



 俺はそれらがちゃんと整理されて置かれていることを確認し、別の部屋へ。

 昔叔母さんが使っていた部屋。

 

 ここは、コスプレ衣装でほとんどが占領されている。

 叔母さんが置いていった衣装棚もあるにはあるが。

 

 衣装ケース丸ごとを預けに来た人や、段ボールに詰めて持ってきた人など。

 

 最初はなんで他人にコスプレ衣装預けるかね、と思ったが。

『こんな過激な、際どいコスプレ趣味があったなんて、彼氏に知られたくないんです!!』とか。

『しばらく友人を泊めることになったんですけど、二次元趣味は隠してて……』とか。


 ……まあ何となく理解はできるが、そんな際どいものとかを、仮にも男の俺ん家に預けるかね。

 勿論金を払ってもらっているわけだから、しっかりと保管はするが。



 下の階の部屋には、2階へと持ち運ぶのに苦労する物――洗濯機や掃除機などの家電が置かれていた。

 

 





 ――要するに、一般人が空きスペースを貸すレンタル倉庫業である。



 


 一度外に出て、改めて家を見上げる。



「本当、外観こそ古いが、いい家住んでたんだな、爺ちゃん……」


 

 俺の通う大学の近くに丁度親父が相続した爺ちゃんの家があった。

 なので、俺は今、そこに移り住んで独り暮らし中だ。


 祖母ちゃんと、時には叔母さん家族とともに住んでただけあって、部屋数も多く、かなり広い。

 



 俺は散歩がてら、少し歩いてもう一つ確認する場所に向かった。




「……ふぅ。まあ、一番はここをどう上手く使うかだよなぁ」



 目の前には雑草や小さな凸凹が目立つものの、家一件を建てるには十分のスペースがあった。

 その空き地も、持ち主となった叔母さんから貸与されている。


 

「本当、仕送り形式にしてほしい。わざわざ何で俺が管理せにゃならんのか」



 大学に通うことになり、悠々自適のお一人様生活かと思われた俺に、親父が面倒な条件を課した。

 それが、『自分の生きる糧くらい、そろそろ自分で稼いでみたらどうだ?』ということ。



 それに何故か叔母さんも賛同してきたのである。


(ひかり)のお婿さん最有力候補だもの、稼げる男になって欲しいわ!!』と。

 ……ちなみにその従妹は『は!? わ、私が耀(よう)(にい)のお嫁さんとか、い、意味わかんないし!!』とキレられたが。


 

 ……叔母さん、マジ止めて。

 折角今までキモがられるかもと恐れながらも恋愛相談や課題の手伝いで、コツコツ従妹からの信頼を稼いだのに。



 冗談でもそれで好感度が崩落すんのは俺なんだから。

 



 ま、それはいい。

 要は、元爺ちゃんの大きな家と、この空き地を使って生活費替わりにしろ、と。


 幸か不幸か、大学生活1年以上通して、友人関係の構築は見事に失敗している。

 飲み会やら煩わしい友達付き合いに煩わされることもない。

 

 単位に響く以外の時間はたっぷりある。

 ……ハハッ、笑いたければ笑え。

 



「家のスペースは軌道に乗ってきた。ここは本当、どうしようか……」


 

 やり始めた当初はもう何もわからなくて、何回かフリーマーケットの場所として提供してみたが。



「全くダメだったしな……」



 そもそも最近は何か買いたいときなんて、インターネットを使ったり、専門のフリマアプリがある。

 わざわざこんな 使い勝手の悪そうな場所にフリーマーケットなんて開いても誰も来ない。


 なんで俺はそれをわからなかったのか。




「はぁ……ま、生活費は何とかなってる。後はゆっくり考えて――ん?」











「――アバァァァ」







 何か、瞬きした間に、空き地にゾンビがいた。






「あ、どうも」




「グォバァァァァ」



 顔色の悪そうな酔っ払いの落ち武者と見間違えたのかと思ったが――



「ウチの空き地をレンタルですか? いやー、最近遊ばせたままだったんで助かります!!」



「ググバァァァア」



「そうですね、今日はいい天気ですね」



「ギャブァァァァァ」




 ガッツリたっぷりゾンビだった。




「ハハッ、ですね。議席減らすか、給料減らせよって話ですもんね――あっと、そうだ、今日はこの後あれがあれで、それだったんだ!」



「ギャッバァァア!!」


 


「すいません、お腹空いてるところ悪いですけど、俺この後用事があるんで、お腹の中へご一緒はできかねます! うん!」




 ――ピロンッ




「ほっ、ほらっ、嘘じゃないでしょ!?『ワタライ さん 出品のスペースレンタル予約が一件入りました』って!! メール、知りませんメール!? 現代人のコミュニケーションツール!? これに倣って平和に話し合いません!?」




「グボォォォォ!!」




「ぎゃぁぁぁぁ来たぁぁぁぁ!?」




 

 問答無用らしい。

 必死の逃走。

 



 ――ピリンッ




「今度は何だよ!? 今“いのちだいじに”で忙しんだよ、クソっ、役立たずめ、ゾンビ一体を足止めもできんとは……」



 自分でも混乱して、何に怒っているのかすら分かってない。

 ってかゾンビって何?


 何でいんの?

 ピンポイントで俺の前表れんなよ、自分の写し鏡かと思ってビビんだろ。


 それで、今の音……


 ――ん?


 ってか、今の音何? 


 メールの着信音とはまた違った感じが――




〈合計スペースレンタル回数が、条件回数に到達。初期ジョブ……無職〉


 うるせえ!

 学生だよ!

 こんちくしょう!!


〈スキル【スペースレンタル】解放には初期ジョブ[商人]が必要。[商人]を取得しますか?〉


 ああ、もう、商人でも承認でもなんでもいいよ!?




「グゴゴォォォォ!!」



〈[商人]……取得。初期ジョブ……[商人]確認。スキル【スペースレンタル】取得欄 解放〉




 ってか、これ、頭の中に語り掛けてくるパターンの奴!?

 テレパシーか!?

 もしかしてこれは――って!!




「今はそれどころじゃねぇって言ってんだよ!?」





「グボァァァァ!!」




 ぎゃぁぁぁぁぁ!!

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